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黄金剣のギィロ 〜好きってどういうことだかわかる?  作者: ぷるお


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第24話 下手くそな応援

「なんだてめえ……」

 突然の闖入者にボスは身構え、敵意を剥き出しにした。


「そいつですよ!」

「枝だ!」

「出やがったな小僧!」

 複数のゴロツキたちが沸き立ち、ギィロは指をさされる。

 私を囲むゴロツキたちの円は、ギィロに吸い寄せられるように崩れた。


「驚かせやがって……お前が枝か。変なところから入ってきて気持ち悪いが、来たことは計画通り……」

 ボスは子分たちが目標を断定する様子を確認し、ギィロに向き直るも、ギィロは無視して私に歩み寄ってくる。


「挨拶もしてくれねえで、礼儀を知らんのか、気持ち悪い」

「挨拶ならしただろうが、あとでまた相手してやるから待ってろ」

 ギィロは不快感をあらわにするボスに横顔と枝を向けて言った。


「リゼ!」

 呼びながら壇上を降りたギィロは、私からではゴロツキに隠れて見えにくかった。

 「ちょっと退いてくれ」という声が届く。


「まあいい、最後の会話になるかもしれねえ、行かせてやれ」

 ボスは自分は紳士なのだというような態度で、子分たちに退くよう手振りする。


 ゴロツキたちが割れ左右から見下ろす中、ギィロは近くまで歩み寄ってくる。

 割れた包囲はゆっくりと修正されていった。


「ギィロ、良かった……」

 赤ん坊を抱いた姿のギィロを見て、心から零れるように言葉が出た。


「リゼ、怪我はないか?」

 確認するような視線を受けて、まだ少しズキズキするお腹に触れたけど、すぐ胸に手をやりごまかした。

 そんなことより赤ん坊を気にかける。

 

「うん……赤ちゃんは?」

「大丈夫そうだ」

 ホッとした。

 私のせいで怪我でもされたら、何のために来たのか分からなくなるところだった。


「着いたらいたから驚いたよ。おかげで後ろから入れた」

 ギィロは壇上の暗がりを親指で示す。


「見てたの?」

 ギィロは「途中まで」と頷く。


「仲が良さそうで」

 茶々を入れてくる外野を睨みつけると、「こわいこわい」と薄ら笑いを浮かべる。


 これまで数や状況に圧倒されそうだったけど、心に余裕ができたからか、恐ろしさは感じなくなった。


「無計画の運か、気持ち悪いねえ……」

 ボスは誰に言うでもなく自分の主義に反する二人を不愉快に感じ呟いた。


「ギィロもどうしてここに?」

 私は周囲の雑音を無視して率直な疑問を投げかけた。


「知らせがきたんだ、"俺が"狙われてる」

 ギィロは"俺が"を強調して、赤ん坊を手渡そうとしてくる。

 黒羅と聞いて因縁のあるギィロが来たからまさかとは思ったけどそのまさかだった。


「赤ん坊を連れて帰ってくれ」

「え、私も手伝う」

 でも呆れる余裕はなく、危うく受け取りそうになった赤ん坊を、帰れという言葉に反発して優しく押し返した。


「抱えたままこいつらをやれっていうのか?」

 ギィロは困り顔で不利を主張してくる。


「なら見てて、私がやる」

「リゼは部外者だろ、俺がやる」

「誰が誰をやるっていうんだ?」

 外野のヤジが飛んだ。


「口を挟むな、大事なことなんだ」

「そう、ちょっと待っててよおじさん」

 私はギィロに部外者と言われ、崩れた表情をそのまま外野に向けた。


「こいつら……ガキがよお、ボスぅ?」

 ゴロツキは不快感を示し、ボスにお伺いを立てるよう声を上げる。

 同じような荒々しい顔をボスへと向ける者が複数いるが、ボスが首を横に振ると諦めて、代わりにその荒々しい顔を私たちに向け睨みつけてくる。

 私たちは襲ってこないことを確認して話を続けた。


「雪灯院が襲われたの、私何も出来なかった。部外者なんかじゃないんだって。ギィロを置いて逃げたら助かりましたなんてそんなの嫌。赤ちゃんが攫われたのは私のせい、責任を取らせて」

「責任なら俺にある。これ以上リゼが戦う必要はないしもう充分助かった。帰るのは臆病なんかじゃない。リゼはここに居ちゃダメなんだ。俺がこいつらを……」


「責任なら取らせてやるよお?」

 あまり目の焦点があっていないゴロツキがふらふらと近寄る。

 ボスは舌打ちをした。


「邪魔をするなといったろ」

「邪魔しないでくれる?」

 私たちに近寄りすぎたゴロツキは枝と白雪剣を向けられ、「おぉぉ……」とふらふら後退りする結果になった。


 ボスは子分の小さな脳みそに呆れ、宙を見るような仕草をする。


「ミケウリリアが来るかもしれない」

「それがなに?」

 少し焦った様子で小声になるギィロに、私は不満をぶつけた。


「見られたらどうする?先生、やったんだろ?生きてんのかよあれ」

「それは、たぶん……」

 赤ちゃんを救出する大義と自分の雪灯院での醜態を修正することしか頭になかったけど、依頼でも作戦行動でもない私闘で、怪我人や、まして死者を出して見つかったらそれは罪だ。

 暴力沙汰自体は珍しいことではないにせよ、胸を張って見つけてもらいたいことではない。


「俺がやったことにすればいい、だから……」

 ボスの「待てねえのか」などの子分たちをなだめる声が響きギィロの言葉は途切れた。

 ゴロツキたちは歯がゆそうで落ち着きがなくなってきている。


「なんのために俺が雪灯院を出たかわからなくなるだろ……」

「ねえそれ!なんでなのかちゃんと言ってよ!」

 頭を抱えたギィロに、私は外野の様子を注意することも忘れ、思い出したように詰め寄った。


「だから、決めたんだって、リゼの邪魔をするなって言われて、俺もそう思ってたから……宮殿に行くのを、応援しようって……」

 ギィロは言いづらそうに視線を外し、尻すぼみになって言った。


「なにそれ……」

 私は小さく唇を噛んだ。

 どんな顔を向ければいいのか分からなくなった。


「…………」

 私は二回深呼吸をして、俯きながらギィロから離れた。


 私の方がおねえさんなのに。

 出来ないやらないギィロを私が面倒みてきたのに。

 全然私の応援なんかできてないのに、変な気の利かせ方して、ほんと下手くそ。


「おい、リゼ……」

 私は不安そうな顔をするギィロを無視した。


 頭の中を整理できていたとは言えない。

 感情的になっていた。

 ギィロが私を庇おうとしてくれているのはわかったけど、私はそれに反発するようゴロツキたちに剣を向けていた。


「……かかってきなさいよ!ほら!はやく!それでも黒羅!全員やるって聞いたとき笑ってたくせに!」

 大声でバカにするように挑発すると、ゴロツキたちの表情は下衆なものへと変わり、ボスの合図を今か今かと待った。


「はぁ…………ならお前の相手は俺だ!」

 大きくため息をついたギィロは、ボスに枝を向け叫ぶ。


「それがいい、そうしよう。通してやれ」

 ボスの手振りでまたゴロツキが割れる。

 ギィロは嫌なものを見るような視線を受けながらゴロツキたちの間を抜け、壇上へと向かった。


「お前ら、おねえちゃん一人にやられたりしたら、わかってんだろうな?」

 ボスの発破は力量を理解した者の言い回しだった。

 それを理解しているのか否か、ゴロツキたちは各々身体を確かめるように動かし、笑みを浮かべる。


 私は再び包囲された。

 私がこいつらを倒して、ギィロがボスを倒す。それだけでいいはずだ。

 そうすれば赤ちゃんも後悔も取り戻して、きっと胸を張って帰れるんだ。



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