表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/20

15話.可愛いメイドさんがほしい

引っ越しが完了した。

うちの両親はマンションを拠点にして実家を別荘扱いする気満々で住み着いた。

父は会社から遠いことだけが問題だな。

バスもないしと文句を言っていたが、立地的には最高すぎて実家に戻る気力を失っていた。

これほど渋滞を生む商業施設が出来たらそのうちバスの路線も通るんじゃないのか?

知らんけど。


車やバイクで通勤するか真剣に検討し始めている所申し訳ないけど、財布の相談の時コッチ見るの止めてくれないか?


それでは今回はマンションの案内をしようか。

エレベーターの中の一基だけがこのフロアに通じている。

他のエレベーターと違いこのエレベーターだけはボタンのそばのカードリーダーに電子ロックキーを当てることで最優先で動いてくれる。

そのエレベーターを出ると玄関ドアと荷物用のエレベーター、屋上に出るための階段に続く廊下が伸びている。

ここに非常階段はなく、災害時には屋上から避難袋で外に出る事になっている。

避難袋とは学校などの公的施設においてあることの多い袋を落としてそこから滑り台のように降りる避難時の脱出方法の一つとなる。


玄関を開けると旅館に置いてあるような下駄箱が現れる。

下駄箱には母が作ったシールでどこを使っていいかがシールで貼られている。

玄関にみんなが靴を脱ぎっぱなしにすると靴を踏み越えないといけなくなるのを嫌った結果こうなった。

実家ではもちろん普段遣いの靴は脱ぎっぱなしで放置していたので面倒だけど人数が多いとこうなるのだろう。

玄関に上がると長い廊下があるが、玄関に一番近いドアはトイレになっている。

広い家にありがちなんだろうか。

トイレ我慢チャレンジで家についた瞬間気を抜く人が多いのか、ここにトイレというのはなかなか違和感だ。


逆側のドアは客室になっている。

客室を開けるとホテルの一室のような空間が現れる。

ここだけで一家で十分生活できる。

廊下の先にあるのがリビング。

家一軒分くらいの広さのリビングには壁掛けの大型テレビに食卓、左にキッチン、右にお風呂。

そこから3方向に廊下が伸びていて、一つはバルコニー

一つはそれぞれの部屋、一つは共有のクローゼットルームのようになった部屋に通じている。

クローゼットルームは部屋を開けると数本のパイプが並んでおり、そこにハンガーを掛けても通路が確保されていて、そこまで服が増える状況が想像できないけどムダに広い収納部屋となっていて、隣には物が溢れた際に保管する納戸(トランクルームっていうのかな?)になっていた。

ミャンとリュードにかくれんぼを挑まれるとだいたいここに一人はいる。

他に隠れる率が高いのがお風呂かトイレ

って、全部説明していくの無理ゲーすぎた。

広すぎんだよこの家は!

家の中で何度か迷子になっている俺は確認作業を切り上げた。

知らない人が紛れ込んでいて、普通に生活していても誰も気づかないこと請け合いだ。

何度でも言おう。スーパーだの家電量販店だのが入る面積のフロアが丸々家なんだ。

使う部屋以外把握する意味なんてないだろ?


そのうち案内板がつく予感するしている。

無駄にファンシーな母の手作りの。


さて、広大な面積を誇る我が家に切実な問題が噴出している。

家の掃除問題。

結局みんな近場の部屋から埋まっているために掃除が行き届かない。

掃除機もあるし、掃除道具の問題でないことはご理解いただけるだろう。

深刻なのは人手不足。

俺の部屋はリビングから遠くを確保したために母から自分の部屋プラス3部屋の掃除を命じられている。


「使わなくても部屋は汚れるの。わかるわね?」


わかりたくなかった。

全力で拒否しようとした所、ドタバタと走り回るミャンとリュードとシャーライ


「いや、俺はいつどこで呼び出されるかわからないんだけど?

また3年とか居なくなったら維持できないんじゃ」


「責任を持つっていうのはそういうことよ。わかるわね?」


再度念押しされてあえなく陥落した。

適当にモップがけするだけでは見回りされて終わる可能性がある。

母はGにとてつもなく厳しいのだ。

Gがどこかで湧いてるかもしれない状況が許せないらしい。


「そうでなくても近くにフードコートとか温床になりそうな場所があるのよ?

いつも綺麗にしておくことが大変なんだから、それくらい協力してくれないと困るのよ」


父は仕事に逃げた。

一つ言いたい、稼ぐためと言うなら父が働く必要がない資産を持つ私だけ除外されてもいいのでは?と

母は笑顔で近づいてくるときが一番怖いので言わない。

その様子を見ていたマリアがニヤッとしていたのがすごく腹立たしかったことを添えておく。


ここで生活を始めてから母親ズが強くなってきている。

ヤルンさんにアマンダさんとうちの母が揃ってシャーライを叱った時には、リュードと一緒に情けない鳴き声を上げていた。

シャーライが廊下に落とし物をしたことを怒っていたんだけど、リュードが一緒に叱られていた。

ちゃんとトイレをしつけないと檻に入れたままにしておくと言われて涙目で謝っていたリュードは、それから3人の母親ズには従順に言うことを聞く素直な子になっている。


今は切実にお手伝いさんが欲しい。

徐々に母親ズのストレスが溜まり、周りに燃え広がると、こんなに広い家が窮屈になってしまう。


そんな中、エリナとマールが使い慣れたパソコンを駆使して俺の部屋に来てロボット掃除機の購入検討を進言してきた。

俺は悩んだ。

かわいいメイドさんならまだしもロボット掃除機?

しかも、マールは絶対バラして構造を見たいって目で訴えてるんだけど。


「これがあれば掃除から開放されるわ。

それに、一度構造を見せてもらえたら私が改造するからお願い」


ハッキリバラすと宣言までされた。


「みんなで共同生活は大変でしょ?

いくらザガニでも最近は掃除より料理ばっかりで手が回らないって言ってたの。

だから、掃除が勝手にできるならみんなの精神衛生上必要だと思うの」


わかってるんだよ。

でも、理由があれば清楚で可愛い上にメイド服を着た美少女が居る生活を目指せるってものだろう?

俺は結局首を縦には振らなかった。

こんなチャンスを棒に振ってたまるか!

日本で若くて可愛いメイドさんなんて望むべくもない。

美少女を囲うなら異世界だよな!


というわけでかわいいメイドさんを囲えるような異世界カマン!


なんて考えていても叶うわけもなく、掃除問題は更に加速していった。

シャーライの抜け毛問題。

そこらじゅうを走り回ってるし、フローリングの隙間に入ると取れないと母親ズのボルテージが上がっているのを感じる。

これはまずい、早急に改善する必要がある。

それでも、俺は。

メイド服で掃除して、たまにしゃがみこんでスカートの裾を折り曲げる光景が見たいんだ。

スカート丈は長めで腰まであるロングの髪をなびかせてご主人さまなんて呼ばれた日にゃ、きつい異世界冒険もやる気が増すってものですよ。

慎ましく清楚で深窓の美少女的な存在。

男慣れしてなくて、上はシャツ一枚で歩き回ると真っ赤になるような感じが良いね。


って、何を考えてるんだと自嘲した。

仕方なく、俺はPCでロボット掃除機を購入した。

断腸の思いだった。


結局、殺伐とした空気は霧散した。

ホッとしたと同時に大事なものを失ったような心の穴を自覚した。


掃除は人に膨大なストレスを及ぼすことを知った。

トイレと風呂は誰も言及しなかったが、誰かが決まって掃除しているようだ。

美少女メイドさんは5人ほどほしい。

やはりロボット掃除機では限界がある。

そう思い直した。


部屋の仕切りはないということに鳴っていたはずだけど、そういえばお着替えハプニングが起こらないようにか、それぞれの部屋はしっかり仕切られていた。

色々思い通りにはならないものだ。


どこかにいるリア充種族たちよ。

少しでいいからその素養を俺にも分けてくれないか?

みんなの元気をもらうポーズで集めようとしてみるけど、残念ながら俺はそんな魔法を持ち合わせていなかった。

ふと視線を感じて視線の主を探すと


「何してるの?」


とミャンが飛びついてきた。

流石に正直にモテパワーを集めてたとは言えない。

中二もいいところだからな。


「精神統一してたんだよ」


そう、これは精神統一と言ってもいいだろう。

なぜなら、無の境地を目指す心境で妄想を一点集中で求めたわけだからな。


「そんなことより、ミャンと遊んで?」


「何したい?」


「えっと、ええーっと。ゲーム?」


1日1時間だけと決められたゲーム機がうちにはリビングに設置されている。

買ったソフトは1つだけなのに、なぜだか誰かがゲームをし始めるとみんなが集まって1時間毎に交代して結局3,4時間遊んだり見たり、アドバイスしたりしている。

だが、あえてここで時間制限のあるゲームよりもミャンが楽しめそうなものを思いついた。

こんな事言うと拗ねるけど、残念ながらミャンはものすごくゲームが下手なのだ。


「いいこと思いついたから、ちょっと待っててくれる?すぐ戻るからさ」


「わかった。ここで待ってていい?」


「じゃあ、ここで待っててね」


そう言って俺はおもちゃ屋さんまで走る。

エレベーターに乗り一度1階まで降りてエントランスから出て、ショピングフロアに入る。

おもちゃ屋さんで探すのはなんならコンビニでも売っているど定番ゲームUNO

おもちゃ屋さんは充実の品ぞろえのために簡単には見つけられない。

パズルに模型に幼児向けと多種多様だ。

探すことを即諦めてレジカウンターで店員さんに聞いてUNOを購入してエスカレーターで1階まで戻るとマンションのエントランスからエレベーターに飛び乗り・・・


俺の部屋で待ってるはずだけど俺の部屋はどこだ?と自分の部屋を自分の家で探して歩いた。

やっぱどこに誰の部屋があるかはわかるようにしないといけないと思う。

とりあえず、今度自分のスマホに部屋までの道をナビするように、マップに地点セットしておこうと考えながら部屋に戻った。


「遅いよ~」


ミャンはちょっとむくれていた。

買いに出ている時間よりも、自宅内で迷ってる時間のほうが長かったとは言うまい。


ミャンはUNOにドハマりした。

実力ではなく運も味方につけないと勝てないゲームで自分でも勝てることが嬉しくて仕方ないようだった。

結局UNOはもう一度買いに行かされて全員で交代しながら遊んだのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ