エピローグ/パルマ・コス=デミィデア・アウローラ
アムテキレスちゃんのとこで悶々とした夜を過ごした次の日。
お姉ちゃんの引っ越しを手伝うと言うことでアンナちゃんを見送り、ボクはイザヤハウスに来ていた。
「ただいまー」
「……」
「……」
あれ、間違えた?
安楽椅子を止めてまで、イザヤは沈黙した。
「…………おかえり」
よかったー! こんなに嬉しい「おかえり」ははじめてだよ!
「ぁ、アノー……、も一回、いいですか?」
「……なんで?」
「めちゃくちゃ嬉しかったから」
声に出た。
「……、おかえり」
「もう一回」
「おかえり」
「……えへへ。アリガト……」
「……そう」
再び安楽椅子を漕ぎ出したイザヤ。一つ息をして、手招きをした。傍らには、ご丁寧に人をダメにしそうなくらい大きなクッションが置いてある。
「なに?」
「……別に」
といいつつ、イザヤは手を握ってきた。
「え、なになになに」
「……パルマ」
「……はい」
暖炉がうるさく感じるほど、世界の音はボクたちだけだ。
「パルマ・コス=デミィデア・アウローラ」
確かめるように、呟く。
「……」
「……」
そういえばイデアさんのこと、なんて野暮なことは聞くまい。ナイフを借りたとき色々視えたけど、知られたくないこともあるだろう。
「パルマ」
「パルマだけど?」
「うん。そうだね」
「……そうか」
手を繋いだまま、ひどく上機嫌に、安楽椅子が揺れ出す。
なんだよ。
なんなんだよ。
なんで離さないんだよ。
「……あー、もう」
ちょっと、困らせちゃいますか。
「ねぇ、イザヤ。ボクね――」




