(朝倉イザヤ)女神同伴異世界侵略/ステンドグラス・世界
激重感情後方保護者面前作主人公系魔王サイド兼エピソード補強回です
パルマとアンナがひと段落した、その頃。
『シュレディンガーの猫の箱庭』に滞在している魔王、『麒麟の亡者』星狩りのヨグバ・クリードこと朝倉イザヤは、安楽椅子から立ち上がった。
「……早すぎる」
呟いてイザヤは、首に巻いたチョーカーを撫ぜた。
パルマに渡した対のチョーカーには、アンテナとしての機能を備えさせている。
危惧しているのは、四方の防人……東西南北それぞれの大国に構える、一騎当千の勇士たち……が緊急強制転送され、一堂に会するようなカタストロフだ。
◆◆◆
……。
正しい時間では数ヶ月前。朝倉イザヤが過ごした時間にして百年とはいかないほど、昔のこと。
2015年・日本で暮らしていた朝倉イザヤは、女神イデアによってこの世界に召喚された。
「やぁイザヤ、朝倉イザヤ。ボクは女神イデア。キミにお願いがあって、ここにきてもらったんだ。聞いてくれるね?」
女神を名乗る少女の目的は、この世界の破壊。一度滅んだ人類史を、ステンドグラスのように繋ぎ合わせたこの歪な世界の――是正だ。
「そもそもは1999年、ノストラダムスが言い当てた恐怖の大王だね。抑え切れずめちゃくちゃになった世界は、それでもなんとかこうしてバラバラにならずにすんでいる。
「ボクはね、イザヤ。こんな世界無くなっちゃえばいいと思うんだ。
「誰もボクを覚えていない。ボク自身も、女神イデアになる前の、一人の少女だったことを」
ひどく悲しげに語る女神の言葉に、朝倉イザヤは手を差し伸べた。
「いいよ。イデアのためなら、ボクはなんでもする」
もともと前いた世界に興味はない。新しい場所を与えてくれたイデアのためになら、もう一度世界を滅ぼしてやるのもやぶさかではなかった。
……そうして。元の世界に蔓延っていた仮説空論与太話――『レコード』を収集し、朝倉イザヤは童話に語られるヨグバ・クリードの名を与えられた。
星狩り。欲しがり。空無であるが故に女神の頼みを聞き入れた少年は、最後に一番大切なものを取りこぼす。
魔王として四方の防人の討伐対象となったのが最初。そのとき、元の世界に帰るために――と、イデアから『世界5分前仮説』を受け継いでから、何度もやり直した。
少しずつ状況は変わっていって、イデアとの出会いから四方の防人との関係、なによりイデアの死に様も、それぞれ異なっていた。
……だからだろう。いつかは欲しかった結末が手に入ると信じて、世界を壊すという誓いも、元の世界に帰るという約束も、イデアの想い全てを踏み躙るように、彼女が生き残る手段を探し続けている。
◆◆◆
そして今回。
一向にイデアと再会できないまま、これまでと同じく『猫の庭』を拠点に、俺はヨグバ・クリードとして情報集めに専念していた。
その中で、北のキャラバンが生贄を用意してまでの強行突破を試みているのを知る。
見て見ぬふりをするのも気分が悪いので、魔物に襲われる前に追い払おうと、『庭』の主に協力を申し出たりもする中で、助けられた、いや助かったのはたった一人。
「……名前」
イデアのようでイデアではない少女だった。
「なまえ?」
少しトボけたような声音。見間違えるはずもない、鮮やかなピンクの髪。
「名前を、聞いていいかな」
溢れる感情と涙を抑え、問いかけてみる。
「パルマ、だけど」
……そうか。
少しずつ変わっていく中で、あの女神は因果から解き放たれたのか……と、安堵する。
「パルマ=コス・デミィデア・アウローラ。これでいい? 満足?」
安堵も束の間。頭が真っ白になりそうだった。
デミィデア……デミィデア、だと。
それからしばらく話しているうち、デミィデアが一人の少女として生きてきたことを知った。
デミィデアにはデミィデアの人生があって、考え方があって、生き方があって。
やりたいことがある、と聞いて、俺はそれだけで救われたのかもしれない。イデアは……デミィデアは、俺に復讐と平穏を願わなきゃならない呪いから解き放たれたのだ、と。
ありがとう、パルマ。
声には出なかったけど、自然とその髪を撫でていた。
……イザヤについて、特に語ることはありません。
ひとまず完結の目処が立ちました




