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サーリスト戦記 外伝  作者: ファルコン
北方の覇者編
1/1

出会い

 

 これは……覇を唱えた男の物語だ


「……終わりだ、降伏しろ……今ならまだ間に合う! 俺の元に帰ってこい!!」


 いや、少し違うか……

 これは男が変わる物語だ

 己の野望の為に戦い、力を手に入れて、敵には容赦なく接するが……

 それでも、仲間に対しては甘い男


 そいつが変わる物語だ



「何泣いてんだよ……お前の野望は、その程度で揺らぐのか!! 俺はお前を裏切った!! 王を目指すのなら……全てを手に入れるなら……俺を殺せ!! メディ!!」



 ーーーサーリスト戦記 外伝ーーー


 焔歴104年


 ノースブリード大陸


 この大陸は今、荒れていた

 大陸を治めていた王が死に、後継者が居らず、多くの領主達が『我こそが王だ』と挙兵し、戦っていた


 北も東も西も南も

 どこが勝った

 とごが独立した

 誰々が裏切った

 何々が死んで滅んだ


 そんな話がずっと続いていた


 それが今のノースブリード大陸だ

 そんな状態が続けば、国は弱る、民は飢える


 北方の土地も、例外ではなかった



「…………」


 北方の領『ケール』

 その更に端の所に廃村があった

 現在はゴミが運び込まれる場所だ


 そこに1人の青年が居た

 産まれた時から廃村に居た青年だ

 歳は15、痩せ細り、飢えていた


「ちっ、大したものは無いか……」


 青年は日課のゴミあさりをしていた

 ここにゴミを捨てるのは貴族の連中だ

 奴隷を使って、ゴミをここまで運ばせて捨てる

 そのゴミの中には、食べ物もあった

 貴族の口に合わなかった物や、もういらないからと捨てた物もあった


 この廃村に暮らす者達は、そのゴミを食べて飢えをしのいでいた


「……はぁ、仕方ない、今日も水で何とかするか」


 勿論、常に食べ物があるわけではない

 そんな時は、近くにある川の水で飢えをしのぐ

 とても綺麗な川とは言えないが……彼等にとっては唯一腹をいっぱいに出来るものだ


 青年は川に行く

 そして、川に着いたら、頭を川に突っ込んで、水を飲む


 ゴクゴクと、必死に腹を満たす


 トン


「?」


 そうしていたら、頭に何か当たった


「ぶはっ!」


 青年は川から頭を出す、そして当たったものを見る


「……子供?」


 それは子供だった、顔も身体もボロボロな子供


「よっと!」


 青年は子供を川から引き上げる

 こんな子供を見捨てることは出来ない…………なんて優しさで助けた訳ではない


「……ちっ、結構いい服っぽいから、金目の物があると思ったが」


 ゴソゴソと青年は子供の身体をまさぐった

 物取りである、彼は生きるのに必死なのだ


「さてと、物がないならどうするか……」


 青年は子供を見ながら考える

 川に捨てるか?

 それとも、奴隷商にでも売るか?


「……よし売るか」


 少し考えてから、青年は子供を売ることにした

 そうと決まれば急がなくては、誰かに見られて奪われる前に済ませるべきだ


 青年が子供に手を伸ばす

 すると……


 ガシッ!!


「うぉ!?」


 子供が青年の腕を掴んだ

 そして一気に引っ張って青年の顔を地につける


「がふっ!?」

「動くな」

「!?」


 子供が青年の後頭部にしがみつく

 そして、青年の首筋に冷たい何かを当てる


(ナイフ!? こいつ!)


 青年は冷たい感触から、首に当てられてるのはナイフだと判断した


「お、落ち着け! 俺はお前を助けただけだ!」


 青年は説得しようと口を開く


「へぇ、身体中を調べる必要があるのか?」

「それはあれだ……濡れた服を着てるとツラいだろ? 脱がせて乾かそうとしたんだ! まあ、脱がしかたがわからなくて、諦めたんだがな!」


 半分嘘で半分本当だ

 服は売れるかもとして脱がそうとした、しかし、脱がしかたがわからなかったのだ


「…………まぁ、それならいいか」


 子供が青年から離れる

 青年は急いで顔を上げる


「…………」

「…………」


 目が合う青年と子供


「お前、何者だ?」


 青年は子供に聞く

 青年は顔を上げるまでは、この子供をぶちのめそうと思っていた

 しかし、顔を上げて、子供を見た時、この子供が普通とは違うと感じたのだ

 何と言うのだろうか……迫力があると言うのだろうか


「俺? あー、捨てられたガキだよ」


 子供はそう言うと上着を脱ぎ、水を絞り出す


「その怪我は?」

「3人居る兄貴達に袋叩きにされてね、俺は嫌われていたからな」

「あー、普通のガキと比べたら可愛げもないしな」

「ふん!」


 うるせえ、って感じで子供は目をそらす

 それは子供っぽい仕草だった


「ガキ、お前名前は?」

「あんたから名乗れよ」


 子供は上着を着直しながら言う


「俺は『バン』、近くの廃村で飢えてる男だ」


 青年……バンはそう言うと子供を見る


「次はお前だ、名前は?」

「…………」


 子供はバンを見る

 そして……


「俺はメルセ……いや、捨てられたし、この名前はいいか……『メディ』だ……くしゅん!!」


 そう言うと子供……メディはクシャミをした


「……あー、なんだ、取り敢えず俺の所に来るか? 何もないが、一応休めるぞ」

「……なにもしないよな?」

「もうそんな気はしねえよ」


 そう言ってバンは立ち上がり、歩き始める

 メディは、そんなバンの後ろをトコトコとついていくのだった



 これは後に北方を征服する『メディ』……『メルセデス』と

 そんな彼の右腕として共に戦い、最後に彼を裏切り、彼を変えた男『バン』


 彼等を中心とした物語である



 ーーー『北方の覇者』ーーー


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