第47話
オルド軍は突撃を開始した。しかし、突撃の勢いは走れば走るほど勢いが弱まっていった。挙句の果てには、突撃をせずにその場を離れる者までが現れた。
「なんなんだこれは! ふざけるな!」
ガイルは敵軍を見て、濁った声で激昂し始めた。
「俺は! 俺の夢を記してくれた男を殺した奴がこんな真似しやがって! ふざけるんじゃねぇぞ!」
ガイルは鋭い眼光で敵の正面で突撃してくる敵軍を睨みつけた。
「ウォード将軍の仇を取る。俺についてこい」
ガイルは突撃に対して、士気上げは行わなず。ただ一言だけ呟いて、先陣を切った。
「「「うぉーーーー」」」
ガイルの言葉を聞いて、一部のヘルト兵が雄叫びを上げて、突撃した。それにつられて他の兵士も声を上げ、突撃を開始した。
「俺がスラムに住んでる頃に見たウォード将軍が敵に勝って凱旋する姿は今でも忘れられねえ」
ガイルはカインとレオンに出会う前はスラムでガキ大将をやっていた時に、ウォードの凱旋を見た時に憧れを抱いた。
ウォード将軍が戦いに勝って戻ってきた時に、街はいつもお祭り騒ぎとなっていた。
「ウォード将軍の凱旋だー」
「見に行こうぜ」
「ああ、今回もウォード将軍の勝利だ」
ウォード将軍が城下町に入ると、中央通りは人で溢れかえっていた。
常に勝って帰ってくるウォードはいつも魔王を討伐した勇者のように歓声を浴びていた。
そんな姿をガイルはいつも裏路地からこっそりと眺めていた。
「すげぇ。かっけぇ」
ガイルは羨望の眼差しでウォードを眺めていた。ガイルはそのうち将来の自分もあの将軍のようにと思い始めるのに時間は掛からなかった。
「そんなの無理に決まってんだろ」
しかし、周りの仲間達は全員口を揃えて無理だと言い始めた。
「うるせぇ! なるんだよ」
ガイルは自分の夢にいちゃもんを付ける者をことごとく力で黙らせていった。そのうち、周辺の子供を束ねるガキ大将となっていた。
ある日、ガイルが喧嘩を終えた後に、カインとレオンが現れた。
「おい。お前がガイルだな。お前の夢は何だ?」
「てめえも、馬鹿にしやがるのか」
ガイルは急に声をかけられると誰かを確認せずに、後ろに向かって拳を突き出そうとした。
「なっ?!」
その拳は当たる事は無かった。それどころかガイルの体が宙を舞って倒れた。
「ほら、カイン。危険だからやめとこうって言ったよね」
ガイルが顔を見上げると目の前には青髪の少年と黒髪の少年が並んで立っていた。
「まぁ、お前がいるから大丈夫だろ。なあ、お前の夢はなんだ?」
カインはレオンの肩を叩いて、笑った。カインはそのまま倒れているガイルの顔を覗き込んだ。
「ウォード将軍のような凱旋をしたい」
ガイルはカインの目に向かって、真剣な表情をしてカインに言った。
「そうか。なら、俺の仲間にならねぇか? 俺たちの偉業を成し遂げようぜ」
カインは笑顔でガイルに向かって手を差し伸べた。これがガイルとカインの出会いだった。
ガイルは大剣を握りしめて、オルド軍に向かって駆け始めた。
「突撃しろ! 敵陣を、突破するぞ! この私に続け!」
ガイルはオルド軍の最前線で立っている男を見て、指揮官である事を確認すると思いっきり大剣を振り下ろした。
「ぐあっーー」
ガイルの大剣は馬の首を一刀両断した。乗っていた男は急な出来事に対処できずにそのまま倒れた。
そして、オルド軍の突撃は急激に止まった。
「さて、お前らはどうする?」
ガイルはオルド軍を睨むとオルド軍は次々に武器を捨てて投降した。
「こいつはレイジに持ってきゃいいんだよな」
ガイルは気絶した指揮官を持って、レイジの方向へと持っていった。
「レイジ、持って来たぞ」
「おっ、もしかしたら殺したかと思ってけどならよかった」
ガイルが指揮官を担ぎながらレイジの元に訪れた。そして、乱雑に指揮官を投げ捨てた。
「なんだ? ここは何処だ? うぉわっーわ!」
オルドの指揮官は立ち上がりあたりを見渡して、ガイルを見つけると驚いて叫んだ。
「おい。お前は誰だ? そして、なんでこんな馬鹿げた突撃をしやがった?」
レイジは驚いている指揮官に向けて射るような目つきで話しかけてかけた。
「俺はライター・オルド、先の戦いのヘルトの将軍のような華やかな死に方をしたいと思ったんだ」
ライターは少しおかしな目つきでレイジの質問に答えた。ガイルは勢いよく殴り込もうとすると、レイジが立ち上がりながら手で静止した。
「ふざけるなよ! このクズ野郎が!」
レイジはいきなりライターの頬に向けて拳をぶつけた。
「お前が死にたかろうがどうでもいい。関係ない兵士にまで、巻き込むんじゃねえ。てめえは妻子を逃したからいいかもしれねぇけどよ。兵士の家族は国に残ってるだろうが! お前の勝手で自分の民を巻き込んで死のうとするんじゃねぇ。普通はお前が民を導き守るんだろうが」
レイジがライターに向かって恫喝した。ライターは言い返さずにいた。そして、口を開いた。
「なぜ、その情報を」
ライターは家族を逃したことを知っている理由を聞こうとした。レイジは少し黙ってから答えた。
「突撃する前に逃げてきたオルド兵士から聞いた。それより、あの将軍のように? ふざけるなよ。お前にあのジジイを語る資格があると思うな! 華がある? ふざけるなよ。あのジジイは死にたいから死んだんじゃねえ。仲間を主君を守りたいから死んだんだろうが。お前のような奴と同じにするな」
レイジの声は段々と大きくなり、言い切るとライターに向かって背中を向けた。そして、葉巻を取り出して火を灯した後に咥えた。
「はぁー。殺していいぞ」
レイジは葉巻で一息つき、しばらく経ってから言葉を発した。ガイルは答えることなく、無言でライターの首を切り落とした。
「なぁ、なんでこいつを連れてきて欲しかったんだ?」
ガイルは首を切り落とした後に、大剣を置いて、レイジに向かって質問を投げかけた。
「あのジジイを倒したんだ。どんな奴かと思って見てみたかった。だが、見る価値もなかった。これじゃあ、あのジジイも浮かばれねぇな」
レイジは自分の手にある手紙を握りながら、少し寂しそうな声でガイルに答えた。
「そうか」
ガイルはなんとも言えない顔で答えた。ガイルとレイジはそのあとも無言で同じ方向を見続けていた。




