紅魔異変
前回のあらすじ
ガソリンスタンドで偶然魔理沙と会った霊夢。魔理沙が紅魔館に遊びに行くと聞き、特に理由もなく付いていく事にしたが…
しばらく湖畔に沿ってバイクを走らせる霊夢と魔理沙。湖からの春風を感じながら走ること30分程で紅魔館の門前に到着した。
「あっお二人共どうも!霊夢さんは久しぶりじゃないですか?」
珍しく寝てなかったのか、門前に停めるなり声を掛けてきた美鈴。霊夢が999から降り、美鈴を一瞥する
「来る用事も無かったからね。まぁ今日も別に用事は無いし、暇つぶしなんだけどね…」
遅れて魔理沙が2人に歩み寄る
「おぅ美鈴!今日もパチュリーに会いに来たぜ!今居るよな?」
一瞬、渋い顔をして目を逸らす美鈴。
「…すいません、また日を改めて貰ってもいいですかね?」
何度と紅魔館を訪れていた魔理沙だが、断られたのは初めてだった。当然困惑の表情を見せる
「え〜なんでだぜ?」
「お嬢様からの命令でしばらくの間人を通さないようにと言われてるんですよ…ホントに申し訳ないですけどまたお嬢様から許可が降りるまでは…」
イマイチ納得出来ない素振りを見せる魔理沙だが、普段から世話になってるし別にいいかとバイクに戻る。
「まぁそれなら仕方ないか。よし霊夢帰ろうz」
「待って魔理沙」
霊夢が言い終わる前に口を挟んだ。
「美鈴、あなたレミリアからちゃんと理由は聞いたの?」
食ってかかるような強い口調で問う
「聞きましたけど、口外はするなと言われてるので霊夢さんでもお教えは出来ませんね…ごめんなさい」
確信したかのように、霊夢は更に強く問い詰める
「あなた達、また何か企んでるわね?また異変を起こそうとしていて、その準備なんでしょ?それ以外私に伝えられない理由なんて思いつかないわよ」
背後で魔理沙が呆れて肩をすくめた
「おい霊夢、いくらなんでも無理があるんじゃないか?他に理由なんて幾らでも…」
「万が一って事もあるじゃない。悪いけど無理矢理でも入らせて貰うわよ」
門に歩み寄る霊夢。しかし当然美鈴が立ちはだかる
「確かにお嬢様は前科がありますし、疑うのも無理はないと思います。ですが相手が霊夢さんでも門番として相応の対応はさせてもらいます」
改めて向かい合い、体格差に僅かに怯む霊夢。弾幕が無いとこうも精神的な余裕が失せるものだったのか。
「いいわ。今̥の̥幻̥想̥郷̥のルールでやりましょう、私が勝ったら先に通して貰うわよ、負けたら大人しく引くわ」
内心怯えつつそう宣言する霊夢。霊夢はまだ美鈴とは1度もレースをした事が無いのだ。かつての弾幕での強さはもちろんレースに直結する事は無い。現に霊夢は予想外の相手に1度敗北を喫してるのだ。
「分かりました。湖畔1周のレースでどうでしょうか?先に1周して再び紅魔館にたどり着いた方が勝利です」
美鈴も無論余裕を見せてはいない。本気の闘志が眼に写る
「えぇ。早くバイクを用意しなさい」
美鈴がバイクを取りに離れ、その間に霊夢はヘルメットを再び被り999へと戻る。ふと横から魔理沙が声をかけた
「美鈴のやつかなり速いぜ?別にそこまでして入りたいなら止めないけど勝負仕掛けたなら勝ってくれよな?」
霊夢が深く呼吸する
「心配しなくていいわよ。私だってリッター乗ってるんだし、直線続きの湖畔ならなんとか」
太く鋭い音を響かせ現れたZZR1100は、霊夢のそんな余裕を奪い去るには充分だった。黒い車体に写る鈍い輝きが霊夢を威圧する
「コースに有利なバイクで申し訳ないですが、私だって負けるわけにはいきませんから」