楽園の素敵な巫女
博麗神社は異変の後も、人妖問わず憩いの場として愛されている。そしてまた、博麗神社の巫女、博麗霊夢は今も多大な信頼を得ている。
「おい霊夢!あたいと勝負しな!」
鳥居の前を掃除していた霊夢が振り返ると石段を駆け上がる妖精達が見えた。勝負を仕掛けてきたのは中央のチルノだろう。
「ねぇやめようよチルノちゃんまた負けるだけだって…」
奥から縮こまった大妖精がチルノに訴える。が、無論聞く耳を持たない
「全く懲りないわねぇ…いい加減にガソリン代が持たないわよ」
呆れた顔で霊夢が返す
「じゃあいいさ!あたいが万が一負けたらガソリン満タンになるまで払ってやるよ!まぁ最速のあたいが負けるわけないけどねぇ〜」
「八連敗なのにかー」
ルーミアの冷酷なダメ出しも当然チルノの耳には入っていない
「ならいいけど…」
箒を木に立てかけてヘルメットを取りに納屋へ向かう霊夢
「下で待ってるからな!怖気づいて逃げるんじゃないぞ!」
チルノは大妖精とルーミアを連れてまた階段を駆け下りた
「家の真ん前だってのにどこに逃げるって言うのかしら…」
チルノが勢いよくキックを踏み切る。甲高い音とともにRG50Γが勢いよく白煙を吹き上げた。ヒビ割れ、薄汚れたカウルは決して状態のいいモノとは言えないが、彼女のレースに長く付き合ってきた、経験に富んだレプリカならではの闘士を醸し出してる。
「もぉ〜どうなっても知らないからね?」
大妖精が隣に停めていたDトラッカー125に跨る。モタードに乗れるほど体型に恵まれている妖精は少なく、妖精達の間ではしばしばオフロード系に乗れるのは自慢になるが、大妖精自身レースに興味は無いのか納車した時からずっとノーマルだ。
そしてルーミアは大妖精の後ろに乗る。彼女もバイクは持っているらしいがたいていの場合大妖精に載せてもらっている。
「さぁいつでもかかってこいよ霊夢!!」
チルノがアクセルをひねり白煙を撒き散らす。
「2st乗り回すのは結構だけど神社の側で無駄に吹かすのはやめてよね」
輝く赤い車体に異質な縦2灯の威圧感、力強いLツインサウンドで神社の裏からドゥカティ999Rに乗った霊夢がやってきた
「やっぱりどうやっても勝てないよチルノちゃん…」
ため息混じりに呟く大妖精。
「勝敗は見るまでもないのかー」
無論霊夢の圧勝である。
というのも、しばらく前を譲ってあげようとしていた霊夢だが、途中でチルノが転倒したためゴールに行く前に決着が付いてしまったのだ。傍らに999を止めて霊夢が倒れてる50Γを路肩に移動する。(無論、幻想郷ではそこまで交通量が無いので追突される心配は皆無だが)そして地面に倒れてるチルノに手を差し出した
「あなた何回目よこれで…ホラ」
霊夢の腕を借りて立ち上がるチルノ。人間なら死んでもおかしくないほどに派手に転倒したが流石妖精だけあって丈夫だ
「ま、まぁ今回はあたいがちょっとしたマシンアクシデントで負けちゃったけど、運が良かったね霊夢!本気のあたいの前で恥かかなくて!」
額に汗を流しながらヘルメットを外す
「はいはい安心したわ。じゃあ約束通りガス代ね」
「えっ」
固まるチルノ
「金欠なのかー」