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8 饒舌になる俺

 打ち付けた臀部を抑えて、サイはアーネスに手首を引っ張られている。テラスから階段を降り、庭園の人目につかないところまで連れていかれた。


「サイ、何を簡単に薬を盛られてるんだ! あまつさえ、ユーネイア様と口づけをしようとするなど調子に乗り過ぎだろ!? お兄さまに対する裏切りだぞ!? 」


 さっきまで強く握っていた手首を弾いて、アーネスは憤慨していた。サイにも言い分がある。


「なんだよ、この城に連れてくるまでに俺に散々薬を盛ったくせに。毒味なんて習慣、俺が知るもんか! だいたいお前は強引で言葉足らずで身勝手すぎる。何が、お兄さまだ! ブラコン拗らせてんじゃないぞ。俺はマドリアス王子に忠誠心などないし、お前の言いなりになんか絶対にならないからな! 」


 俺の語気に、アーネスが唇をキッと閉じた。


「……それにしても、お前に比べてユーネイア姫は甲斐甲斐しくて可愛いよな。アーネスも見習ったらどうだ」


 ——あ〜っ、言ってやった。スッキリする。


 今回の芝居に関しても、何も知らないユーネイア姫を騙すなんて事するからだよ。それに、ギリギリ口づけを交わしてない。俺は悪くない。


 マドリアスの顔を自分に戻して得意げに空を見上げる。もうすぐ夕焼けだ。美しい景観の王宮庭園に気分も悪くない。


 あの後のマドリアス王子とユーネイア姫がどうなったか野暮な話だが気になる。


 目線をアーネスに下ろすと、物凄い剣幕で目を釣り上げ歯ぎしりをしている。元が美人なだけに鋭く怖い顔だ。背中から暗い影が沸き立つ様な怒りっぷりだ。


「ユーネイア様はな、もしお兄さまが王位を継げなかったら婚約が第二王子のググランデに移ってしまうかも知れないんだぞ。お兄さまとユーネイア様とが結ばれなかったら、お前のせいだからな! 」


 ——超理不尽。なんで俺のせいなんだよ。

 お兄さま、お兄さま、お兄さま!! なんなんだよ!!


「……あっそう。だからユーネイア姫は、既成事実でも作ってマドリアス王子と結婚したいってわけか。健気で可愛いじゃないか。……アーネスのブラコンも重症ってわけじゃないんだな。はっはっはっ!! 」


 俺は腹を抱えて大笑いする。媚薬とリキュールの相性が良いのか相乗効果なのか、酒に弱いわけじゃないのに良い気分だ。


「……サイ、私は大真面目だぞ。不愉快だ! 」


 アーネスはサイに背を向ける様に踵を返し、自分たちだけが使っている宮殿の離れに向けて戻ろうとした。


 むにゅ……


「あー、身体だけは大人になっちゃって、中身はブラコンとか、残念だよな——」


「はっ!? サイ、止めろ! 」


 アーネスの背中に抱きついたサイが、アーネスの胸を揉みしだく。アーネスの耳元に口を押し付けると、サイはアーネスをいじめる様に話始めた。


「アイネイアス、本当は俺の事好きだろ? ユーネイア姫にヤキモチ妬いた? 俺に無理矢理睡眠薬飲ませて眠らせた後、俺にベタベタしてなかった? 」


「……バカ! するか! お前の妄想だ! 」


「俺の妄想ってなんで《《アイネイアス姫》》が知ってるんだよ」


 アーネスはサイの手を胸から解いて向き合うと、サイはニヤニヤしながら懲りずにアーネスを正面から抱き直した。


「媚薬が効き過ぎだぞ! 正気になれ、サイ!! 」


 サイが魔力でアーネスを抑え込むのを、アーネスは必死に抵抗する。サイのリミッターの外れた魔力にアーネスは驚いた。


「あれ? アイネイアス、俺の匂い好きだろ? この間も————」


「いいかげんに、しろ! 」


 アーネスは悶えつつ重なる体の隙を作って一気にサイの腕を振り解くと、サイの溝内にクリティカルヒットの拳を撃ち込んだ。




 ——気絶した俺が目覚めると、尻餅をついた辺りからの記憶が抜けていた。ただ、アーネスに色々やらかしたと責められて、ペナルティーが加算された。そもそもペナルティー制だったっけ? 色々ってなんだ!?

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