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5 簀巻きで拉致される

 俺はこの何日か限界まで耐えたはずだった。虚しくも今、荷馬車に放り込まれている。


 戸と窓を直したところで、家に工房、小さな菜園と次々と破壊され、食料備蓄は底を尽くし……見るも無残な俺の住処。


 アーネスが横取りしたベッドが最後まで無傷だったぐらいだ。


 アーネスは俺の服を洗ってやると言ってズダボロにし、最後の一枚は無理矢理剥ぎ取られ……引き裂かれた。このお姫様は家事全般センスがない。恥ずかしくて何処にも行けないと喚いたら、シーツで包まれ簀巻きにされるとそのまま担がれ森の外に連れ出された。


 こいつの怪力をどうにかして欲しい。王侯貴族には特に強い魔力を持つ者が多い。平民でも魔力がある者は身分をあてがわれる事もある。しかし、このアーネスの怪力は魔力に収まるものなのか?


「なぁ、体の向きを変えたいんだが!! あと、俺を背もたれに使うな! 何も見えない!! 」


 シーツで簀巻きになった俺は、横に寝かされクッションのようにアーネスに扱われている。


「……待て。それにしても見れば見るほど良い剣だ。私の為に作ったのだな。礼を言うぞ。」


 簀巻きの隙間からようやく荷馬車の中が見えた。荷馬車と思われた幌の内側は豪奢に織られたクロスで覆われ、花鳥模様の絨毯、シルクのクッションには刺繍と房が施され贅沢に配されている。アーネスと同じ香の良い匂いがする。


 アーネスの手に、オリハルコンが合金された特別仕様の剣が鞘から抜かれている。鏡のように磨かれた刃に美しい刃紋が浮かび、薄明かりの中で一際輝く。


「お前に譲ってやるとは一言も言っていない」


「私以外の誰が扱えると言うんだ。やはり、お前は先代から秘伝の技術を受け継いでいるのだな」


 所有者の魔力に合わせて造られる魔剣で、所有者との魔力の共鳴が凄まじい。他の者が振るってもそれは起きない、ただの剣でしかない。


 ——いつから知ってたんだ?


「たまたま俺にとって良く知ってる魔力がお前だったから、……習作として作っただけだ」


「刀身の長さも私にピッタリじゃないか。さすがだな」


 ——全く俺の話を聞いていない!


 我ながらとんでもないものを作ってしまった。門外不出ものだった。隠し扉が容赦なく破壊されアーネスに見つかってしまった。未だ得体の知れない魔力のアーネスにこの魔剣を持たせるなんて危険極まりない。


「分かった! それはお前にくれてやるから、俺を解放しろ! 宮殿でも何でも破壊すりゃいいだろ! 」


 俺は半泣き状態でアーネスを睨みつけて訴えたが、通用しようもなかった。


「そう言うわけにはいかない。お前には特別な役割があるんだ。後は城で話そう」


 ——絶望感しかない。いっそ気絶したい。


 そう願っていたら、アーネスに無理矢理薬を飲まされて俺は昏睡に陥った。


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