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47 そんなの知らないし

 俺はいつの間にか簀巻きから解放されて、目が覚めたのは湯船に漬けられたところでだ。


 実際は、ビリビリと服を破かれているところから夢から覚めようとしてた。デジャブなのか夢なのか分からないところで、夢じゃなかった。


 精霊の泉で結構綺麗に入浴しといたからそこそこ清潔だったはずで、そこは恥ずかしくないんだけど……


 仕上げに身体中を香油で揉みくちゃにされたのは、なかなかヤバい感じだった。調理されて、このままグリルで焼かれる鳥みたいだった。


 で、なんで何度も目隠しされるの? 俺がここにいる誰かに化けたりする可能性があるからか!? 攻略されてるわ〜〜なんかもう、死ぬの? 殺されるの? おれ。


 もう、されるがままに大人しくしてた。服は着せてもらえた。


 連れて行かれた部屋で長椅子に座らせられると、俺は次に何をされるのか不安になりながらお行儀良く膝を閉じて姿勢を正す。クスクスと官女たちに笑われて、そのまま誰の気配もなくなり、次第に部屋が薄暗くなっていくのが分かった。


 長い一日だった。でも、これから幽閉されて死ぬまでこんな感じに暮らすのかと思うと更に気が滅入ってきた。


 ギィ——と、音がして誰かが近寄ってきた。


「サイ、何をしている? 」


 アーネスの声だ。怖い人来た。


「何で目隠ししているんだ? 」


 アーネスが横に座った。


「いや、あれだろ? 俺が逃げられないようにだろ」


「……でも、誰もいないのに何を外さないで我慢してるんだ? 」


「確かに……」


 俺は目隠しを外すと、アーネスの姿と部屋の様子が分かった。


 アーネスが薄いドレスを着てるんだけど、目に毒過ぎて直視出来ない。体のラインならいつもの格好で分かってるのに、ドレススタイルとなると胸元バッチリ見えるし……、エッチだ。寮では男物の部屋着だったからギリギリ変な気起こさずに済んだけど……。


 ここは、前も簀巻きで連れてこられた部屋だ。絢爛豪華過ぎて既視感が強い……アーネスの寝室だ。殺されなくて済むんだなって、なんとなく安心した。


 長椅子の前にテーブルがあって、軽食が置いてあった。俺はアーネスの刺激的な姿を見ないようにして食事を取り始めた。朝から飲まず食わずですっごくお腹空いてる。


 ——多分、俺の食事だよな?


 横のアーネスが膝を抱えて顔を埋めて座っている。出来ればそのままの格好で動かないで欲しい。なんだか、壮大な事故が起き始めてる気がしてる。


 少しお腹が落ち着いて、水差しからグラスに水を注いだ。こんな薄いグラスをよく怪力のアーネスが使えるよな……手加減出来るんじゃないかと考えながら水を飲んだ。


 不意にアーネスが申し訳なさそうに本題に入った。


「私たちの結婚が成立したんだ」


 ブブ————ッ!!!


 俺は水を噴き出した。


「何でだよ!! 」


 寝耳に水というか、水噴いた!!


「……サイが、あのブローチを私に付けただろ? 」


 うんうん。


「証人が揃ったんだ」


 ん?


「ブルクルタの王族は、花嫁があの宝石を受け入れる事で結婚の儀になるんだ」


 はいっ?!


 そんなロイヤルな伝統、俺は知らない。だいたい、何でそんなものを俺に……


 って、今、何?

 ——俺たち初夜を迎えてるのか?

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