43 竜王と国王
「……そうだ、私がブルクリク国王である」
そう、国王は玉座から声を発した。竜王はそれを聞いて閉じた口から炎を漏らした。
竜王を背にしていたザリアデラとゲオルドは腰を抜かしてマールクとググランデと衛兵たちに支えられ王の間の隅に運ばれて行く。竜王と国王の間には、サイ、ガーグル、マドリアス、ユーネイア姫、アーネスが残された。
「お主は、我の牙が持って帰った者に王位を継がすと言ったそうだな。相違ないな」
その首をゆっくりと揺らしながら金の目をギラギラさせて、王に凄む。
「確かに言った」と、王は答えた。
「では、我がここに来たのだから事は足りたか? 」
竜王が顎を開けてブワッと炎が膨らむ。熱気が王の間に広がる。口の中はまるで高炉。上下の牙が鋭く立っている。
「十分だ」と、王はまた答えた。
それを聞いて、竜王はマドリアスの方に目を向けると「アイネイアスよ……」と発し「……やるが良い」と言った。
アイネイアスと呼ばれたアーネスが腕に抱えた包みを解いて一本の剣を取り出だした。
剣は精霊の霊気をまとい、ゆらゆらと輝きを放っている。それを見た者たちは、驚きとともにまた一歩二歩と下がり、もう下がるところが無くなった。
「お兄さま……」と、アーネスはマドリアスを呼ぶと、マドリアスも剣を抜いてアーネスの前に歩み出た。