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38 交渉の行方

「私は、マドリアス様と愛をお誓いした仲でございます」


 ザリアデラがパチンと扇を綴じると、前のめりにユーネイアの顔を覗き込んだ。聞きたくもない名前を上書きしたいばかりに眉を上げた。


「……ググランデでは不満かや? では、マールクでも構わぬのじゃ。マールクが王位を継承すれば良い。年の差も許せるほど近しいではないか。マールクは……」


 そう言って席から立ち上がってユーネイアに詰め寄ろうとするザリアデラには余裕が無く目が釣り上がっていく……最早、懐柔するよりも脅した方が早いとばかりに。


 いっそ洗脳でもしてしまえば手っ取り早い——ザリアデラの中で腹が決まる。


「愛だの誓いだの、ひとときの恋事などで婚姻を決めるなど……愚かしいじゃ。マドリアスは帰って来ぬ! 竜王の牙を持ち帰るのはググランデじゃ!! 」


 叫ぶ様にユーネイアに圧力を掛けようと迫るザリアデラに、離れて控えていた官女が間に立ち塞がった。


「お控えなさいませ、ザリアデラ様」


「えぃ、官女風情が、無礼ぞ! 控え! 」


 宮女に罵声をあげ、扇で打ち付けようとしたザリアデラの手が止まる。見上げるほどの長身は、離れていた時には気が付かないほど高かった。自分を見下ろす顔は、髪を黒く染め上げているが、国王と同じ色の青い深い色をしていた。


「お、お主、なぜ!! マドリアス!! 」


 ザリアデラが、官女の格好のマドリアスに気づき、ワナワナと震え怒りを露わにした。


「妾を謀ったか! 」


「謀ったのは、ザリアデラ王妃ではございませぬか? ググランデは出立の前に何も貴方に伝えなかったと? 」


 マドリアスはそういうと、手のひらにググランデの胸に下げられていた魔道具の破片をザリアデラに見せつけた。


「こ、これは……」


 ザリアデラは声を震わせて慄いた。


「事と次第によっては、正統な継承権のあるマールクまで罪が及んでも良いのですか? 」


 溺愛するマールクの名をあげられると、ザリアデラは絶望に膝を落とした。

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