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33 眠る竜王

 無謀と思えるググランデ達の行軍に追いつく頃には、あたりから木々が消え岩ばかりの谷になっていた。進むほど魔星の谷の幅は広くなり、深くなっていく。


 それだけではない。岩の間をすり抜ける精霊たちが騒がしい……人間たちなど御構いなしに空を舞っている。ググランデの兵士たち、精霊の森での恐怖を思い出し震えながら行進している。


 クリクが言った。


「もうすぐ竜王の住処だよ」


 谷の両壁が巨大な石柱に代わり、行軍が行く地はそれが折れて石畳みの様になっている。


 日が暮れを迎え谷の奥まで辿り着くと、巨大な水晶柱を壁にして広がる空間があり、竜王の王城にふさわしいものだった。そこには一体の竜が横たわって眠っていた。


「あれが、竜王か! 」


 ググランデがあげた声が水晶の間に響く。従者と兵士たちが震え上がった。夕日の残照を浴びる竜王は横たわっている。ザラザラとした岩肌の彫刻の様で、生きているのか死んでいるのか迷うほどだった。言い伝えでは、青光りした黒い竜と語られていたはずなのだが……


「竜王は老いて死を待つのみか!! 」


 そう、ググランデは兵士たちを奮い立たせようとした。それでも、その愚かさに兵士たちの士気は上がらなかった。


 ググランデの声に、竜王はピクリともしない。


「確かに竜王は年を取っているけれど……」


 と、クリクは言った。


 俺たちは竜王とググランデ達が見える場所へと回り込んだ。


 ググランデ達の投槍器からの槍が竜王へと連射された。魔力が付与された槍だ。竜王の身体に数本の槍が深く刺さった。


 ——グガアアアアアアアアア!!!!


 眠っていた竜王が目を覚まし、突き刺さった槍の痛みによる咆哮が魔星の谷に響いた。


 竜王に当たり跳ね返され折れたりした槍が地に転がっているのを竜王は金色の目に止めると、ググランデ達に向けて咆哮した。その咆哮は水晶の壁に反響して大地を震わせた。竜王は首を振り回して怒りを露わにした。


「効いているぞ! もっと投射せよ! 」


 ググランデは両手の拳に力を込めて喚いた。内心恐怖を抱えながら、自らの指揮を鼓舞した。


 次の瞬間、アーネスが突然身を乗り出し叫んだ。


「マールク、結界を張れ!! 」


 ググランデの横に静かに立っていたマールクが、慌て両手を前に掲げ障壁結界を張ると竜王の口から炎が放たれた。


 竜王の烈火で浴びあわや全滅かと思われたが、マールクの結界によってググランデ達は命拾いをした。


「マ、マールク……」


 ググランデはマールクの魔力がこれ程だとは知らず、驚きの声を漏らした。マールク自身も驚いて震えている。


「あ、兄上……竜王には敵いません! 撤退を!! 」


 マールクは突き出した両腕と声を震わせたまま、ググランデに請いた。それでも、まだ、ググランデは気がつかない……


「投射せよ!! 」


 願いも虚しくググランデが兵士たちに命を下すと、アーネスが、ググランデの目の前に魔剣の一撃を食らわせた。


 竜王とググランデの間に斬撃が走ると、砕かれた岩が宙に飛んだ。その破壊力にググランデは腰を抜かした。魔剣による魔力の放出は、竜王とググランデの間の地面を一文字にえぐった。


「止めろ! ググランデ! お前に出来る事は何もない!! ガーグル、ググランデを捕らえよ! 」


 アーネスがそう声を張り上げると、ガーグルと複数の兵がググランデと側近の両腕を後ろ手に縛り上げた。



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