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25 誰だそれを言ったの

「あーぁ、無理しちゃったな」


 草を編んだ床敷きに寝床を用意されて、アーネスは横になっていた。アーネスは、エルフの村に着くなり熱を出して寝込んでしまった。


 エルフの村は、岩棚に足場を組んで集落を作っている。人目につかない猛獣や魔物から身を守る風通しの良い立地に、エルフたちは平穏に暮らしていた。


 アーネスは、ここに来るのは二度目だと言う。


「クリクは? 」


 熱で顔をほてらせてアーネスはサイに尋ねた。さっきの少年のエルフ……と言っても俺たちより年上だ。


「クリクなら、村長のところに行ってるよ」


 俺は床敷きに転がって、部屋にあった仕掛け箱で遊んでいる。なかなかいい造りだ。


「……サイ、なんか楽しそうだな」


「いやぁ、アーネスが具合悪くしてるのなんか、なかなか見る機会ないからな……というのは冗談で、悪かったな気がつかなくて」


 クリクから回復薬ポーションをもらっている。後は身体を休めるだけだ。


 アーネスはこのところずっとイライラしたり怒ったりしてたもんな……張り詰めまくってこの村に着いて気が抜けたんだな。


「ガーグルが近くにいるらしい。ググランデは明日までは動かないらしいし……エルフたちの情報網は凄いな。こうなったらギリギリまでのんびりしようぜ」


「……そうだな」


 アーネスが返事をする。濡らした布巾でアーネスの顔を拭った。大きな瞳のアーネスが伏し目がちにとろんとした顔をしている。こうなると美人というより可愛い。薬が効いてきたみたいだ。


「私を怒ってないのか? 」


「何を? 」


 思い当たることがあり過ぎるけど、どれだろう。最近は、俺の方が怒らせてるみたいだけど。


「……卒業の、剣術大会のときは悪かった」


「……あー、あれか。お前が女装……じゃなくてドレス着て、マドリアス王子の横にいたのにはびっくりしたな。いろんな意味で」


 気にするなとは言えない。でも、過ぎた事だし、今こうして三年ぶりに一緒に行動しているし。アーネスなりに気にしてたんだと分かって俺は笑ったのに、アーネスの方は困った顔をしている。


「女らしく着飾ったら、気を惹けるって言うから……」


 ——気を惹く? 誰の? 


 俺はアーネストに向けて笑ってた顔を傾げた。アーネスに好きなやつがいたって事? アーネスが俺を差し置いて誰にそれ相談するのか?


「誰がそんな事言ったんだ? 誰の気を? 」


「……」


 まだ言いたくなさ気な様子だ。


「《《お兄さま》》のか? 」


 しょっ中、お兄さま、お兄さまのアーネスに、ほかに気がある男なんかいたら俺は困る。あの二年間のうち見落としていたとしたら、滑稽過ぎる。はぐらかす様にふざけると、アーネスがうとうとしながら拗ねた様な顔になっている。俺が分かってなくて悪いみたいだ。


「俺が知ってるヤツ? 」


 そこまで言うと、アーネスは泣きそうな顔になって、俺は慌てた。……女の子か!!


「まさか、ガーグルか? 」


 だったらちょっと大変だなと思って、心配してアーネスの顔を覗き込むと、熱で頬を赤くして切ない顔をして怒っている。これちょっと、色っぽくて俺が見ていい顔なのかな? 胸がドキドキして罪悪感が湧いてくる。


「……サイ」


「何? 」


「……お前、大っ嫌いだ」


 アーネスは不貞腐れて顔を横に向け、目をつぶってしばらくすると静かな寝息を立て始めた。どこまでが質問の答えなのか、後からジワジワと汗が出るほど俺は焦った。

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