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24 エルフの村へ

 アーネスと俺は、森の中を急いでいた。アーネスは村娘の服を捨て、俺はマドリアス王子に姿を変えた。


 板根にまで育った大樹の根元を駆け上がり、立ち塞がる岩を越える度に息を整えた。到底馬では進めない。それでもググランデ勢の本体は、強引に俺たちを追跡してくるだろう。先陣にはガーグルもいる。そこらへんの衛兵や騎士とは能力が違う。警戒が焦りに変わる。


 自分たちの後ろを見れば、わずかだが足跡が残ってしまっている。


「たった二人で来た意味が分かるな……」


 俺が汗を拭いながら息を吐くと、


「ググランデ達は森を荒らすだろうな。ここまでも町や村に迷惑をかけてるんじゃないか? 」


 と、アーネスが答えた。よく言うわ……という言葉は飲み込んだ。


 たった二人でここまで来た理由は、俺がマドリアス王子に変身する秘密の共有を避ける事と、魔星の谷に向かうこの森を越えるためだった。


 この先に仲間がいると、アーネスが言っている。アーネスが息を切らしながら先を急ぎ休みを取ろうとしない。


あんな三文芝居に騙されるほどガーグルも馬鹿ではない……多分、気が付いているんじゃないかと思っている。ググランデのふりなんか殆どギャグだったからな。騙されたふりして乗ってくれたのかも知れない。


 村娘の格好をして顔を隠しても、背格好や身分の高い者の癖を見抜かれている可能性が高い。ガーグルはアーネスをよく知っている。


 ガーグルの単独行動で追跡されたら、仲間と合流する前に捕まってしまう。そういう緊迫感がアーネスを急き立てていた。


 俺の前を先を進む体力馬鹿のアーネスが突然立ち止まった。アーネスの目線の先に、誰かのシルエットが見えた。小高く迫り出した岩の上に立ち、弓の弦に矢をあてがってこちらの様子を伺っている。日の眩しさに目を細めて見ると、耳が人間のそれより長く鋭い大きな目……


 背に日を浴びてるのは、少年の姿をしたエルフだと気がついた。アーネスがマントのフードをめくりあげその顔を晒すと、エルフは岩から飛び降りこちらに駆け寄って来た。


「彼が仲間なのか? 」


「そうだ。この森はエルフ達の許可が無ければ通らせてもらえない。その先に行くのにも彼らの協力が必要なんだ……」


 ひとしきり話したアーネスが目眩を起こして倒れた。殆ど山の様な傾斜を駆け上がって、短時間にかなりの標高を移動している。このところ気を張りすぎて疲れが出たみたいだ。


「アーネス!! 」


 駆け寄るエルフがアーネスに呼びかけた。


「……大丈夫。ちょっと気が抜けただけだ」


 立ち上がろうとするアーネスをエルフが止めて、俺の方をマジマジと見たかと思うと、いきなり押し付けがましく命令をして来た。


「お前、アーネスを担げよ」


「……分かった」


「それと、エルフにはその幻影通用しないからな」


 そいつは偉そうにそういうと、俺たちの荷物を抱え飛ぶように森の中を走っていく。俺、アーネスを背負ってんだけど!!!

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