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14 第四王子マールク

 国王陛下と家臣に見送られ城から出立したググランデ王子は、国民の人気が無かったのは仕方がない。


 先に出立したマドリアス王子たちに遅れをとった時点で、城下の民の関心が薄まっていた。また、沢山の兵士を引き連れての行進は圧倒的に見応えこそあったが、ググランデ王子がその一行のどこに居たのか見過ごされがちであった。


 前夜にユーネイア姫への夜這いを失敗したググランデは意気消沈して、衣装も派手に着飾るも、金色刺繍を施した旗、輿、装備、馬車、引き連れた兵士たちの豪華さに埋没してしまっていた。それ以上に第一王子マドリアスほどの人望が無かったというのもあった。


 颯爽と馬に跨り英雄のモデルのような王子マドリアスと、男装でも隠しきれぬ美貌の王女アイネイアスがたった二人で城外に向けて進む様は、国民にとって思いがけぬ出来事であった。それ故に多くの語り草となった。


 ググランデと言えば、わざわざ行進予定を発表し交通整備まで敷いたが、その仰々しさに城下の民は迷惑がり呆れるばかりであった。


 もうすぐ城門をくぐるというタイミングで俯向くググランデに、声をかける者がいた。


「兄上、どうぞ顔をお上げください。私もお力になりますゆえ! 」


「すまぬ、考え事をしていた。威風堂々と城門を越えようぞ」


 年端のいかない少年がググランデを励ますように馬を寄せ、下から覗き込んだ。うら若き少年はググランデの実弟、第四王子マールクといった。


「マールク、突然だがよく付いてきてくれた」


「はい! 兄上の手助けになるなら本望にございます! 」


 しかし、ググランデは今となって弟マールク王子を連れて来た事を後悔している。半分は同じ血を受け継いでいるが、その素直な性格と可愛らしさには類い稀さがあった。


 しかも、正当な王位継承権を四番目に持つ王子でもあった。それにすがるようにして同行させたのは、失敗なのではないだろうか。


 突然の同行に第二王妃の母親から悲鳴のような罵声を受けた。マールクへの溺愛が半端ではないのだ。ところが、マールクはググランデを慕い付いて行くと決意してくれた。


 行進最中、「あの可愛い少年は、王子か? ググランデ王子か? 」と、勘違いする者も多く、その愛らしい姿を目に止めた多くの群衆はマールクに向けて手を振って激励した。後に、第四王子と気が付いた群衆たちからはググランデの名は上がらない。


 なんとも惨めな出立に、城門前まで明るい表情を保てず、ついついググランデは苦虫を噛み潰したように顔を歪めた。

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