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1 その王女危険につき

 その日夜遅く、俺は仕事を終えた。指輪型の魔道具が一つ仕上がった。


 ここは町から外れた森の中。持ち主の居なくなった土地を借りて刀鍛冶の工房を建て、俺は人気のない静かな森で自分の仕事に没頭して暮らそうとしていた。


 炉の火も小さくなり、弱々しく工房の中を照らす。俺は汲み置きの水と布巾で身体を洗い就寝しようとしていた。突如、森から聴こえるフクロウの鳴き声が止んだ。


 こんな夜更けに来訪者だ。


 戸には頑丈なかんぬきが掛けてある。俺はシャツを着るとジッと構えて訪問者の様子を伺った。こんな夜更けに誰だ。


 ——ドンッドンッ!!


 戸を叩く礼儀があるにしても大げさだ。俺は戸の前まで近寄って、来訪者の声を待った。


 しかし、来訪者はそれが引き戸と言うのが分からないらしい。頑丈に作った戸がミシミシと激しく軋む。嫌な予感がする。


「ちょ、ちょっと待て……」と、言うのが遅かった。


 ——ドゴォッ!!!


 戸と閂と戸枠が工房の中にぶっ飛んできて、俺はそれに巻き込まれた。


「ぅ……がっ! 」


 工房の床は土間だ。俺は大きな戸板の下敷きになり洗った身体は土埃で汚れた。


「い、……いてぇ! 」


 俺はこの理不尽な痛みで来訪者が誰なのかを確信した。三年ぶりに俺の悪夢が戻ってきた。平和だった静寂な生活が突然終わった。


「サイ、久しぶりだ。元気だったか? 」


 痛みで顔が歪む。割れた木片を払いのけ俺はそいつの顔を見る。脱力感で失神しそう。


「アーネス、お前……」


 高圧的で優美な立ち姿。頭の先からつま先まで洗練され、上質の衣を身に纏う。腰には豪奢な剣を下げた……一見王子様のような、王女様だ。


 ——アイネイアス姫。


 この国、ブルクルタ王国第一王女

 元気だったじゃないだろ!

 今、お前に殺され掛けた!!


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