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【Web版】従弟の尻拭いをさせられる羽目になった  作者: 紫音
第三部

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16話

久々主人公視点です!


 エリナがレンティアースから衝撃的な事実を知らされている頃、アルヴィスは禁書庫に赴いていた。


「……スーベニア聖国に関する史料はこの辺りか」


 今、エリナが何を知らされているのか。どう過ごしているのかはわからない。だが黙って待っているというのもやはり性に合わなかった。何かをしていないと落ち着かない。無論、国王としての執務は変わらず忙しいし、公国の件だって片付いたわけではない。それでもアルヴィスに出来ることは、ただ待つことだけ。ならばその中でもできることはやっておきたい。そう考えたら、自然と足がここに向いてしまったのだ。

 棚に手を伸ばし書物を手に取る。ゆっくりと頁を捲っていると、途中にある一つの絵が目に入った。随分と昔の絵だ。城と思われる建物の前に、子どもたちが遊んでいるような絵。そこにある風景を描いたと思われるそこの中に、一人の少女がいる。


「……レンティアース、か」


 何故か、そう確信できた。明らかに現代ではない。だがこの少女はレンティアースだと。服装も髪型も違うというのに。


「同じ魂を持つもの」


 ルシオラと同じ時代を生きていた存在。それと同じ魂がレンティアースの中に在る。生まれ変わったとはまた違うのかもしれない。ただ同じ存在だろうと、そうアルヴィスは感覚で認識している。


「ルシオラと同じ時代に生きた人間……だが何故今になってスーベニア聖国に? それとも何度もその魂が繰り返し現れているとでもいうのだろうか。そしてたまたま現代に現れ、偶然に俺とルシオラが契約した時代だったと……」


 そこまで考えてアルヴィスは首を横に振った。あり得ないことだ。そのような偶然があってたまるかと。ならばこれは必然であるはず。そう、アルヴィスがルシオラと契約したことも、レンティアースがスーベニア聖国に現れたことも。そして恐らくはテルミナが武神バレリアンと契約したことでさえも、偶然ではなく必然。だとすれば必ず糸を引く存在がいるはず。否、もしかすればその存在こそがレンティアースである可能性もある。


「っ……⁉」


 その時、アルヴィスは左胸に鈍痛を感じ、書物を手から落としてしまう。そのまま後ろにある棚へと身体が倒れる。


「っ、はぁはぁ……久しぶり、だな。これも」


 深呼吸を繰り返しながら、アルヴィスはゆっくりと床へ腰を下ろす。戴冠式前後を機に、何故が収まりつつあったそれが最近は再び起こるようになった。意識せずにいれば耐えられるものは多々あるが、ここまで酷い痛みは随分と久方振りとなる。一人でいる時で良かったと心から思う。


「はぁ……はぁ」


 片膝を立てて、その上に腕を乗せて俯く。そうして痛みが治まってきた頃を見計らって、アルヴィスは落とした書物を拾った。もしアルヴィスの仮説が正しいとすれば、レンティアースはエリナに何をどこまで伝えるつもりなのか。何気なく開いた頁にはスーベニア聖国の白亜の宮殿が描かれている。今、エリナがいるであろう場所だ。聞かされているのはアルヴィスの口からは告げられぬことであろうことは想像がつく。だがそれを聞いたエリナは……。


『なぁ……お前は本当にそれでいいのか?』


 脳裏に直接響く声。己と同じ声。反射的にアルヴィスはその場で立ち上がる。それと同時に再び胸に鈍痛が走った。


「ま、さか……君の、所為なのか」

『もう一度聞こうか。なぁアルヴィス……気づいているはずだ。お前だって利用されているだけだって。わかってるんだろ?』


 頭に靄がかかる。ダメだと頭の中が警鐘を鳴らしていた。()()に耳を傾けてはいけない。


「やめろっ!」


 思考を振り払うために、アルヴィスは無意識にマナを込めて右腕を思いっきり薙ぎ払うように動かす。ダンっ、と大きな物音を立てて棚が揺れ、バサバサと棚の中に収められていた書物が落ちていった。そしてピキッと何かがひび割れる音が届く、と共に棚がちょうどアルヴィスの腕が当たった辺りから壊れ、上部分が前に倒れる。埃を立てながら壊れた棚。アルヴィスはそれを見てハッとなる。


「……ちっ」


 己が行ったことだとわかっていても、アルヴィスは思わず舌打ちが出てしまった。

 本来ならば傷つけることがない力で守られているはずの禁書庫。棚も書物だって同じように破損することはない。だが守られている力を越える力でもってすれば、破損することだってあるのは理屈ではわかっていた。

 ただそもそもここでマナを使って書庫を荒らす人間などいるはずもない。立ち入る人間は王族に限られていて、調査以外で訪れることだってない。この状況を確認されることだってないだろうけれど、それにしても無意識とはいえマナを暴発させてしまったことに変わりはなかった。

 ただ、気になることがある。アルヴィスは己の右手の平へ視線を落とす。


「力が……強くなって、いるのか。それとも俺の制御が……」


 学園を卒業して以降、精神的に荒れたことはある。それでもここまでの力を暴発させたことなどない。どれだけストレスをため込んでいたとしても、剣を振るっていればある程度の発散もできていた。少なくとも、誰かを傷つけるような力を無意識下で放ったことはない。意図したものであっても同じことだ。それこそマラーナや、ベルフィアス公爵領で魔物を討伐したくらいで。

 心当たりと言えば、戴冠式の後で女神ルシオラと邂逅した時のことくらいだが、それは違うと断言できた。女神から受け取った力ではない。間違いなく、アルヴィス自身の力。だからこそわからなかった。


「……彼の、所為なのか」



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