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【Web版】従弟の尻拭いをさせられる羽目になった  作者: 紫音
第三部

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閑話 レンティアースの証言

大きな伏線回収を含みます。

レンティアース視点です。


「私はかつて……いえ、あの頃はティアと呼ばれていました」


 ティアと呼ばれていた。当時は少女に過ぎなかった存在。マナが多いだけの人間でしかなかったけれど、それはルシオラたちも同じだったという。

 創世記時代、マナに満ちていた世界。現在では滅多に見ることのない精霊と呼ばれるマナが意志を持った存在もいた。目を閉じれば、まだそういった存在の姿が思い浮ぶ。人とそれ以外の種族が共に暮らしていた時代があったのだ。


「あの……お尋ねしても宜しいでしょうか?」

「はい、何でしょう?」

「生きていた存在、と仰いましたがそれは一体どういうことですか? レンティアース様は今ここにいらっしゃいます」


 困惑した様子で尋ねるエリナにレンティアースは困ったように笑った。確かに一般的には想像することさえないだろう。ただエリナは同じような存在に心当たりがあるはずである。そう、かのルベリア王国で騒ぎを起こした少女を。


「かつて生きていた人が別の時代、場所で生きているのはとても珍しいことだとは思います。ですが、エリナ様も既にそういった存在とお会いしていますでしょう?」

「そういった存在……いえ、そんなことは――」

「いらっしゃるではありませんか。貴女ととても深く関わったかの少女が」

「……ま、さか」


 そこまで伝えればエリナにもわかったらしい。きっと脳裏には例の少女の姿が見えていることだろう。実際にレンティアースが例の少女と顔を合わせた事実はない。だが()()()()()。そういった存在がこちらの世界に呼び出されることがあるのを。ある種の生贄として。


「リリアン様がそうだと、仰るのですか? ですが彼女はただの男爵家令嬢でしかありません。マナは多く持っていますけれど、それ以外は……」

「けれど、彼女は普通の少女とはどこか違うところがありませんでしたか?」


 違うところがあったはず。そういう存在であったならばどこかで歪みが生まれる。どれほどの演技力があろうとも、完全に覆い隠すことはできないのだから。そう、レンティアースとてそうであるように。


「確かに不思議に思う部分はありました。ありもしない事象をそうあろうとしていたかのように、その言動がおかしいことも……それはリリアン様が別の場所で生きていたからだと言うのですか?」

「その少女がどこから来たのかまではわかりません。ですが、必要であるのであればその魂はここへ生まれくるもの。そう決まっているのです。私がそうであるように……」

「……」


 無論、レンティアースとその少女がこの世界に存在している仕組みは全く同じというわけではない。レンティアースは意図してそういう状況を仕組んでいる。かつての自分が行った結果が今のレンティアースだ。だが少女は違う。生贄という形で、世界に瘴気が蔓延しようとする時代に、女神ルシオラがその力を世界に対して作用させるための依り代として招かれた存在だ。


「尤も、その少女は贄の役割を果たすには値しませんでした。だからその代わりは当代のルベリア王家が担うこととなります」

「当代……だからアルヴィス様が担うことになるということなのですか」

「その通りです」

「……代わり、とは何のことなのですか? アルヴィス様が担わなければならない役割とは一体何なのでしょうか?」


 慎重に言葉を紡ぐエリナだが、その声が震えつつある。尋ねなくとも想像はついているのではないだろうか。だがあえて言葉にする必要もあるだろう。エリナもいなくてはならない存在。この先の未来のために。エリナが揺らいではならない。


「ルベリア王家は、ルシオラが遺した呪いを受けています。この世界を守るために、ルシオラは己を人から逸脱した存在へと成すことを決めました。ルシオラは常人よりもマナが高くはありましたが、人間とエルフの狭間にあった存在。神ではありません。その存在を変えるためには代償が必要となるのです」

「それが王家に遺した呪い、なのですか?」

「結果的にそうなったというのが正しいかもしれませんね。だからこそルシオラの血筋を絶やすことは許されません。何があろうとも。ルシオラが確約した目的を果たすまで、この呪いが晴れることはないでしょう。だからこそ、時折ルシオラはかの王族のより自分に近い血を持った人間と契約をし、己の存在を強く意識させます。あわよくば目的を果たそうともしていましたが、それが果たされたことはありません」


 そう、ルシオラの本質は慈愛。何かを犠牲にすることなど望まない。だがそれでも必要ならば己の血族のみにしたい。そんな願望が作り出した呪いだ。


「ただし、これはあくまで代替的なものです。ルシオラの目的は世界に蔓延った瘴気を浄化すること。負の遺産となってしまったものを排除することです」

「それがリリアン様とアルヴィス様と、どのような関係があるのでしょうか?」

「……直接的に言ってしまえば、彼らは単なる増幅装置でしかありません」

「っ⁉」

「神は世界に干渉できない。そういう()()()があります。けれど浄化をするにはルシオラの力が必要不可欠。現時点において、ルシオラ以外に瘴気を直接浄化する力を持つ者は存在しません。だからこそ、彼らの存在が必要なのですよ」



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