12話
ルベリア王国物語、第10巻!発売日が決まりました(*´ω`)
7月20日発売となります!!
続報はまた公開され次第ご報告しますね。
どうぞこれからもよろしくお願いいたしますm(__)m
夕刻になって、アルヴィスは後宮へと足を踏み入れた。回廊と抜け中庭に向かうも、そこには誰の姿もない。この時間帯ならばサロンの方かと向かってみると、床の上に色んな布を広げて遊んでいるルトヴィスとそれを見守っているミントがいた。
「義姉上」
「陛下? お疲れ様でございます」
アルヴィスの姿を認めると、ミントはその場に立ち上がりルトヴィスの前を空けた。そのままでもよかったのだがと苦笑しつつ、アルヴィスはルトヴィスの前に片膝を突く。
「あうあう」
「楽しそうだな、ルト」
少しずつ感情が落ち着いてきたのか、ルトヴィスがアルヴィスを前にしても泣き叫ぶことはなくなった。だがエリナが傍にいないことは寂しいのだろう。その視線はアルヴィスをしっかりと捉え、手を一生懸命に動かして這いつくばるようにしてアルヴィスの下へと向かってくる。気が付いたらできるようになっていた行動だ。その月齢にしては早い方らしいのだけれど、他を知らないので比較することもできない。
アルヴィスのところまでやってきたルトヴィスは、片膝を突いているアルヴィスに手を置くようにして身体を起こそうとする。不安定ながらもそうして立ち上がることができると、アルヴィスの顔へと手を伸ばしてきた。
「あー」
「わかったよ、ルト」
ご褒美が欲しいとばかりに手を伸ばしたルトヴィスが望む事。以前よりマナで意図を知らせてくることもなくなった。それでも何を望んでいるかくらいはわかる。脇下へと両手をいれるようにしてルトヴィスを抱き上げれば、声を上げて笑った。そのまま背中を支えながら片腕に乗せる。
「うふふ、王子殿下もお父様と一緒で嬉しそうです」
「日中の様子はどうですか?」
「とても活発ですよ。でも、王妃殿下がいらっしゃらないことをもしかしたら勘づいているのかもしれません」
「というと?」
「王妃殿下が出立された頃は、私と一緒にいても何かを探すようにして明後日の方向を見ていることも多々あったのですが、今はそういった反応もなさらなくなりました」
おそらくエリナを探していたのだろうとミントは話す。朝と夜は必ずエリナが傍にいた。泣くこともあったらしい。だがここ最近はそれもなくなったという。
「そうですか」
「ですから陛下が来られると嬉しいのだと思います」
諦めてしまったのか、悟ったのかはわからない。歩くこともできない赤ん坊だ。それでも本能的に悟ることはあるだろう。アルヴィスがそうであったように。
「俺が来れるのは夕方くらいです。朝も顔を見る程度しかしてやれていない」
「十分です」
本当はもう少し傍にいてあげた方がいいのかもしれない。ただ今の状況で後宮の外にルトヴィスを連れていくことはできないし、賓客がいる状態で問題を起こすこともできない。朝と夕方だけでもルトヴィスに会いに来るので精いっぱいというのが正直なところだ。
「王妃殿下は既に聖国へと入られている頃でしょうか」
「えぇ。予定では既に落ち着いているはずです」
ザーナ帝国を経由した時にエリナから手紙を受け取っていた。そこからスーベニア聖国に向かうまでそう時間もかからないはず。既に入国を済ませ、シスレティア女王と会っていることだろう。もしくはレンティアースと既に邂逅しているかもしれない。
「……」
「陛下、どうされました?」
「いえ、何でもありません」
レンティアースが何を話すのか。気にならないとは言えなかった。エリナが戻るまでそれを知ることはできない。どんな情報を持ち帰ってくれるのか。
「あーあー」
「っ」
考え込んでいるとルトヴィスがアルヴィスの髪の毛を掴み引っ張ってくる。乗せていた腕の位置を下げれば必死に手を上にあげている様子が見えた。もう一度掴もうとしているのだろう。意外と力があるらしい。アルヴィスがその小さな手を空いている方の手でつかみ取ると、今度はそれを掴んで遊び始めた。
「構ってほしいのか、お前は」
「こっちを見て欲しいと言っているのだと思います。陛下が考え事をなさっているとわかったのでしょう」
傍にいるのに他のことを考えるなとは、なんとも我儘なことだ。けれどそれを鬱陶しく思うことはない。これが令嬢などであればご免被るところだが。
「今日くらいはいいか」
「大丈夫なのですか?」
「えぇ。ですから義姉上も休んでください。今日は、俺が見ていますから」
今日はこのまま後宮にいる。必要な書類はエドワルドらに頼めば持ってきてくれるだろう。ミントもたまには公爵家に返してやらなければ。たまには帰って休んでほしい。そう告げるとミントは最初は断っていたが、頑ななアルヴィスに折れる形で承諾してくれた。
「……わかりました。陛下もあまり無理をなさらないようにしてくださいね」
「はい」
「また明日の朝一で参ります」
「よろしくお願いします」
公爵家までは近衛隊の護衛が必要だ。次期公爵夫人でもあるミントを一人で帰すことはできないのだから。問題なく後宮を出るところまでミントを見送ったアルヴィスはサロンへと戻った。ずっとルトヴィスを抱き上げたままだったが、ソファーに座ったところで膝の上へとルトヴィスを下ろした。
「ルト、母様からの手紙だが見るか?」
「あー」
もちろん文字が読めるわけではない。でもルトヴィスに対する言葉が綴られていた。ならばルトヴィスにも聞かせるべきだろう。
手紙が何かはわからずとも文字へと指を伸ばしたルトヴィスは、そのまま手紙の端を掴んで握りしめてしまう。くしゃくしゃになってしまったけれど文字が読めないほどではない。それでもとアルヴィスはエリナからルトヴィスに対する言葉を読み上げた。




