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11話

なろう全体がちょっと変わってから初めての投稿です。

使い勝手が変わると戸惑いますね(;^ω^)



 翌日になり、アルヴィスは朝食を摂った後でラクウェルと共に領内視察と称して外出をすることとなった。


「そういえば、お前とこうして二人で領内を回るのは初めてだな」

「……まぁそうですね」


 馬車の中から外を眺めていたアルヴィスは、不意にラクウェルからそう声をかけられ複雑な気分だった。そもそもアルヴィスは、領内を移動するときに馬車を使うことがほとんどない。ほとんどが歩きか馬だった。それは馬車を使わせてもらえないというわけではなく、ただ親にそういうことを告げることができなかったからでもあり、知らせる必要などないというアルヴィスなりの反抗でもあったのだろう。

 そんなアルヴィスの複雑な心境を知ってか知らずか、ラクウェルはまっすぐにアルヴィスを見ていた。その視線はどこか寂し気で、アルヴィスは首を傾げる。


「どうかされましたか?」

「以前、マグリアに言われたことがある」

「兄上に?」

「あぁ」


 一体何を言われたのだろうか。ラクウェルからの言葉を待っていると、ラクウェルはその口元に笑みを浮かべた。


「アルヴィスは自分よりもよく周りを見ているし、客観的に物事を判断する力もある。兄弟の中で誰かが王位を継ぐのなら、アルヴィスが一番適任だっただろうと」


 アルヴィスが立太子して暫くした後、マグリアからそう言われたのだという。一体どうしてそういう話になったのかは知らない。ただ、最も適していると言われても反応しにくい。立ち位置的にそうならざるを得なかっただけ。もしマグリアがそういう立場に置かれた場合もそれなりにこなす筈だ。それは目の前にいる父も同じ。ヴァレリアについては判断がしにくいところだが。


「兄上ほど俺は腹芸が得意ではありませんから、交渉という場に出れば兄上には敵いません」

「だがお前もどうすれば欲しい結果が得られるのか。考えて行動をしているだろう?」

「それはまぁ、そういう場合もありますけど」

「私からすれば、お前もマグリアも大差ないさ」


 マグリアとアルヴィスを同列に見るなど、ラクウェルでなければ出来ないことだろう。しかし、あの腹黒の兄と並べられるというのはあまり嬉しいことではない。けれどもラクウェルが言いたいことが当てはまらないと完全に否定できないのは、相手が二人の父だからだ。不満気なアルヴィスに気が付いたのか、ラクウェルは声を出して笑っていた。



 そうして馬車に揺られて到着したのは、領都を守る護衛騎士たちの詰め所だった。公爵家本邸にある護衛官たちとは違い、領都を守護する騎士たちの詰め所だ。ここにはエドワルドの父親も指導という形で顔を出すこともあるそうだ。尤も、今回はエドワルドの父は同行していない。エドワルドもだ。彼らは家族で話すということで、公爵本邸にいる。


「ここに顔を出すのは初めてか?」

「いえ……何度か世話になったことがあります」


 少々、躊躇いつつもラクウェルに答える。詰め所に世話になったのは、黙って領都に遊びに来ていた頃のこと。夜の酒場でいざこざに巻き込まれていった時や、領都外に出て行った時などである。当然、ラクウェルに話したことはない。それでもラクウェルはそれ以上アルヴィスに尋ねることなく、詰め所内へと入っていった。アルヴィスもその後を追って中へと入る。


「閣下、お待ちしておりました」

「あぁ。時間通りでよかった」


 先に入ったラクウェルが騎士の一人と話をしている。アルヴィスが入ってきたことに気が付くと、その騎士は目の前まで来て膝をつく。それに倣うかのように、後方にいた騎士たちもその場で膝をついた。


「お久しぶりでございます、アルヴィス王太子殿下」

「あ、あぁ」


 剣を床に置き、膝をつくというのは王族に対する最敬礼である。公式の場であるならば、よくある光景だ。だが、ここは詰め所という身内ばかりの場所。まさかこういう応対をされるとは思わず、アルヴィスは戸惑いを隠せなかった。


「殿下」

「……公爵」


 父上と言いそうになったのを止め、アルヴィスはラクウェルを公爵と呼んだ。ラクウェルもそれに頷く。アルヴィスは改めて膝をついた騎士に声をかけた。


「出迎えありがとう、ラングレー隊長。皆も……顔を上げてくれ」

「「はっ」」


 顔を上げた騎士たちを見れば、懐かしい顔触れもあった。目が合えば、片目をつぶって合図をしてくる。それにアルヴィスは苦笑した。


「隊長、今日から王太子殿下と妃殿下が領都に滞在している。護衛についてだが……」

「俺の護衛は専属のみで構わないが、妃については別途増員をお願いしたい。領都の外に出る予定はないから、あくまで領都内だけとなる」


 ラクウェルから引き継ぐ形でアルヴィスが指示を出す。そう、この調整のためにアルヴィスはここへ来た。ベルフィアス公爵領にいる間のエリナの護衛について相談するために。もちろん挨拶をするためというのも理由の一つであるが、エリナの安全を第一に優先したいというのが一番の理由だった。

 あの、リュングベルでの一件をアルヴィスは忘れていない。ここで同じことが起こるとは思わない。だが、起こる可能性がゼロだと言い切るほどの根拠もない。ベルフィアス公爵領は故郷であるし、領主は父だ。安全だと思いたいが、すべてが善人だというわけではないのだから。

 領都の中を出歩く場合、予めルートを伝えてそこの警備強化のため巡回人数を増やす。直接の護衛は、公爵家の護衛官とフィラリータらが務める。あくまでここの騎士たちにお願いしたいのは、外からの警護だ。


「承知いたしました、アルヴィス王太子殿下」




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