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【Web版】従弟の尻拭いをさせられる羽目になった  作者: 紫音
第一部

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20話

 

 パレードを終えて王城へ戻ってきたアルヴィス。自室へと一旦戻ると、着ていた衣装を脱ぐ。一息吐いた後は、披露宴が行われる。そのため、別の衣装へと着替える必要があるのだ。エリナも別室で、ウエディングドレスから別のドレスへと着替えていることだろう。

 休息にと、一度ラフな格好になったアルヴィスは、ソファーへと座った。そこへすぐさま湯気が立ったカップが置かれる。横を見ればティレアの姿があった。


「お疲れ様でございます、殿下」

「ありがとう、ティレア」


 一年以上前、アルヴィスがこの部屋に来たばかりの頃、ティレアら侍女はお茶を出すタイミング一つにも気を遣っていた。その様子にアルヴィス自身も居心地がよくなかったことを思い出す。アルヴィスはふと頬が緩むのを感じた。慣れれば慣れてしまうものだ。傍にこうして侍女がいることにも、自ら動くことなくすべてが用意されてしまうのも。当たり前の様に受け入れてしまっている。

 アルヴィスの様子にティレアが不思議そうな表情をしているのに気が付き、アルヴィスは苦笑した。


「懐かしいなと感じたんだ」

「そう、ですか?」

「ここに初めて来たときのことを思えば、随分と変わったものだと」

「……あの時は、まだ殿下にご満足いただけるようなものをお出しできていませんでしたから」


 ティレアはそう言うが、王妃の下で働いていたティレアが与えてくれるものは上等なものだった。ただ、騎士団や近衛隊という貴族とはまた違った環境にいたアルヴィスが特殊だっただけで。


「変わったのはティレアたちだけじゃなく、俺もだろう」

「アルヴィス殿下……」

「これからもよろしく頼む」

「お任せください。誠心誠意、お仕えさせていただきます」


 そうこうしているうちに時間が迫ってきた。アルヴィスは立ち上がると、上着を羽織る。まだ式典が終わったわけではない。念のため剣を腰に差し、マントを翻す。女性と違って男性であるアルヴィスに然程準備の手間はかからない。


「じゃあ、行ってくる。帰りは宮の方に向かう」

「承知しました。お待ちしております」


 頭を下げて見送るティレアに手を上げて返事を返し、部屋の外に出る。そこにはレックスたちが控えていた。目配せをすれば、アルヴィスの後を付き添うように付いてくる。生誕祭の頃は、違和感を感じていたこの距離。それが今や、当たり前のように感じている。それもこれも、ルークが常に近衛隊をアルヴィスの傍にいるよう配置した所為だ。これが常の状態なのだから、否が応でも慣れてしまう。そうしてこのまま彼らと共に会場の隣にある控室へと入ると、既にエリナが控えていた。

 先ほどまでの白いウエディングドレスとは違い、淡い黄色のドレスを身に纏ったエリナ。その胸元には水色のネックレス。今回は敢えてあまりエリナが身に纏う色ではない淡色系のドレスを選んだ。エリナは、その紅い髪と令嬢としての洗練さから、強気の印象を周囲へ与えていた。本人であるエリナもそれはよく理解しており、可愛らしいような洋装を身に着けることはなかったらしい。だが、こうして身に着けているのを見れば、周囲の印象も変わることだろう。それほど、エリナの雰囲気にはとても合っているように思えた。


「アルヴィス様」

「お疲れさま、エリナ。少しは休めたか?」


 アルヴィスはそっとエリナの顔色を窺う。パレードの後は少し疲れを見せていたが、今はそれほど疲労の色は見えない。休息は取れたようだと、アルヴィスは安堵の息を吐く。


「はい。リティーヌ様が来てくださいましたから」

「リティが?」

「退屈だろうと仰って、色々とお話に付き合ってくださいました」


 特段入室を制限したわけでもないので、リティーヌが訪ねてくることは問題ない。リティーヌ自身も披露宴に参加する。そちらの準備に支障がない範囲ならの話だが、何だかんだと抜け目のないリティーヌのことだ。その辺りはきちんとこなしていることだろう。何より、エリナが楽しそうに話している。少しでも気分転換になったのならば、何よりだ。


「ここから先は少し長い時間になるが、疲れたのなら先に下がってもいい。遠慮なく言ってくれ」

「ありがとうございます。ですが、私は大丈夫です。王太子妃としての最初の務めですから、最後までやらせてください」

「……最初、か。そうだな」

「はい」


 エリナはアルヴィスの妃となった。祝いの場だとはいえ、ここは公務の一つでもある。国内貴族や来賓たちに、王太子夫妻としての姿を見せる場なのだから。


「だが、疲れては頭も働かない。そうなったら強制的に下がらせるからそのつもりでいてくれ」

「……わかりました」


 会場に全ての招待客が揃ったという報告が届いたのは、そのすぐ後だった。あとは、主役であるアルヴィスとエリナの入場を待つばかりだと。ふぅと息を吐くと、アルヴィスはエリナへ手を差し出した。


「では、行こう」

「はい」


 差し出された手にそっとエリナが己の手を乗せる。騎士たちが扉を開くと、その先へ足を踏み入れた。





短くてすみません。家庭内で風邪が蔓延して、体調を崩してしまいました。

皆様も十分に体調にはお気を付けください。。。


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