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第二十二話 再戦

私達はアンデッドに勝てず、砦に撤退した。負けたという感覚はない。

 アンデッドの戦闘能力はそう高くはなかった。ゴブリンソープの甲冑も着けている。撤退戦でも戦死者も負傷者も出していない。回復薬を使う必要ない程の小さな傷を受けた者しかいない。

 しかし、アンデッドは倒しても倒しても蘇り、疲れを知らず、立ち向かって来る。回復薬はどんな傷でも治癒してくれるが、体力を回復する力は極わずかで、体力回復薬としては使えない。

 私達は疲れ切り、徹底するしかなかった。アンデッドがどうして私達の砦を前に撤退したのかは不明だが、攻め掛かって来なかったのはラッキーだった。私達はもう戦える状態でなかったのだ。

「これは困りました。とても勝てませんぞ」

ヘイゲンが言う。

「あいつら、疲れないんでしょうか?」

カツエも閉口している。

「どうにか対策を練らねば、負けていまいます」

ヨウテツの言葉に皆が頷いた。

「それですが、土に埋めちゃうというのはどうでしょうか?」

キノフジの提案だ。

「悪くないかもしれないわね」

私には妙案のように思えた。手足と切り取り、地中深くに埋めてしまえば出てこれない。

「そんな適当な事で大丈夫でしょうか?」

カツエが疑問を呈した。最近、存在感を増しているキノフジへのやっかみがあるのかもしれない。

「カツエには何か良い考えがある?」

私はカツエに聞いた。

「いいえ。ありません」

カツエは下を向いた。

「他にアイデアがある者はいる?」

私は皆を見まわしたが、誰からも返事はなかった。

「それじゃあ、キノフジ案で行きましょう」

私は決断した。


 第二次アンデッド攻略戦が始まった。作戦はドワーフが竪穴を掘る事から始めた。ドワーフ総勢で幾つもの穴をほる。

 私達がアンデッドの砦を攻めると、再びアンデットは砦を飛び出し攻め込んできた。私達は適当に応戦しなが移動し、ドワーフが穴を掘った場所に誘い込んだ。

 倒したアンデッドを剣、槍、斧で手足を切り離し、それぞれ別の穴に放り込んで、上から土を掛ける。

 どうにかアンデッド全部を倒し、穴に放り込むと、上に土盛って、ゴーレムが踏み固めた。

「思いの外、上手くいったわね」

私は満足し、進軍を開始した。

 アンデッドの最前線の砦に入るとそこは無人だった。全てのアンデッドは土の下にいる。砦の中で一時の休息を取っていた。その時……。

「敵襲! 敵襲!」

見張りの兵が狼狽えた声を上げる。

 砦から外を眺めると、前から数千のアンデッドが進軍してくる。他の砦から援軍が送られた様だ。

「乃菜様。後ろからも敵がきます!」

「えっ」

驚いて、進軍してきた方向を振り返ると、そこからもアンデッドの大群が攻めて来る。

「どうして、後ろに敵がいるの!」

私は叫んだ。

「さっき埋めたアンデッドです。穴から這い出て来たんです。だから言わんこっちゃない!」

カツエが叫ぶ。よく見ると、身体に土が付いている。間違いないようだ。私の考えが甘かった。よく見ると、左手と右手、顔と身体など、身体のパーツの色が違う。アンデッドは自分の身体でなくても利用して、再生できるのだ。

 砦はアンデッドの大軍に囲まれた。倒しても倒しても起き上がってくるアンデッド。私達はアンデッドの攻撃に圧され、砦の中にアンデッドの侵入を許してしまった。

 砦の中は乱戦となる。私の前にもアンデッドが立ちふさがった。薙刀で応戦するが、不覚にも体勢を崩し、尻餅をついてしまった。

 アンデッドが私に襲い掛かる。

「しまった!」

そう思った時、チャーがアンデッドに飛び掛かった。そのチャーを別のアンデッドの剣が刺し貫く。

「チャー!」

私は起き上がり、チャーを傷つけたアンデッドの首を刎ねた。

「チャー! 大丈夫!」

私はチャーの傷に回復薬を付ける。

 チャーに噛み付かれたアンデッドも、私が首を刎ねたアンデッドも傷が回復し、私とチャーに再び襲いかかろうとした。

「ん……」

 襲いかかろうとしたアンデッドが、チャーに付けている回復薬を見て、動きを止めた。

どうしたんだろう。何……? もしかして、回復薬?

 試しに回復薬をアンデットに差し出してみる。それを見たアンデッドは後退りした。続けて回復薬をアンデッドに掛けようとすると、アンデットは慌てて避けた。

「皆! 回復薬がアンデッドの弱点よ。いい! 回復薬を前に掲げて! ここを脱出するわよ!」

私は叫んだ。

 私の声に それぞれが回復薬をアンデッドの前にに差し出す。アンデットはそれを見て、道を開け、私達は無事に砦に戻る事ができた。

 

「リンツウ! リンツウ! アンデッドの弱点が分かったの。回復薬よ。もっと沢山いるわ。もっと用意して!」

私は興奮してリンツウに捲し立てる。

「私、アンデットに回復薬を掛けてみたんです。そうたら、皮膚が溶けました!」

キノフジも興奮している。

「アンデットに回復薬ですか……。……。あっ!」

リンツウが何か閃いた様だ。

「どうしたの? リンツウ」

「はい、乃菜様。ゴブリンの魔導書に『恋人達の魔法』があるのを思い出したのです」

「恋人達の魔法? 何かロマンチックな名前ね」

「回復の木の言伝えにある不死の人に死を与えた神様の魔法です」

「えっ。不死の人に死を与える……。アンデッドと殺す魔法じゃないの! 何で今まで黙っていたのよ!」

「すみません。遠い昔に一度だけ使われた魔法で、失念しておりました」

「直ぐにやって見せて!」

「わかりました。暫くお待ちください」

リンツウは、そう言って部屋を出ると、魔導書と植物の種を一つ持って戻ってきた。

「種は何でもいい様です」

そう言いながら、リンツウは魔導書に書いてある呪文を唱えた。

 種が僅かに揺れている。揺れは次第に大きくなり、種から芽が出てきた。リンツウは汗を流している。

「これで終了です」

「これだけ?」

私は少しがっかりした。種が芽を出しただけで、アンデッドを殺せるとは思えない。

 しかし、その時まで私の横で眠っていたチャーが、むくっと起き出し、種の方に寄ってきた。涎を垂らしている。

「チャー食べちゃダメよ」

私はそう言って、ある事に気が付いた。

「もしかして、これって回復の木の芽なんじゃないの」

そうだ。そうに違いない。チャーがこんなに食べたがるのは回復の木以外に考えられない。

 回復薬が私達の傷を癒すは単なる偶然で、元々、回復の木はアンデッドの命を奪うために、生み出されたアンデッド殺戮の木だったのだ。決して、アンデッドが埋葬された場所から生えてきたではない。

「これで決定ね。アンデットは回復薬で殺せる!」

しかし、ゴブリンが正確に言伝えを残してくれていたなら、こんなに苦労はしなかったのに。魔導書の魔法の名前は「恋人達の魔法」から「アンデッド殺戮魔法」に書き換えておこうと私は思った。

 私は回復薬をさらに集めると共に、リンツウに回復の木の苗木を作らせた。キノフジら他のゴブリンにも回復の木を作らせようとしたが、リンツウの他に作れる者は居ず、リンツウは面目を施した。

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