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Mousse chocolat framboise 〜 おじさんのお話 〜  作者: カフェと吟遊詩人
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恋人たちの休日

土曜日、電車に揺られ今日は日暮里駅で降りて谷根千を歩いていた


おじさんにとってここは想い出のある街で久しぶりに降り立った


景色はあの頃とすっかり変わり、そして雰囲気は何となく変わり


しかし裏通りの細い道に入ると、懐かしい壁やあの桜の木も残っていて想い出に心を浸していく


沙都美が


「美味しいパンが食べたいです」


と、言って来たのだが


神楽坂のパン デ フィロゾフに行ってクロワッサンを食べたかったのだが、どうしても並ぶのが嫌だったので


その後輩に当たると聞いたことが有る根津のパン屋に行く事にした


根津駅で待ち合わせしたのだが


どうしても懐かしい想い出の有る谷中の[ゆうやけだんだん]を歩いて谷中の墓地の咲いてない桜を見て千駄木の小さなホテルの前を歩いて根津まで行きたかったのだ


たい焼きを食べながら根津駅に着くと既に沙都美が待っていた


「早いね、つまみ食いがバレちゃったよ」


沙都美の分を買わずに鯛焼きを齧りながら待ち合わせ場所に着いてしまった事を後悔しながら声をかけた


「えっ、ずる〜い。一口貰います」


そう言って鯛焼きを持つ手を自分の口元に寄せ

一口食べた


何故がそんな一場面が心くすぐったくなり

恥ずかしかった


『中学生か俺は、、、』


そんな自分を知られたくなく


「パン屋さんに行こうか。すぐそこなんだ」


「あ、さっき待ってる間に調べました。そこの角を曲がったらすぐなんですね」


「そうそう、じゃあ行こうか」


そう言って歩き出そうとするが沙都美は動かない


「どうしたの?」


「、、、、本当にいつも意地悪です」


「何が?」


そう言って右手を差し出して来た


「手を繋いで下さい。言わせないで下さいよ」


『えっ?そんなの君から繋いでくればいいじゃん。女子か!あ、女子か。女子なんだなぁ〜』


そんなクダラナイ事を心の中で言いながら


差し出された手をそっと握る、、、指の先を、、、。


「ダメですね、これは恋人同士の手の繋ぎ方じゃ有りません!もっとギュッとお願いします。指を絡めるのもオッケーです」


「はいはいわかりました、お姫様」


「なんですかぁ〜。抱きついちゃいますよ」


「ごめん。わかったから、、、駅の入り口で、、、行こう」


沙都美の手を強く握り歩き出した


完全に沙都美の勝ちである

既に振り回され始めている


しかし沙都美に言わせれば


全部言わなければやって貰えない事に不満は有る


角を曲がると、、、そこは人気のパン屋、、、人か並んでいた


「並んでるね」


「そうですね。早く並んじゃいましょう」


列の最後尾についた2人


なんとなく会話も続かない


「ずーと一緒だと何を喋っていいかわかりませんね」


「そうだね、仕事もプライベートも一緒だとね」


「へへへへへ」


「どうしたの?」


「嬉しくて。これも一歩前進だなと」


「、、、柳沢さんとは会う日は決まったの?」


なにか恥ずかしくなって話題を変えてみた


「こちらの都合の良い日を送っておいたので休み明けには決まると思います」


「そうかぁ、わかったぁ〜。どんなパンが好きなの?」


「お惣菜パンが好きです。色々な具材が乗ってたら幸せです」


「そうか、俺はハード系が好きなんだよなぁ。両方買おうか。。。んっ?どうした?」


「なんか[俺]って言うのも恋人っぽいなと」


そう言って絡んでくる沙都美は少女の様で、おじさんを少し切なくした


『無くした若さがここに有るなぁ。そしてその若さが羨ましくも、、、近くに有るのが有り難いな』


気付けば黙って沙都美をみていた


「どうしたんですか?惚れなおしちゃいました?」


「どの部分でそうなるんだ?」


「良いんですよ、いくら惚れてくれても」


「そうだね」


そう応えるおじさんの心の奥はまだまだ臆病にしかし確実に沙都美が侵入して来ていた


順番が来て店で買い物を始めると


小さい店で小心者のおじさんはソソクサと商品を決めてしまう

後ろに並んでいる人達が気になってしまうのだ


沙都美はゆっくりと一つ一つのパンを見ながらどれを買うか決めている


途中で色々とおじさんに話しかけて相談してくるが


自分が食べたい物は決めてしまっただけに


親身な相談にはならない





パンを買い終わり2人で上野公園へ向かう


ベンチは既に埋まっている感じで


やはり桜の咲いてない並木を歩きながらパンを齧る


「これ美味しいですよ。一口食べてみて下さい」


少し買い過ぎた小食の沙都美はおじさんの口へ次々とパンを入れていく


苦笑いをしながらパンを食べ会話をする


何気ない普通のデートである


そんな休日


「明日もお休みですね」


「そうだね。どうしたの」


「私と長い時間一緒にいたいですよね」


「、、、そうだね」


「あっ、今少しエッチな事考えましたね」


「か、考えてないよ」


実際は沙都美が何を言い出すか身構えただけだが


朝からその事を全く考えなかった訳では無いので


少し顔が赤らんだ


「あ、顔が赤いですよ。遠慮しなくていいんですよ。私の心も身体も勇輝さんのものです」


「あ、有難う」


「ここは抱きしめてくれるところです」


そう言って両手を少し広げて待つ沙都美


ゆっくりと、人前で、通りで、真っ昼間から


歳の差が有る女子を抱き締める


もちろん周りは何事かと見ている


「あの、もういいかな、、、少し、、恥ずかしくて」


「周りの目を気にし過ぎですよ」


そう言ってやっと離れてくれた沙都美は


「この後は何をするか知ってますか?」


「まだ決めてないと思ってたけど」


「付き合ったばかりの女子がする事は彼氏の部屋に行ってご飯を作るのです」


「えっ?」


「女子力アピールと、、、本題は彼氏の身辺確認です」


「なんか本音がダダ漏れなんですが」


「はい」


「まあ、今日は片付けておいたけど」


「そうなんですか!やっぱり勇輝さん。エッチな事考えましたね」


「ちょっと、、、ズルい」


「大丈夫ですよ、、、私も考えてましたから」


そこで沙都美は袖を少し摘み恥ずかしそうにする


もう、これがこの子のテクニックなのか自然なのかどうでも良くなっていく


2人は駅に向かい歩き出した

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