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Mousse chocolat framboise 〜 おじさんのお話 〜  作者: カフェと吟遊詩人
32/55

はじまりの夜

おじさんは


果てしなく落ち着かなかった


自分が想像していたよりも


遥かに高級店だ


お洒落なワインバー位に思っていたのだが


「イタリアンに決めました!」


「ピザ?俺はナポリピザが好きなんだ!」


そんな事を言った自分が今更恥ずかしい


ここは銀座のイタリアン《クロディーノ》


エノテカピンキオーリの流れをくむ名店だ


料理だけで1万円はする


総額2人で3マンは覚悟が必要だ


「告白されるならやっぱり雰囲気も大事だと思って気合い入れて選びました」


「そ、そうだね。凄く雰囲気の良い店だね」


「、、、、ひょっとして金額を気にしてますか?安心してください、割り勘です」


「そ、そうなの⁉︎それは助かる」


若い男の子なら意地でも「俺が払うよ」と言ったかも知れないが、おじさんには少し意地が足りなかった様だ。。。


ソムリエがやって来て


「食前のお飲み物はどうされますか?」


『知らん。俺は酒は弱いんだ!何を注文しても良いかもわからん』


おじさんが困っていると


「スプマンテかオリジナルのカクテルがオススメですが」


『おお、ナイス仕事なソムリエさん』


「飲みやすいカクテルをお願いしたいです」


沙都美がサラッと注文している


『俺はどうしたらいいんだろう。アルコール飲んだら告白どころでは無くなってしまう』


「勇輝さんはちゃんとお話しするまでは酔って貰ったら困るのでノンアルコールのカクテルにしときますか?」


「あ、それで」


「かしこまりました。ご用意させて頂きます」


この後も沙都美にリードされながらメニューを決めていく




「乾杯」


沙都美がグラスをこちらに差し出して来る


「ああ」


そう返事をしながらグラスを合わせた


「料理楽しみですね」


「高級イタリアンなんて初めてだ。ペペロンチーノやピッツァマルゲリータが無いイタリアンがある事を知らなかったよ」 


「そうですね、高級レストランと言ったら日本人はフレンチを思い浮かべますよね」


「フレンチもあまり行かないけどね」


と、いうか殆ど行った記憶がない


接待要員に向いてない口下手なおじさんは社用でも行く事が無かった


「私、高級イタリアンのパスタが好きなんです。やはり普段見ないパスタとか知らないソースとか、、、本当に美味しいんです」


「そうなんだ、、、」


他に何も応えられずただ相槌を打っている感じで会話は進んだ




肉料理が終わり


デザートが出て来た


「スミマセン」


「なに?」


「私、待てないみたいで」


「何が?」


「もう、言ってください」


「えっ?」


ほんのりワインで顔が赤くなっている沙都美は


色気たっぷりの声と表情でおじさんに話しかけて来る


「お願いします」


そう言って座り直し真っ直ぐにおじさんを見た


「えっと、、、そうやって改まられると言い辛いんだけど。。。。僕の彼女になってくれませんか?」


お酒も飲んで無いのに中年の顔が真っ赤になる


そして、何より気になるのが


さっきのソムリエがチラチラとコッチを見て聞き耳を立てている


『そりゃ気になるよな。普通に見たら中年の援助交際、パパ活だよな』


「はい、よろしくお願いします」


こちらの席に飛び付いて来そうな勢いの沙都美だが、流石にレストランでは我慢している様だ


「やっぱり今日は勇輝さんの家ですね」


「なんでそうなる」


「私が我慢出来なそうだからです」


「、、、、」


素直に困っているが、雰囲気に酔っているのかおじさんも少し満更でも無い気がしている。

しかし、部屋に来させる訳には行かない。。。


「全力で引っ付きたいです」


先程のソムリエでなく、若いサービスマンは勢いよくコチラを振り向いた


『そりゃそうだよな、こんな若くて綺麗な子が、、、こんなおじさんに凄い事言ってるんだもんな』


「ちょっと声が大きいよ」


「スミマセン、ちょっと酔ってるみたいです」


デザートが食べ終わり


そっとテーブルにコーヒーと紅茶が運ばれて来た


「すっごい美味しかったですね」


「パスタが知らない物ばかりだったのに驚いた、そして凄く美味しかった」


「ここは2人の記念のレストランになりましたね」


「そうか、そうだね」


「来年の今日もきっと来ましょうね」


「そうだね」


『君がその時まで僕を好きでいてくれたらね』


そんな考えてもどうしようもない事を考えながらコーヒーに口をつけた




もうすでに他の席に客も無く、ダラダラ話していても申し訳ない気がしたので


「お会計にしようか」


と、切り出した


「流石にレストランでは終電まで粘れませんしね。バーかどこかに行きましょう」


「それは普通は心の声なのでは?」


と、切り返してはみたが


「心の声を出さないと、勇輝さんは気付いて無いか気付かないフリをしてしまいますから」


と返されてしまった


「気付いてないフリじゃ無くて、いい方向に考える勇気が無いだけだよ」


「本当は私も黙って連れ去られたいですよ」


「心の声が漏れ漏れですね」


「はい」


眩しい笑顔で沙都美は応えた






会計を済まして店を出た


その時、若いサービスの視線はとても羨ましくおじさんを見ている気がした


余談だが会計の時


「コチラが明細になります」


と、サービスマンがトレーを持って来た時


ちゃんと女性はトイレに立っていた、、、。


女性のテクニックがやはりおじさんを臆病にするのであった





街を歩きながら


「半分出しますよぉ」


少しおぼつかない歩き方で沙都美が腕を組んで来る


「じゃあ、酔いが覚めた明日払って下さい」


半ば期待せずにおじさんは応えた


「少し歩きましょうよ、私このままじゃ電車寝過ごしてしまうので」


「わかったよ、新橋まで歩く?」


「良いですね。歩きましょう」


この時、なぜ沙都美が新橋をサラッと受け入れたのか解っていなかった


銀座の中央通りを腕を組みながら2人で歩いていたが


「勇輝さん、キスしたくて堪らないので裏道歩きましょうよ」


「ちょっと街中だよ」


「だから少し人通りの少ない所を歩きましょうよ。嫌ならここでしちゃいますよ」


「わかりました。裏道に入ればいいんだね」


そう言って左に曲がり少し人通りの少ない通りを歩き出した


「キスして下さい」


そう言って首に手を回してコチラを見つめる


おじさんはそっと沙都美の唇に唇を重ねた


沙都美は嬉しそうな顔をして今度は自分から唇を重ねて来た


少し激しくなって来たところでおじさんから離れた


「人が来るよ」


「じゃあ、人の来ないところにいきましょう」


「どこに行くんだよ。銀座だよここ」


そう言って沙都美の手をおじさんから握って新橋方面へ歩き出した


「コッチです」


そう言って沙都美はおじさんの手を離し、腕にしがみついて来た


沙都美の小さな胸が腕に当たる


そのままゆっくりと沙都美がおじさんを引っ張って歩く


「ここです」


そう、ここは三井ガーデンホテル


「ホテル、、、」


「ホテルなら大丈夫ですよね」


「そ、そうだけど、、、」


男のプライドでお金がないといえない


「割り勘です!入りますよ。私、酔っ払って家に帰れませんから」


「ちょっと、俺は着替え持ってないんだよ」


「明日の朝、ドンキで買いましょう。入りますよ」


「ちょっと待って、、、今買っちゃダメ?」


「今は、、、ちょっと待てませんね」


「えっと、、、」


「昭和の私の彼氏さん。私、勇輝さんへの気持ちが今日は全然止められないんです」


『今日は?いつも止めて無いよね』


心の中では言えたが、沙都美の少し溶けた目を見たら声に出せなかった


沙都美に腕を引かれそのままフロントに向かった


『なんか、男女逆転してないか、、、』


全く格好良く無いおじさんであった

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