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Mousse chocolat framboise 〜 おじさんのお話 〜  作者: カフェと吟遊詩人
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過去と自分と

おじさんは女性と歩いていた


と、言っても彼女なんてモノではなく人妻で子供もいる


「娘さん、綺麗な顔立ちだね」


「娘、、、あ、有難う、、、あの子は華奢で目元がハッキリしてて可愛いのよね」


「水野さんも昔から細いじゃ無いか。男連中にはかなり人気だったよね」


「唯があなたしか見てなかったからよ」


やや、呆れた様な口調でそう言った


「結局フラれた自分はそう言われても、、、なんだけどね」


「それは、、、まあ、、ね」


「今日はもっと郊外に行くもんだと思ってたよ」


「そうね、すごい立派な場所にお墓があるよね」


「来たこと有るの?」


「仲が良かったのは確かだけど、お墓参りは初めてかな。哀しい話だけどお葬式の後は2回くらい唯の実家に行ってお線香をあげた位。忘れた事は無いんだけど、、、考える時間はどんどん無くなっていって哀しいって想いはほぼなくなったって言うのは正直有る」


「確かにね。哀しみ続ける事は、、、出来ないよね」


「いつまでもウジウジは出来そうだけどね」


そう言っておじさんの顔を見る


「だからケジメの一つでも付けようと今日は来たんだろ」


「実家に線香あげに行ったら?」


「あのね、娘がフった男が突然来て線香あげたら異様でしょ」


「あ、確かにそうね」


そう言って水野さんは少し笑った


「今日行くのだって自分の為であって、唯自信には迷惑だろうしね。。。」


「そうだねぇ〜」


そう言いながら水野さんは優しく笑っている


「なんかムカつく」


なんとなく揶揄われてる気がして膨れたフリをした


お寺の入り口を入り本堂の横を抜けて墓地に入る


都会とは思えない程に静かな空間だ


「場所はわかるの?」


あまりに多いお墓の数におじさんは水野さんを見た


「唯のお母さんに地図を書いて貰ったから大丈夫よ」


そう言ってカバンから白い紙を取り出して広げた水野さんの顔は固まっていた


「どうした?」


「いや、、、唯のお母さんだなと、、、」


白い紙を差し出しながら水野さんは顔をしかめた


受け取ったおじさんの顔はさっきの水野さんと同じ顔をする


紙に書かれたお墓の位置はあまりにザックリとしていた


長方形の四角が土地をあらわしているのだろう


真ん中やや左上に丸がしてあり、そこから線が延びて《この辺り》そう書いてあった


水野さんは笑いながら


「ちょっと唯のお母さんに電話するね」


「うん、お願い」


2人はお墓には似合わない楽しそうな雰囲気で話していた






水野さんは長い時間、墓前で手を合わせている


おじさんはそれが終わるのを待っているが、思った以上に長い


『久し振りに彼女に会う事になるんだし、本当に仲が良かったからな』


やっと立ち上がった水野さんの頬には涙が流れていた


「、、、、色々と思い出しちゃって」


顔を隠しながらそう話す水野さんは少し晴れやかにも見えた


「じゃあ、次は自分の番で」


おじさんはお墓の前に立った


「彼女が出来たって報告するの?」


「なっ⁉︎」


慌てて水野さんの顔を見る


「図星なんだ」


「違うよ、、、違うんだ。。。そろそろ、そう言う事を考えようかと思って、、、ここに来たんだ」


「なぁーんだ、やっと彼女が出来た報告に来たんだと思ったのに」


「自分なりに何かケジメを付けたかったんだ。ずっと、、、彼女という現実から目を背けて過ごしてきたからね」


おじさんは今度はしゃがんで線香に火をつけて墓前で目を閉じた


『えーと、お久しぶりです。。。迷惑かも知れないけど逢いにきました、、、、、、、』


水野さんの事を長い時間だと思っていたおじさんだが少しづつ言葉を紡いでいるおじさんは水野さんとほぼ同じだけの時間をかけて彼女に話しかけていた


その姿を見る水野さんは再び目に涙を浮かべていた






一お墓参りを終え、2人で甘い物を食べながらお茶をしていた


「そのケーキも美味しそうね、一口ちょーだい」


そう言っておじさんのケーキを「いいよ」と応える間もなく強奪して自分の口の中に入れた


「おいし〜。勇輝君は変わらず美味しいケーキ屋に詳しいね」


「ちょっと、、、そんな食べ方してたら周りからカップルだと思われるよ」


水野さんが人妻だと気を使っている


「こんな若く無い2人がどうかなんて周りは気にして無いよ」


微笑みながら自分のケーキを食べている


「もう一個食べる?」


「うん。食べたい」


水野さんは別のケーキも注文した


「で、、、彼女はまだ本当に出来てないの?それとも彼女未満の子が出来たのかな?」


「えっ?今その球を投げてくる?」


「だって私は今日しか聞けないから」


「そうだけど」


「教えてよ」


「本当女性は勘が働くなぁ、、、よく解らないというか、、、自信が無いというか、、、女の子に言い寄られている感じで」


「なに?まだ相手の気持ちは曖昧なの?」


「好きと言われてるんだけど、イマイチ本当かどうか解らなくて」


「意味が解らない。言い寄られてるんでしょ」


「でも、、、」


「でもなに?」


水野さんはイライラしだした


「あのさぁ、、、25歳以下の子なんだけど」


「はあ?若いわね。なんかそれだけでムカつく」


「なんで?」


「若さは羨ましいものよ」


「そういう物なのかな?まあ、若さが羨ましく感じる時も確かに有るなぁ」


「で、なんで自信が無いの?」


「だって歳の差10以上だよ。すぐに冷めちゃうと思うんだよね」


「そんなの解らないじゃ無い。歳が近くても離れてても続く人は続くし、ダメな人はダメなのよ。。。でも、若い子と付き合うのはなんかムカつく」


「いちいちムカつくなよ」


「で、付き合いたいとは思っているの」


「自分でもよく解って無いんだけど。人をもう一度、心から信じてみても良いかなと思う様になって来ていて。そう思わせて貰ったのが彼女達かなと」


「達?何?複数人なの?」


おじさんは《シマッタ》と言う顔をしながら慌てふためく


「ちょっと、、、何歳なの?何人なのよ、、、イライラする」


「じゃあ聞くなよ」


「聞くわよ。で、何歳?」


「多分だけど25歳か26歳の子と23歳の子かな」


「23?新卒じゃ無い。勇輝君て犯罪者?」


「相手は成人してるし、手は出してない」


「はっ?むしろ手を出してない事がその子達に可哀想だわ」


「いったいどっちなんだよ」


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