魅惑の彼女2
何とか視線を散らしながら食事を済ませ
テーブルを片付けて資料を広げる
「今回の仕事はね、、、、」
仕事の話が始まれば資料に目を落とせ冷静に話が出来た
話は順調に進み大まかに沙都美に内容が伝わる。もともと沙都美は仕事は出来る方で亜紗美より優秀だ
資料を指差しながら沙都美が質問してくる
しかし、ソファー席のテーブルが大きいからか沙都美がやや中腰になって質問をしている
申し訳なく思い資料を沙都美の方に寄せて話をしようとするが
パッと立ち上がり息をつくタイミングも無く隣に座って来た
大きめのソファーは肘おきなど無く腕に沙都美の長い髪が触れる位に近づいて来た
再び硬直するおじさんだが、冷静を装って質問に答える
こんな状況でも沙都美の質問は的確で不明瞭な点が幾つか出て来て、先方や上司に確認する事を確認し、今後の仕事の進め方が決まって行く
『この子、思ってた以上に優秀だな』
勿論、沙都美は優秀な方だ。ただ努力なしにこの対応が出来た訳では無い。ここに来るまでに上司から勇輝の作った資料を半ばぶん取り、地下鉄で慌てて読んでいたのだ
それをさも初めて聞いたかの様におじさんに心地よく説明させ疑問点をぶつけていたのだ
これが優秀と言う事なのだろう
話もほぼ終わり
「さて、会社に戻るよ」
太ももにやや触れる様に手をソファーに付いている沙都美から逃げる様に腰を少し動かす
「少し、私の話を聞いて貰えますか?」
嫌な予感しかしない
「でも、もう戻らないと」
「私が奢ったのになぁ」
悪戯っぽい顔をしながら亜紗美の上目遣いとは違い爽やかな笑顔で男心を翻弄する
「わかったよ、、、少しだけだよ」
周りから見たら少し怪しい位の接し方だろう
しかも、年の差が15歳位ある
不倫カップルと思われても仕方がない雰囲気だ
「で、ちょっと緊張するので離れて話さないかな」
「、、、無理ですね。」
「なんで?」
「顔が見える距離だと私が緊張して話せませんから」
そう言って再びさっきの少しだけ触れる距離に近付く
「でも、この距離は周りから怪しまれるよ」
「私は怪しまれても問題は有りませんし、もう少し近付きたい位です」
そう言って正面を見たまま手を握ってきた
「ちょ、、、、」
おじさんは限界に達している
数年間ご無沙汰なおじさんがこんな若い子に距離を詰められて慌てているのはかなり格好が悪い
「もう解ると思いますが、大好きです。亜紗美よりも前から、亜紗美よりももっともっと好きです」
そう言いながらより身体を寄せて来た
これも後で知った話だが
腕を絡めて胸を押し付けて来たり、手を握って来たり、身体を寄せて来たり
これらは全部、会社のお局様のアドバイスだったらしい
「私も緊張したんですよ。だって、、、凄い恥ずかしいじゃ無いですか」
と、後に沙都美が顔を赤らめて話していた
お局様達はそれを笑い話にしてお酒を呑んでいたらしい
勿論、笑われたのは沙都美では無く勇輝の事をだ
「僕は中年だし、、、」
ほぼ亜紗美に言った事と同じ事を言っているおじさんがいた
「返事はすぐにじゃ無くて大丈夫です。必ず付き合いますから」
『なんかデジャブだ、、、』
「さあ、会社に戻りますよ」
そう言って沙都美はテーブルの資料と飲み物を片付けだした
その間、役立たずのおじさんは黙ってソファーで固まっていた
片付け終わり無言で2人が階段を降りる
「勇輝さん」
少し降りて周りから死角になっている所で背後から沙都美に声を掛けられる
呆然としているおじさんはその問いかけにゆっくりと振り向いた
そこに身長差を丁度埋めるくらいの階段の1段差で顔が目の前に有る
その瞬間、沙都美はおじさんの顔を両手で抑え唇を重ねた
スグに離れたその顔は眩しい位の笑顔でやはりおじさんには眩し過ぎると思ってしまった
「唇、頂きました」
そうは思いながらもそこまで悪い気もしていない自分を感じていた
「俺の何が良いんだか」
思った事が思わず口から漏れてしまい
恥ずかしく頭を掻こうとすると
再び顔を両手掴みさっきより強く長くキスをして来た
離れて唇を指で少し拭いながら
「私が良いと思ったから良いんです」
「、、、、、はい」
15も年が離れていても応えられたのはこの一言
「珈琲の味がしました」
悪戯っぽい笑顔はさっきより子供っぽく
綺麗な顔の沙都美の事を少し可愛いと愛しく思ってしまった
1度目のキスは計算されていたのかも知れないが
2度目のキスは沙都美にとっても衝動的なキスだったと沙都美自身が感じていた
1話前から空気感を変えれるかに挑戦した回でした
いつもより更に辿々しいかも知れませんが、、、。




