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都会の洗礼

奈由子は松葉集落を出て、最寄り駅まで走り、電車に飛び乗った。着いた先は目的地、神戸・水野だった。


「これが・・・・都会・・・」


奈由子がそう呟いても、気に留める人もいなかった。ここは、他人に干渉したりしない、正常な町だと、奈由子は思った。そのまま、緑里の話を思い出しながら、水野の街を奈由子は彷徨う。緑里は繁華街の中のアパートに住んでいたと話していた。経験したことの無い人混みを何とかかき分け繁華街に足を踏み入れると、人生で初めて見るネオンと雑多な建物に圧倒されてしまった。その時、背後から2人の男が奈由子に声をかけてきた。


「お嬢さん、こんなところで何してるの?」


奈由子が振り返ると、スーツを着た誠実そうな男性2人が笑顔で立っていた。


「え・・・。ちょっと人を探してて・・・」


「こんな遅い時間に?こんなところを女の子1人で歩いて危ないよ。泊まるところはあるの?連れていってあげようか?」


「あ・・・。そういうのは特になくて・・・。お金もあまりなくて・・・」


奈由子が不安そうにそう答えると、男性2人は目を合わせた。


「そうなんだ。大変だね。良かったら今晩だけ格安で泊まれるホテル、紹介してあげようか?」


「・・・え!いいんですか??」


「うん。こんなところに1人で置いていくわけにはいかないよ」


男性2人は初対面の奈由子に非常に親切にホテルを紹介してくれると言う。その言葉を疑う事も無く信じた奈由子は2人に連れられて繁華街を出た。連れてこられたのは、どう考えても格安では無い巨大なホテルだった。


男たちが手続きをし、奈由子を部屋へ案内する。そして、部屋に入るとそこには既に先客がいた。


「ああ。やっと来たな。君が今日の俺の相手か。なんだ・・・新人か」


世間知らずの奈由子は今の状況が理解できなかった。後ろを振り向くと、既に2人の男は居なかった。反射的に逃げようとした奈由子だが、部屋の中でバスローブを着ていた男に手を掴まれ逃げ出せず、何もかも知らない純粋無垢な少女は、そのまま汚されてしまった。翌朝、未だ放心状態の奈由子をバスローブの男は引きずってホテルの裏口の外に放り投げ、その後すぐに昨日の男の一人が自転車に乗ってやってきた。


「私を・・・騙したのね!世間知らずだと思って・・・!」


「騙したってのは心外だ。格安のホテルは提供してやっただろ。ギブアンドテイクは当然だろ。・・・ま。今回は、これな」


そう言って男は奈由子に5万円を生で差し出す。


「え?」


「それ。本来予定していた嬢に払う予定だった金だから、持って帰っていいよ。・・・つまりそういうこと。昨日俺たちは、逃げた嬢の代わりを探してたってこと。なるべく世間知らずそうな女の子・・・。そんな俺らの眼にあんたは止まったの。」


「ふざけないで・・」


「まあまあ。ね。それで勘弁してよ。ほんと助かったよ。あの人、うちの太客だから、怒らせるわけにいかなかったんだ。ね。ありがとね。じゃあね」


男はそう早口でまくしたてると、大急ぎで自転車に乗り奈由子の前から消えた。奈由子はショックと悔しさと体と心の痛みでその場でうずくまったまま動けなくなった。その時、女性の声がした。


「どうしたの?大丈夫・・・?」


しゃがみ込み奈由子を見つめていたのは、お母さんとおばあちゃんの間ぐらいの優しそうな女性だった。


しかし奈由子は昨夜の事件で一気に都会の人間不信になってしまった。


「いや・・・。大丈夫ですから・・・」


「待って待って。ここね。あなたみたいな子がよくうずくまってるの。ね。大丈夫だから。・・・あなた、どこから来たの?この辺の子じゃないでしょ?」


「・・・どうしてわかるんですか?」


「長年生きてきた母親の勘よ。ね。ちょっとうちへきて休まない?」


「え・・・。でも・・・。」


「そっか・・・。知らない人が怖くなっちゃったか。私ね。来宮亜耶って言います。おうちで週に一回、子ども食堂を開いて、両親の居ない子やお金の無い子どもたちにごはんを作ってるの。だから、あなたも来てみない?」


話を聞いているうちに奈由子はこの女性を信じても良い気がしてきた。昼間だし、女性だし、同じことが2度も短期間では起こらないだろう。そう考えて奈由子は亜耶について行くことにした。


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