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ピヨピヨ お買い物

えーと、季節がお話と大体同じ位になりました。

おそくなりまして、申し訳ないですっ! ゆっくりですが、おつきあいくださいませー!

すっかり、ゆーたんの事が気に入ってくれた住職ご夫妻に、お昼も食べていきなさいな!というお誘いをいただいたのだが、まだやらなくてはいけない事があるので、また今度来ますと言って辞去をした。


なにせ、お昼までに商店街でモロモロの買い物を済ませなくてはいけないのだ。


悠太と一緒に預かったのはわずかの荷物だけで、着替えはおろか、靴もなかったのだ。

これから生活をするためにも最低限の買い物をしてあげないと。


こういう時、頼りになるのは、ご近所の商店街だ。

近所の商店街は未だ健在で、一般の食料品に、お惣菜、花屋もあるし、子供用品、日常の雑貨から、学生の上履きからスポーツシューズ、体操服に、制服まで!

品揃えが豊富で、日々の暮らしに大変に役立っております。(特に学生のいるお家は)


その中の一軒、年季の入った店構えの靴やさんへ急ぐ。


「こんにちはー、こちらに小っちゃい子の靴ってありましたっけ?」


「おや、桑月のおにーちゃん! 今日は健斗くんの上履きじゃないんだね。」


「ええ、うちの四番目の分です。小さい子が外で遊べる運動靴があるといいんですが・・・」


「幼児の靴ねぇ、んー、あるよ。これなんかどうだい?」


店に入り、奥に向かって声をかけると、いつものように靴やの親父さんが出てきて、にこやかに対応をしてくれる。

普段は、父の靴の修理や、研司や健斗の学校の上履きなどでお世話になることが多いのだが、久々の子供靴の依頼を受けて靴やの親父さんも驚いたようだ。


店の奥から出してきてくれたのは、青い合皮で作れらた子供用の運動靴。


「ここがね、マジックテープになっているから、紐でひっかかる心配もないよ」

と、足の甲の部分にある留め具を指して説明してくれる。

なるほど、健斗もお世話になった事があるタイプの運動靴だ。少し大きめにしてもらって試着してみる。


「どうですか、ゆーたん、痛いところはありませんか?」

初めての運動靴に興奮気味のゆーたんは、青い靴を履いて歩き出す。すると・・・


ぴよ♪ 


「・・・親父さん?」


「あー、これな、ぴよぴよサンダルの運動靴版なんだわー。

 ちっさい子には、ぴったりだろう?」


ゆーたんは、自分の足元で鳴る音にびっくりしたらしく、足の下を見たり、靴の底をみたりと忙しい。


「ゆーたん、歩いてごらんなさい。靴のひよこさんがぴよぴよ言いますよ。」

「・・・あいっ!」


右足、左足・・・そっと歩き出すと・・・。


ぴよ・ぴよ・・・♪


「ふわあぁぁ・・・」

にーたんの言う通り、靴のひよこは、ゆーたんが歩くとぴよぴよと伴奏をしてくれる。

なんて、すごいんでしょうっ!


「しゅごいね、ぴよしゃんっ!」

悠太は、店先にお座りをして自分の履いている青い靴を撫でてあげる。

すごいなぁ、ひよこって靴の中にいるんだー、と


「・・・今どきの子にしては反応が新鮮だな、お兄ちゃん」

「まあ、本当に初めて靴を履いて歩いたようなもんですからねぇ」


悠太はお社の中でで生活をしていて、その中から出ることなどほとんどない。お社の中から中庭を見る事はあっても、外に出る事は許されなかったようだ。


当然、靴を履いて外で遊ぶ事もなかったのだとか。

確かに桑月家の来た時も荷物に靴はなく、となれば靴を履き、自分の足で外を歩くのはこれが初めてだろう。


どうやら気に入ってくれたようなので、痛いところがないか確認するとその運動靴を買う事にした。

長靴を買っておくべきか・・・。今は、運動靴だけでいいような気も・・・。


と、靴やのおやじさんと話していると、いつの間にか、足元にいたはずの悠太の姿が消えている。


「やれやら、靴を履いた途端に大冒険ですねぇ」


☆彡 ☆彡 ☆彡



にーたんに買って貰った青い靴は、履いているとぴよしゃんが一緒に歩いてくれる。


てとてとてと・・・・


ぴよぴよぴよ・・・♪


嬉しくなって、強く踏みしめてみたり、ぴよこんと飛んでみたり。


そのたびに、大きく、小さく、ぴよぴよ♪と、一緒に歩いてくれている気がする。


嬉しくって楽しくって・・・


「おおっ? 坊や、どこの子だい?」

頭の上から知らない声がしたので慌てて前を見ると、自分を見降ろしているのは、知らない男の人だ。


「おや、どうしたの? おかーさんや、おとーさんは?」


「あらまあ、見ない子だね。迷子かい?」


声を聞きつけてわらわらと自分の周りに大人がたくさん集まってきて取り囲む。もう、周囲は大きな壁に囲まれているような・・・。


知らない人ばっかりだ、どうしよう・・・ぼく、ぼく・・。



「に・・・にーたぁん」


青くなりながら呼んだのは、大好きなにーたん。


タロにーたん、じーくん、けんとくん・・・にーたんの側から離れちゃダメってとーたんが言っていた。

にーたんは、最強のお守りだからって。


でも、でも、ぼく、にーたんから離れちゃった・・・



「はい、どうしました? ゆーたん」

自分の背後から聞こえてくる声。後ろからふんわりと抱き上げてくれる手が、優しい。


「・・・にーたん」

ああ、にーたんだあ・・・。


「はい、ずいぶん頑張って歩きましたね。商店街の端まで来ましたよ?」

にっこりと笑うにーたんに抱っこしてもらってよしよしと頭をなで、大丈夫というように背中をぽんぽんと叩かれたら、なんだか、ほっとしてしまって涙がぽろぽろ。


きゅうっとにーたんに抱き着いて、ふえぇぇぇんと泣き出してしまう。


「自分がこんなとこまで来ていてびっくりしましたか? 夢中で歩いていたんですねぇ」

抱き着いたままの悠太を抱っこして、靴屋さんへと戻り、親父さんに挨拶をして、商店街の中を歩いていく。


「おや、さっきの迷子は桑月のおにーちゃんトコの子だったのかい」


「はい、お世話をおかけしました。コロッケを6つと、メンチカツを5つお願いします。」


はいよ!と返事をして、肉屋の店員さんが大きなフライヤーに、コロッケとメンチカツを入れて揚げていく。

じゅわじゅわと音がして、香ばしい匂いがしてくる。


「ほら、ゆーたん見てごらん、コロッケ揚がっていきますよ」

背中をとんとんとされたので、にーたんを見つめると、優しい笑顔でお店のウィンドウを指している。

指さす方を見ると、大きなお鍋の中にじゅわじゅわと泡を出すコロッケが見える。


・・・実は、ゆーたん、コロッケを初めて見た。

油の中に浮いている茶色のまあるいの。


「・・・きょろっけ?」

「コロッケ、ですよ、ゆーたん。あのキツネ色の衣の中は、ジャガイモなんです。

 一つ、食べてみますか?」


ころっけ、じゃがいも・・・あ、美味しい匂いがする。

促されるままに、ゆーたんはこっくりと頷くのだった。



「はいよっ! 揚げたてだからね、熱いよ~。気を付けてな!」

揚げたての1個を紙に包んで笑顔で肉屋のおにーさんが渡してくれる。


お店前にあるベンチに座って、ちょっとオヤツタイムだ。


アツアツのコロッケを、二つにわって、にーたんがふうふうと息を吹きかけて冷ましてくれる。

その姿を見ているだけで、ゆーたんは、わくわくしてくる。


「はい、どーぞ」

と、差し出された、まだ湯気のたつコロッケに、ゆーたんはおっかなびっくり。そうっとかじってみる。


ざくっさく!


周りの茶色はとってもサクサク、中のジャガイモはふんわり柔らかで、ほの甘い。


「おいち・・・っ!」

はふはふしながら、夢中になって食べすすめる。


「それは、よかった!気に入ったみたいですね。あとは、おうちに帰ってみんなで食べましょうか」

「あいっ!」


ほんの短い時間だけれど、ゆーたんにとって、これが初めてのお外の世界だった。


お社に居た頃、お外の世界は怖いところだと言われて居たけれど、にーたんといっしょなら、全然怖くないんだ。


一緒に歩いた外の世界は、イロイロなものがあって、わくわくして楽しい。


少しずつ、少しずつ世界は広がっていくのだろう。


店先で揚げているコロッケって、なんて魅力的っ! ついつい買いすぎてしまうのよ。

そして、会社帰りにゲットしたコロッケは、休日に朝には、軽くトースターであぶってコロッケパンに。

千切りキャベツたっぷりに、中濃ソースが嬉しいですっ!


はっ!たべものの目がくらんでしまいましたっ! どうぞ、今年もよろしくお願いしますっ!!

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