-8- 物と心
いつぞやの短編集でも書きましたが(多過ぎて分かりません ^^)、物と心の豊かさは反比例する傾向にあるようです。要するに世の中に出回る物が少ないと、その物の価値が高まり、逆に今の世の中のように物が豊かになり過ぎれば、自然と人の心の価値が下がる・・という現象です。私の子供時代のように、かつてはバタ屋さんとか鋳掛屋さんという商売が存在しましたが、それも世の中が少ない物の価値を認める時代だったからでしょう。
桑木は思わなくてもいいのに、しみじみと思った。^^
『今は売れないからなぁ~』
桑木が思わなくてもいいのに思ったのは、ポイ捨てられた煙草の吸殻の葉を巻き直して売るという昭和三十年代のバタ屋の発想だった。当時、一箱に詰められた一本一本は、フィルターが付いていない両切りの煙草で、ポイ捨てられた煙草の表面の紙を取って葉を天日干しし、新しい紙に巻き直して売る・・という商売が成立していたのである。桑木が売れない…と思ったのは、フィルターが入手できないし、そんな煙草を買う人もいないだろう…と感じたからだった。第一、今の時代では化学的に作られた電子煙草という商品が販売されていて、煙草の葉を巻き直して売る・・というバタ屋の商法は成立しなかった。
『ははは・・・時代も進んだが、やはり無理だな』
桑木はが電子煙草の外箱が捨てられている現状を見て、人の心の価値が回復していないことに疎ましさを覚え、そう諦念した。
現代社会では物が豊かになった分、人が心で思う物への価値は下がってますね。残念ながら、修理するより買い替える時代です。^^
完




