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七並べ

 会議が終わっても。

 誰も立ち上がろうとはしなかった。

 静かなロビー。

 神父が座っていた椅子だけが空いている。

「……ねぇ。」

 姉御が口を開く。

「このまま部屋戻る?」

 誰も返事をしない。

「戻っても寝れなくない?」

 幼馴染が苦笑する。

「私は無理かも。」

「俺も。」

 主人公も短く答えた。

 少しだけ沈黙が流れる。

「あ。」

 姉御が何か思い出したように立ち上がる。

「そういえば。」

 探偵の腕を引っ張り部屋へ向かう。

 数分後。

 小さな箱を持って戻ってきた。

「これ。」

 机へ置く。

「トランプ?」

 主人公が箱を見る。

「暇だったから部屋探してたらあった。」

 姉御が笑う。

「せっかくだしやろ。」

 幼馴染も頷く。

「いいね。」

 主人公は探偵を見る。

「探偵は。」

「構わない。」

 短い返事だった。

「じゃあ。」

「七並べ!」

 姉御がカードを切る。

「探偵さんお願い。」

 探偵は無言でカードを受け取り。

 綺麗に切る。

 一枚ずつ配っていく。

「よし。」

 全員が手札を持つ。

 四枚の七が机へ並んだ。

「じゃあ私から。」

 姉御が八を置く。

「次。」

 主人公も一枚。

 探偵も迷わず一枚。

 幼馴染は手札を見つめた。

「うーん……。」

「どうした?」

 主人公が聞く。

「どっち出すか迷ってる。」

「好きな方でいいだろ。」

「後で困るかもしれないじゃん。」

「考えすぎ。」

「主人公は考えなさすぎ。」

 少し笑う。

 結局。

 幼馴染は一枚置いた。

「そこ?」

 主人公が首をかしげる。

「違った?」

「俺なら反対だった。」

「えー。」

 姉御が笑う。

「始まった。」

「主人公先生。」

「うるさい。」

 少しだけ。

 笑い声が戻る。

 カードが少しずつ並んでいく。

 姉御は迷わない。

 主人公は最短を選ぶ。

 探偵は無駄なく置く。

 幼馴染だけが何度も悩んでいた。

「あー!」

 幼馴染が声を上げる。

「止められた!」

 主人公が見る。

「誰だ。」

 探偵だった。

「探偵さん!」

「何だ。」

「絶対持ってるでしょ。」

「持っている。」

「出してよー。」

「出さない。」

「えぇ。」

 姉御が吹き出す。

「即答。」

「何で?」

「勝つためだ。」

「容赦ないなぁ。」

「勝負だからな。」

 探偵は表情一つ変えずカードを置く。

 主人公が苦笑する。

「らしい。」

「もう。」

 幼馴染は頬を膨らませる。

「ゲームくらい優しくしてよ。」

「それは別問題だ。」

「真面目。」

 姉御が笑う。

「探偵さんらしいね。」

 それから数分。

「上がり。」

 姉御が最後の一枚を置く。

「一番!」

 嬉しそうに笑う。

「またか。」

 主人公が肩をすくめる。

「今日は調子いい。」

 姉御は得意そうだった。

 その後。

 探偵。

 主人公。

 幼馴染の順で上がる。

 最後のカードが机へ置かれた。

「終わり。」

 探偵がカードをまとめる。

 幼馴染が大きく息を吐いた。

「疲れたぁ。」

「ゲームで疲れるのか。」

 主人公が笑う。

「疲れるよ。」

「探偵さん全然容赦ないし。」

「止められっぱなしだった。」

 探偵は静かにカードを箱へ戻す。

「七並べは止めるゲームだ。」

「勝つなら当然止める。」

「理屈は分かるけどさぁ。」

 幼馴染が苦笑する。

「もうちょっと手加減してよ。」

「しない。」

 即答だった。

 一瞬静まり返る。

 姉御が吹き出した。

「あはは!」

「探偵さんらしい!」

 主人公も思わず笑う。

「確かに。」

 探偵は首をかしげる。

「何かおかしいことを言ったか。」

「そこだよ。」

 姉御が笑いながら答えた。

 その笑いにつられて。

 幼馴染も。

 主人公も笑う。

 ロビーに。

 久しぶりの笑い声が響いていた。

「じゃあ。」

 姉御がカードを持ち上げる。

「次はババ抜き!」

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