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それを確認したあとで、ぼくは再び歩き始めた。
幸いなことに雪はそれほど勢いを強くしなかった。真っ暗な地面の上に雪が降り積もることもなかったし、視界を遮られることもなかった。ただ、その雪の冷たさは確実にぼくの体力を削っていった。そのせいでぼくはある程度歩いたところで足を止めて、体を丸め、体の熱をこれ以上失わないように努力をする、という行為を繰り返さなければならなかった。それはとても歯がゆい行為だった。……だけど生きていくためには仕方のないことでもあった。
体力にあまり自信のないぼくにはそれは辛い経験だった。
目を閉じると、かなりの眠気に襲われるようになった。油断すると今すぐにでも眠りについてしまいそうだ。だけどそれはできない。星を見つけるまで眠らないということもぼくは睡蓮さんと(やっぱり、大きな声で)約束していた。だからぼくは目を開けた。眠かったけど、……『ちゃんと、目を開けた』のだ。
それからぼくは歩きながら友達の古代魚のことを考えた。




