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 やがて列車はぶおーーーーーー!! という獣の咆哮のような大きな音を上げた。加速度が弱まり、列車の速度が緩やかになっていった。それから少しして、きーーーーー、という甲高い悲鳴のような音が聞こえた。がたん、と一度古風な客車が揺れた。遠くでぷしゅーーー、という蒸気の噴き出す音が聞こえた。

 ……列車が駅に到着したのだ。

「さあ、決めてください。このままわたしと一緒に旅を続けますか? それともこの駅できみは列車を降りますか?」と睡蓮さんが言った。ぼくは睡蓮さんの目を見つめていた。大きくて綺麗な目。睡蓮さんの目はとても綺麗な黒色をしていた。ぱっちりと開いた形の良い大きな目だった。ぼくの姿がまるで小さな鏡でも覗きこんでいるかのように、その目の中に映り込んでいた。ぼくはその目の中にずっと居続けたいと思った。きっとぼくがここで残ります、と選択すれば、睡蓮さんはぼくを優しく抱きしめてくれて、ぼくはあの大きくて柔らかい睡蓮さんの気持ちのいい胸の中で、あの睡蓮さんのとてもいい匂いの中で、ぐっすりと安らかな眠りにつけることだろう、とぼくは思った。……それは間違いないはずだ。

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