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「このままなにも選択しないと、列車は走り出してしまいますよ? 時間は、きみを待ってくれたりはしないのです。なにも選択しないということは、なにも選択しないという選択肢をきみが選んだということです」と睡蓮さんは言った。
ぼくは、その睡蓮さんの言葉を聞いて『選択をした』。「『……ここで降ります』」とぼくは睡蓮さんにそう言った。ぼくの答えを聞いた睡蓮さんは少し前にぼくに自分の夢を聞いたときのように、ううん。そのときよりも、とても驚いた様子でその大きな目を見開いた。でも少しして、睡蓮さんは一人、なにかに納得したように小さくうなずくと、それからとても優しい顔をした。ぼくを見る睡蓮さんの顔は笑っていた。
「そうですか。残念です」と睡蓮さんは言った。でもその言葉とは裏腹に、睡蓮さんはあまり残念そうには見えなかった。
睡蓮さんは赤色の生地の席から立ち上がると、真っ白な色をした(まるで本物の雪のような)美しい形をした自分の右手をぼくの目の前に差し出した。「せめて、客車の出入り口まで送らせてください」と睡蓮さんは言った。ぼくは睡蓮さんの手を取ると、席から立ち上がって、「はい。よろしくお願いします」と睡蓮さんに言った。




