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「迷子はどこにでもいけるし、なんにだってなれるわ。自分を拘束するものがなにもないからね。それは自由と表現できる状態でもある。でも特定の目的を持たないせいで、その逆に、どこにもいけないし、なんにもなれないっていう風に表現することもできるわね」とにっこりと笑って睡蓮さんは言った。ぼくは黙って睡蓮さんの話を聞いていた。
「きみの夢はなんですか?」と睡蓮さんはぼくに質問をした。「『優しい人』になることです」とぼくはすぐに睡蓮さんに答えた。睡蓮さんは瞳を大きくして、それから瞳を閉じて数秒間、頭の中でなにかを思案してから瞳を開けて、「うん。それは立派な夢ですね」と笑いながらぼくに言った。
……、がたんごとん、と列車の走る音が聞こえた。
「猫は、好きですか?」と睡蓮さんはぼくに質問を続けた。「嫌いです」とぼくは答えた。すると睡蓮さんはなぜかくすっと笑った。ぼくは笑っている睡蓮さんの顔を見ながら、なぜ自分の答えを聞いて睡蓮さんが笑っているのか、その理由を考えてみたのだけど、答えを見つけることはできなかった。
「ごめんなさい」と睡蓮さんは言った。(そんなぼくの心が顔に出ていたのだろう)
それから睡蓮さんはこほんとわざとらしい咳払いをして、真剣な表情になってぼくを見た。




