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「ぼくのため?」とぼくは言った。「そう。きみのためさ」と古代魚は言った。古代魚はこほん、と小さな咳払いをした。そして今までのような明るい表情ではなくて、とても真剣な表情になってぼくを見た。
「いいかい。よく聞いて。きみはこれからこの暗い海の中でひとりぼっちになるのが嫌だって言ったね」
「うん」とぼくは古代魚に相槌を打った。
「確かにぼくがいなくなればきみはこの海の底で一人ぼっちになる。一時的にね」「一時的?」「そう一時的」一時的、とぼくはその言葉を頭の中で繰り返した。
「迎えが来るんだ。きみを迎えに一人の『女性』がこの場所にやってくる。その女性はとても知的で清潔で美しい姿をしたとても魅力的な女性のはずだ。でも、きみはその女性の誘いに乗ってはいけない。その人について行ってはだめなんだ。その女性の言葉をきみは断る必要がある。これはある意味、きみの運命なんだ。なぜならきみはきっと、ぼくに出会ってこの話を事前に聞いていなければ、その女性の誘いを断るということはしなかったはずなんだからね。だからこれは奇跡でもなんでもない。当たり前の話なんだ。きみは自信を持ってその女性の言葉を断るべきだ。それがきみのやるべきこと。きみの本当に進むべき道の先なんだよ。ぼくの言っていること、理解してくれるね?」




