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夢を見ている。
夢を叶える。
私は私の見ている夢の中にいる。
じゃあ、現実の私はどこにいるの?
そもそも、現実ってなに?
なんだかあいまいに思えてくる。
私は今本当にここにいるのだろうか?
かれんさんのとなりにいて、真っ白な雪の積もった大自然の中で、満天の星を見ながら、かれんさんが絵を描くところを見ている。
これは現実だろうか?
夢なんじゃないのだろうか?
私にそんなことができるだろうか?
一人で遠いかれんさんのお家までやってきて、奇跡みたいに雪がやんで、星が見えるようになって、かれんさんが私のことをちゃんと覚えていてくれて、私のお話を聞いてくれて、優しく笑ってくれている。
これは全部、私の見ている夢なんじゃないのだろうか?
あすみはだんだんと不安になってきた。
でも、そんな考えをすぐにあすみは心の中からかき消した。
ううん、だいじょうぶ。
私はちゃんと現実のなかにいる。
だって、そこにはかれんさんがいるんだから。
かれんさんは私の夢じゃないんだから。
かれんさんは、かれんさんなんだから。
あすみはかれんを見て、安心する。
かれんさんの描いている小さな星の絵。
あの素敵な絵は、もし私が夢を見ているのなら、きっと空想することなんて(たとえ夢であったとしても)できないと思った。(だからあの小さな星の絵が、ここが私の見ている夢じゃないって言う証拠なのだ)
「よくわかりません。ごめんなさい」とにっこりと笑ってあすみは言った。
かれんはあすみを見て、ちょっとだけ黙ったあとで、「私こそ、ごめん。あんまり面白いお話じゃなかったね。あ、そうだ。夢のお話。あすみが見たって言う私の夢。秘密だって言ってたけどさ、やっぱり教えてよ。どんな夢だったの? どうしても知りたい」とかれんはにっこりと子供みたいな顔で笑って言った。




