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354 旅立ちと新しい家族。

 旅立ちと新しい家族。


 その弱々しくやつれた白い子猫が優しい放送局に迷い込んできたのは、強い雨の日でした。

 ベルとサラはその白い子猫を助けました。

 サラはその白い子猫にひだまりという名前をつけました。

「ひだまり。あなたはこれからわたしたちの新しい家族のひとりですよ」と言って、ごはんを食べて、元気になりはじめたひだまりを抱っこして、サラは笑いました。

「家族?」と小さな顔をななめにしてベルは言いました。

「はい。家族です。わたしたちは家族。ね、そうでしょう? ベル」とベルを見てサラは言いました。

 そのサラの言葉を聞いて、ベルはとっても嬉しくなりました。


 数日後に、優しい放送局にある通信が届きました。(はじめての返事の通信です。みんなびっくりしました)

 それは『SOSの通信』でした。

 点だけの通信です。

 でも、はっきりとそこにまだ生きている人間かいるとわかる通信でした。

 SOSを通信は繰り返していました。

 場所を。

 助けてと、繰り返していました。

 サラには記憶がなくて、ベルにはあんまり残りの時間がありませんでした。

 ひだまりは子猫で、誰かがいなければ、生きていくことはできません。

 それでも三人で旅に出ることにしました。

 通信のところに。

 それは、とても危険な旅でした。


 ベルとサラは優しい放送局で最後になるかもしれない放送をしました。

 ひだまりも放送の邪魔をしながら、サラの膝の上で、楽しそうに放送を聞いていました。

「みなさん。こんにちは。優しい放送局です」とベルとサラは声を合わせて言いました。

 希望を込めて。

 勇気を込めて。

 愛を込めて。

 呼びかけました。

 そして、音楽をかけました。

 一時間ではなくて、一日中かけました。

 朝も、昼も、夜も。

 音楽は鳴り続けました。

 そして、夜が明けて、朝がきて、放送室で目を覚ましたベルとサラが「また、みんなと会えることを楽しみにしています」と二人で一緒に明るい声で言って、放送は終わりました。


 それから、長い時間が流れました。優しい放送局からの放送は今のところありません。

 音楽も流れていませんでした。

 三人はどうなったのでしょうか?

 この崩壊した広い世界のどこかに消えてしまったのでしょうか?

 でも、そんなある日の夜。

 とても小さな電波を壊れかけの通信機がとられました。

 それは、音楽でした。


「こんばんは、優しい放送局です。みなさん、この放送が聞こえますか?」

 ……、それは小さな子供たちの声でした。(にゃー、と小さな放送を邪魔する猫の鳴き声も聞こえました)


 わたしたちは生きています。だから、これからも生きていきましょう。一緒に。


 君は壊れたロボットくん。優しい放送局。 終わり

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