342 光の差し込むところ わたしときみが出会ったところ
光の差し込むところ
わたしときみが出会ったところ
ある日、タタはいつものように影のお城の中庭の屋根のあるところから、一年中雪の降り続いている影の世界の空をときどき見ながら、カカと一緒にのんびりと過ごしていた。
白くて丸いテーブルの上には本が置いてある。
あれから、タタはよく本を読むようになった。
にこはタタに本を読むことのおもしろさを教えてくれた。(偶然だったけど)
カカはタタのそばで、タタのことを守るようにして、うずくまったままで、気持ちよさそうに眠っている。(カカはにこのことが大好きだから、もしかしたらにこの夢を見ているのかもしれない)
タタはそっと本を閉じる。
奇跡。
にことの出会いはそう。
わたしたちにおこった奇跡だったのだ。
わたしとカカにお友達ができる、神さまのくれた奇跡。
にこ。
こんなわたしとお友達になってくれてありがとう。
カカとお友達になってくれて、ありがとう。
とタタは笑顔の素敵な、太陽みたいな生きているあったかい人間の女の子、にこのことを思い出して、雪の降る影の世界の空を、にこの落ちてきた、あの日の(とってもおどろいた)空を見て、にっこりとにこみたいな顔で笑った。
タタはまた本を開ける。
本を読みながら、ときどきふっと思い出したようにタタは空を見る。
どこかで、またあのおっちょこちょいの元気な人間の女の子が間違って、お母さんとはぐれてしまって、影の世界に落っこちてこないか、なんだか心配になって、つい空を見てしまうのだった。
そこには影の国に迷い込んでくる人間の女の子はどこにもいなかった。
しんしんと、真っ白な雪が、ゆっくりと降っているだけだった。
そんないつもとかわらない影の世界の薄暗い雪の降る空を見て、「よかった」とふふっと笑って、タタは言った。
お母さん。大好き。
はずかしがりやの影の世界の王女 リトルプリンセス タタ 終わり




