334 心と体。(わたしときみ)
心と体。(わたしときみ)
にこの様子に変化があらわれはじめたのは、それからすぐのことだった。
にこはみるからに、だんだんと元気がなくなっていった。
それは寂しいから、とか、お母さんに会いたいからとか、そういう心の元気ではなくて、(もちろん、そういうこともあったとは思うけど)体の元気のことだった。
ふらふらしているにこはどこかぼんやりとしていて、あまりうまく(あんなに元気にずっと動き回っていたのに)体を動かすことができなくなった。
「たたちゃん。かか。わたしは大丈夫だよ」とえへへと笑っていたけど、にこは全然大丈夫そうじゃなかった。(ほんのりと赤い色をしていた顔も、今はその色を失って、だんだんと青白っぽくなっていた。……、まるで、影の王女さまであるタタのように)
そんな真っ白なふかふかのベットのなかで横になっているにこをみて、タタもカカもすごく心配そうな顔をしていた。(でも、こんなときにどうすればいいのか、それが全然わからなかった)
いつものように夜の色をした豪華な衣装のドレスを着ているタタはカカににこのことを見守っていてもらっている間に、ドレスの長いスカートのすそを指先でつまむようにしてもって、とことこと長い螺旋階段をのぼって、影のお城の図書室へと言って、そこでいろいろと生きている人間のことについて調べものをした。どこかににこを元気にするてがかりがあるはずだと思った。タタはお友達のにこに、はやく元気になってほしかった。
分厚い本を読んでいるときに、ぽつぽつと小さな水玉が本の古いページの上に落っこちた。それはいつの間にか泣いていた、タタの流した大きな大きな、涙のつぶだった。




