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タタが夜と同じ色をした真っ黒なドレスのスカートをおさえながら、走るようにして、影のお城の一番高いところにある自分の部屋から、カカと一緒に階段を下りて、そして、影のお城の中庭のところにまでやってくると、そこには『一人の生きている人間の女の子』がいた。
はじめ、それが生きている人間の女の子だとタタはすぐにはわからなかった。なにしろ、生きている人間の女の子に会うことは、今が生まれて初めてのことだったからだ。
女の子は眠っているのか、影のお城の中庭の床の上に横になって、じっと目を閉じている。
このころには走るのが疲れてしまって、タタはいつものように、カカの体の上に横座りで乗るようにして移動をしていた。
タタはカカと一緒に女の子のすぐちかくまでやってきてから、しばらくの間、カカの体の上に乗ったままで、ゆっくりと女の子の周りをぐるぐると回るようにして、空から落っこちてきた女の子のことを、じっと観察していた。
とても綺麗な顔をした女の子だった。
背丈は小柄で、肌は白くて、着ている洋服は、タタにはよくわからない初めて見る衣装の服装だった。
年齢は何歳くらいなのだろう? タタと同じくらいの年頃に見える。そうすると、だいたい十歳くらいになるのだろうか? (よくはわからないけど、それほど間違っているようには思えなかった)
そんな風にして、じっと初めて見る生きている人間の女の子を見ながら、タタはカカのたくましい背中の上でずっと難しい顔をしていた。




