18話 マルルの増加計画と鉱山
朝起きて腕の中を見ると、そこにスライムマルルが居た。
そして机の方を見ると、そこには人型マルルが居た。
「マルル、おはよう」
「ご主人様、おはよう」
どうやら、僕を起こさないようにスライムマルル外側を残して、中身だけ抜け出したようだ。
「マルルは何の本を読んでるの?」
「ドラゴン大全読んでる」
ベッドから出て本を覗き込むと、そこは火竜のページだった、
「マルルは火竜が好きなのか?」
「うん、かっこいい」
「僕もドラゴンはかっこいいと思うよ」
「マルルもドラゴンになりたい」
種族を変えるのはできないが、スライムの変形で形くらい再現できるはずだ。
「マルル、変形でドラゴンになってみたらどうだ?」
「ドラゴンになるにはメタルスライムだと強度が足りない。 それにそもそもスライムの量が足りない。 ちゃんとしたドラゴンのためには、スライム30万匹分必要」
ちょっとした提案のつもりで聞いたが、マルルはすでにしっかり考えていたみたいだ。
それにしても30万はかなり多い。でも、出来ないわけではない。昨日聞いた情報屋が言っていた事をやってみてもいいかもしれない。
「マルルは魔物を吸収して大きくなれるんだよね?」
「うん」
「じゃあ、片っ端から吸収して、大きくなって数増やせないか?」
「それはできない。 コアが足りなくなる」
そうか、分裂にはコアが必要なのか。
「コアは増やせないのか?」
「魔石があればコアができる」
魔石は魔力濃度の高いところで魔力が結晶化してできる。
強力な魔物の体内や魔力濃度の高い洞窟の中、さらに伝説級の魔物の近くにできる。
どれも危険が伴うため、魔石はかなりの貴重品だ。
「魔石をどうすればコアになるんだ?」
「ほっとく」
「え?」
「魔石がボロボロになると、コアになって周囲の水や物質を集めてスライムになる」
「もしかして、そうやってスライムが生まれるの?」
「うん」
今簡単に言ったが、長年発見されなかったスライム誕生の秘密を聞いてしまった。
他の魔物は繁殖で増えるが、スライムはそれができない。そのためどうやって増えているのか永遠のなぞとまで言われてる。
でも、魔石があれば自然発生すると言うなら発見できないのも頷ける。
「でも、はじまりの森にはスライム以外はゴブリンしか居ないけど、魔石は出るのか?」
「魔石は出ないけど魔粉が出る」
魔粉は極小サイズの目に見えないほど小さな魔石のことだ。あると分かっているが用途もないし、回収できないので無視されてる。
「魔粉でもスライムになるのか?」
「魔物の死体の中の魔粉は、腐っていく死体の中で集まって小さな魔石になる。 そこからスライムが出来る」
スライムの成り立ちを聞いただけでびっくりだが、さらに魔粉が魔石になるなんて…。
そしたら、みんな死体を捨ててるのは、魔石を捨ててるようなものなのか。もったいない。
この事実を発表すれば、国王から勲章でももらえそうだ。発表しないけどね。なぜ分かったなんて聞かれて、マルルに聞いたって言うわけにもいかないしな。
「ところでマルルはなんで知ってるんだ?」
「自分の生まれ方はなんとなく分かる」
「そんなもんなのか」
人間はそんなの親から聞くが、スライムは元から知ってるのか。親が居ないから、本能的に知ってるのかもしれないな。
「まあ、本題に戻ろう。 魔石をすぐにコアにする事はできないのか?」
「魔石をコアとくっ付ければ、1時間くらいでコアに変わる。 魔粉の状態だったら1分で変わる」
「じゃあ、強い魔物を狩って、魔物も魔石も全部吸収して、数を増やそう。 それならできるよね?」
「できる」
問題はどこに向かってるマルルに狩りを担当させるかだ。
一番数が多いのは東の馬車状態のマルルだが、北の帰れずの洞窟はおそらくスライムの数が必要になる。だから南のバイブレートスライムのところに向かってる450匹を分けよう。
「東の馬車の内、南に向かってるマルルを、150と300に分けて300匹に狩りをさせて、150匹はそのままバイブレートスライム探しに行って」
「わかった」
これでスライムの数は増やせる。あとはメタルスライムだと強度が足りないと言っていたが、
「マルル、ミスリル鉱山は後どれくらいで着く?」
「1時間くらい。 妖精の滝に行ってたスライムは明日の昼くらい」
「じゃあ着いたら教えてくれ。 僕は本読んでるね」
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約1時間後、マルルは鉱山に着いた。
そして、人型スライムを2人作り、僕とマルルが1人ずつ動かす。
「警備が厳しいな」
鉱山はいくつも穴が開いているが、そのうち警備が居るのは15箇所。おそらく警備が居る場所がミスリルが取れる場所なので、居ない場所に行っても意味が無いと思う。
その中でも1番大きく、警備が5人もついてる場所がある。そこは人の出入りも激しい。
「マルル、ロープみたいになって端っこから進入できないか?」
「できるけど、トンネル作った方が目立たないよ」
「それならトンネル作ってくれ」
スライムマルルが壁際に集まり、ドロドロと変形していく。
見た目は岩で、壁に張り付いてるため、一見何も無いように見える。
だが、よく見ると先端が動いている。外側は動かさず内側だけ移動してる。ロープというかトンネル作ってると言った方がいいだろう。
その後、人型の僕たちもトンネルを通り、鉱山の中へと進む。
鉱山の中は薄暗く、よく見えない。
普通はたいまつでも持ってくるようだが、そんな事をしたらバレバレだ。
『マルル見えるか?』
『暗視があるから見える』
そういえばマルルにはそんなスキルがあったな。
『それ共有で分けてくれないか?』
『共有しなくても体はマルル』
そう言うと、目の前が明るくなった。正確には明るく見えるのだろうが、どっちでもいい。
たまに人とすれ違うが、気付かれてはいないようだ。
その後、しばらく歩くと、分かれ道があった。
とりあえず人が多い方がミスリルがある場所だろう。ミスリルがあるならばミスリルスライムも居るかもしれない。
『人が多い方に行こう。 そっちの方がミスリルスライムが居る可能性が高い』
『わかった』
そしてしばらく進むと、どんどん人が増え、ミスリルの採掘現場にたどり着いた。
そこでは、男たちがツルハシを叩きつけ、壁を削っていた。
とりあえず、無視して先に進む。
そして、その先には…ロックウルフが居た。
なんとか日間ハイファンタジー6位まで上がりました!
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