エピローグ
そこからの数曲は、どれも素晴らしかった。アップテンポな曲があり、バラードもありで。最後はラブソングで、大きな愛が歌われていた。歌詞は私と彼女のことを具体的に歌ったわけじゃないけど、そんなことはどうでもいい。ステージから私だけのために、彼女は歌ってくれたのだ。置いてけぼりのカップル客は気の毒だったけど、おかげで私は気持ちよく帰宅することができたのだった。
ところで後日談なのだけど。ライブから何日か経ったころ、私と彼女は、あのときに放置されていた一組の男女客と焼肉屋で話すことになった。そんなにお金がない私と彼女が奢られる形で、あのときの二人はカップルではなく、ライブを視察に来ていたレコード会社の人だそうだ。
「いいじゃないですか、同性のカップルって。音楽業界の怖い人が貴女たちを別れさせる? 今どき、そんな暴力団みたいな人、いませんって。少なくとも私どもの会社は、貴女たちの仲を応援します。一緒に住む場所を探してるなら、そちらも手伝いますよ」
「エモいわぁ、貴女たちの関係。エモかったわぁ、あのライブハウスの光景。期待してるわよ、これからプロになる新人さん」
「ええ、任せてください。十年後と二十年後には、ドーム球場でメモリアルライブをしてみせるんで。彼女のことも可愛がりながら、頑張ります」
わいのわいのと話が弾む。私はなにもできないんだけど、彼女が私を必要としてくれているなら、付いていく所存だ。それにしても、お肉が美味しい。私はひたすら静かな人となって、大いに食事を楽しませてもらった。
じきに六月が終わる。私と彼女の、熱くて輝かしい夏は、きっと何度も訪れる。




