『握手』
ハンスは遠くからマックスを見ていた。
鉄鋼兵団の噂が差別の意味の呪われた部隊から畏怖の念も込められたバケモノ集団へと名前を変えた頃。
思い切って鍛錬終わりにマックスの元へ会いに行った。
「鉄鋼兵団長殿!鍛錬お疲れ様です!」
と敬礼すると、未だ慣れぬ敬礼で
「ハンス部隊長殿!お疲れ様です!なにかございましたか?」
と返ってきた。
「いえ、同じ大隊のアイン中隊長と連携する事が増えるのでご挨拶に伺いました」
「大隊?失礼ですが、元傭兵ですので王国軍の事がわかりません」
「失礼致しました!大隊は2つの中隊編成の大枠と言う意味です!大隊長の命令で我々は動きます!」
「ご説明ありがとうございます!出世されたのですね。おめでとうございます」
「あ、ありがとうございます。では、ご挨拶だけでしたので、これで」
「あ、あの……」
マックスから呼び止められた。
「これから生死を共にするので、是非握手を……」
「失礼致しました。よろしくお願いいたします!」
マックスの握手は力強かった。
太く濃く強く、まるでドワーフと握手しているようだった。
そこまで鍛え上げた、マックスの努力が滲み出る。
そんな握手だった。
「ハンス中隊長殿……」
マックスの顔はバイザーで隠れていたが、声が震えていた。
「努力なさったのですね……!」
その言葉で今までの努力を認められた気がしてハンスは目頭が熱くなるのを感じた。
「こちらのセリフです……!」
それ以上はお互い話せず。
「では、失礼致しました!」
ハンスは涙を悟られぬよう後ろを向き、立ち去った。
アインとミルはお茶を飲みながら遠目で見ていた。
「複雑なんですね」
「ああ、だから2人の問題と言ったろ?」
「握手しただけじゃないですか」
「それだけで分かることもあるんだよ」
「そんなもんですか」
「そんなもんですよ」
「マックスさん、あんな風に敬語使えるんですね」
「ハンス中隊長の兄だからな、教育の成果だろう……ところでお前さんは何で帰らないんだい?」
「マックスさんの観察が趣味なので」
「いい趣味してるぜ」
アインは少し呆れながら言った。
「ところで出世したんですか?」
「ああ、中隊だから兵が増えた。より大所帯になったって事だな。鉄装備もこれからもっと必要になるぞ」




