無自覚な嫉妬と雑な強盗
———なんや、面白ぅない。
「渇探流君、これ、美味しいですよ」
「そうなのか?一口———んぐっ」
「……ほら、美味しいでしょう?」
渇探流はいきなり突っ込まれたフォークに驚きながらも、そのままもぐもぐと咀嚼して、嚥下した。
そしてそのまま———普通に、ウィルフレッドに話しかける。
「いきなりはやめろ、ビックリするだろ……ウィル」
「美味しくなかったですか?」
「いや、うまかったけどよ……そういう問題じゃ———んぐっ」
「では、もっとあげます」
「…………………」
いや、あんさん、前は士道はんにそんなことされたら、撃っとりましたやろ?なんで大人しく食べさせられとるん?距離感おかしないですか?前々から距離感がおかしいとは思うてましたけれども!!
なんと言うたらええんやろか、こう、二人の世界にうちという『異物』が混ざり込んではるようで———大変、居心地が悪い。
そして、何故かむかつく。
このイライラの意味がなんなのかわからなくて、黄船はニコニコと表面上は笑いながら———コーラを、握りつぶした。
「きっ、黄船!?なんだ!?どうした!?」
「渇探流君、濡れます。離れて下さい」
「いやあ———なんや、いつぅの間にか、あんさんら仲良うなったんやなあって思うと———感慨深い言いますか?」
「どんな感情なんだ!?あと別に仲良くなった覚えはないぞ!?」
「……仲良くはなったでしょう?『カトゥール』」
「ばっ……!!」
ボンッ!と、渇探流の顔が赤くなった。
それを見て、黄船の目が細まる。
———ははあ。なるほど?
「なんや?『医里渇探流ぅ』に執着してた士道はんは、『今』の、渇探流はん本人を見るようになった———って、ところどすか?」
「……お前には、関係ないだろう」
「ええーーー?関係ないなんて寂しいこと言わんとってぇやーーー。なんや、そないならうちも『カトゥールはん』って、呼びましょか?」
「……ちょっ、ちょっと待ってくれ……!!」
渇探流は、茹で蛸のように赤くなった顔を両手で覆って、俯いてしまった。
その隙に———ウィルフレッドと黄船の間で、火花が散る。
「……簡単に、『カトゥール』なんて、呼ばないで頂けますか?」
「なんでや?あんさんが呼んではるんやったら、うちがそう呼んでもええでっしゃろ?なっ?『カトゥールはん』」
「……名前を連呼しないでくれ……!!」
ウィルフレッドは舌打ちをして、小さく「誰でもか」と、呟いたのを、黄船は聞き逃さなかった。
———はぁん?誰でもやあらへんやろ。あの白石響言う刑事に呼ばれた時は、こんな反応、せぇへんかったで?
つまり———うちは、『そっち側』やって、ことやで、士道はん。
黄船は、ニコニコと笑いながら、渇探流の頭をつつく。
「カトゥールはん?かわええお顔が見えまへん」
「……からかうな、黄船……!!」
「アッハハ、年下にからかわれて真っ赤になっとるカトゥールはん、かわええどすなあ」
「はっ???」
ガバリと、渇探流は顔を上げた。
「……年下……?」
「?せやで、渇探流はん、20歳でっしゃろ?」
「あっ、ああ……黄船は……?」
「うち、17歳どすえ」
空気が、凍った。
「———じゅっ、じゅう……なな……さい……??」
渇探流は、宇宙を背負った猫になってしまった。
そのあと、何を思い出しているのか、顔が赤くなったり、青くなったりと忙しなく動いたあと———絶叫した。
「お前っ!!そんな!!人生三周目みたいな態度しといて!!17歳なのかよ!?」
「えーーー?そんなに意外どす?」
ニヤニヤ、と、笑いながら、黄船は渇探流を眺めた。
渇探流は青くなった後にまた赤くなった顔で、黄船に詰め寄る。そして———コソコソと、ウィルフレッドに聞かれないように、耳打ちしてきた。
「その……俺が黄船の前で大泣きしたことは……誰にも話してないよな……?」
その話を聞いて、黄船はにんまりと笑う。まるで、チェシャ猫のように。
渇探流の顔色は、また青くなっていた。
「どないしましょう?———渇探流はんの、態度次第でっかな?」
「黄船ぇ……!!それは、どういう……!!」
「金を出せーーー!!有り金全部出せーーー!!でないと、全員殺ーーーーす!!」
———渇探流が問い詰める前に、ものすごい雑に、強盗が店内に入ってきた。




