初任務3
「おい。いくつだお前。」ヒートさんが男女に声をかけていた。
俺たちと年も変わらない人たちだ。勧誘しているのかなと思った瞬間男の方が燃え出した。
悲鳴をあげる女の子をヒートさんが押さえつける。
ヒートさんを助けようと慌てて近づくとヒートさんは女の子に乱暴していた。
「ちょ、何してんすか・・・。」
「あん?何って・・・あーまだわかんねぇか」
ひどくバカにした態度だ。
一緒にいた男の子はすでに黒く炭化していてすでに人の形を保っていなかった。
泣きながら女の子が助けを求めてくる。
「こんな下界に来たんだ。楽しみがないとやってらんねぇだろ?」
黙れよ。何か言おうとしたが女の子はヒートさんを見て何か諦めた表情をしていた。
俺はレイトさんの方をみた。
レイトさんも同じだった。違うのは女の子にアトラスへ連れて行くからと言っていたが、
俺はそれが嘘だとすぐにわかった。女の子はすがるようにみえた。ひどい吐き気を感じた。
そのとき、大きな霊力の反応を感じた。崩れた建物の方からだ。
「・・・行ってきます。」俺がそう言うと、
「な。こいつを連れてきて正解だったろ?」
「あの反応は規定値以上だ。お前ならやられることもないだろうが、失敗は許さん。」
少しでもこの場を離れたかった。2人の話を最後まで聞かずに駆け出した。
霊力の反応は一瞬だったが、すぐに見つけることができた。
深いフードのような帽子をかぶっていた。違和感を感じ、正面に回り込んでフードをとった。
赤い髪をした少女だった。
「なに?さわらないで」少女はフードを被り直しつつこたえた。
「あ、えっと、俺九条渚って言うんだけど」
少女は逃げ出した。慌てて腕を掴む。
「さわらないで!」さっきよりも強い拒絶。心が折れそうになる。
「あのさ、アトラスって知らない?」なるべく優しい声で問いかける。
「・・・離して。」少女の目がこちらをにらむ。
「逃げるから・・・話を聞いて欲しくて。」
「逃げないから。あんたも暴力??」そう言われて手を放した。
少女は手を振りながらこちらを向く。
「で?なに?」
「俺霊力の高い人間をアトラスって国に勧誘しているんだ。えーと、怪しいものではなくて・・・」
ちゃんと勉強しておけばよかったとひどく後悔した。言葉がうまくでてこない。
「その赤い髪とかさ、強い霊力がある証拠だよ。霊障って言うんだ。」
髪について触れると少女の表情から感情が消えた。
「あんたとなんか行かないから。」はっきりそう言われた。
「アトラスに行けばここよりいい暮らしができるよ。3等国民として働けるし、君なら2等国民にもなれる。」
そう言うが表情は変わらず、「ゲスの仲間なんて願い下げよ。」そう言いながら彼女は歩き始めた。
あいつらのせいだ。内心で悪態をつく。
「でも、戻ったら怒られるんだろうな。」少女を追いかけるべきか悩んだ。
が、一度戻ることにした。勧誘のやり方をもう少し考えるべきだ。
そう思ってさっきの広場まで戻ってきた。