呪術師の弟子
24話 呪術師の弟子
「さっき話した古代に降りた神の一柱にログネルという名が……」
「マスターそれじゃあいつは古代の神」
「いやいや、はやがてんは禁物。神が悪魔のマネゴトをしますかなお嬢さん。ログネルの名をかたっているともかぎらんしな。」
「だよね。あの悪魔、どことなく小物ぽいものね。人間に力を与え手下にしたり」
「それで気になる。はじめの魔女、次のロバート、そして坊主頭の大男。まだ、いるかもと、フランシーヌが」
「言う。でしょ。あの朋ちん。気になってたんだけどそのフランシーヌって誰?」
一度下を向いてた朋が、顔を上げ。マスターの方を見た。あたしもマスターを。
マスターは無表情だ。
「口グセ、ただの朋の口グセ」
「そう。でも、なんでその名前? 知り合いにフランシーヌって人がいるの?」
「……」
「クロエさん、朋をいじめないでくれ」
「あ、べつにいじめたりは。ゴメン朋ちん。言いたくなかったら」
「フランシーヌは、朋の旧名」
わっ朋、言いたくなかったら言わなくてもいいのに旧名なのフランシーヌ。
「日本に来る前はフランシーヌ・ルネ……だった」
「あの、朋ちんはフランス人なの? それとも……国籍がないってホント?」
「まあ、いろいろありましてな。日本に来て朋は日本名に変えたんじゃよ。べつに悪いことはしていない気にせんでくれクロエさん」
マンション・パラディーススの中庭。
「それは偶然と言うか、なんというか。あのカフェのマスターはゼッド・リー氏なんですか」
「知っているんですか先生」
「はあ、私リー氏とは文通友だちでした」
「ブンツー?」
「今みたいにパソコンやスマホがない頃に手紙でやり取りしていたフレンドです。当時日本に居たコトは知ってましたが、まさかあそこに」
「先生は手紙の相手の顔を?」
「お互い知りません。ドイツと日本でしたから。私は別の日本の友人にリーさんのこと聞いて知りました。あの人は意外なオカルトマニアなんです。そして絵本作家でもある。彼が描いた絵本を私、持ってます」
「絵本のこと、クロちゃんなんか言ってた。ママーネさんがむかし見ていたと……まさか、先生、先生の持ってる絵本は、主人公が人形の話ですか?」
「そうだマナちゃん、なにか知ってるのかな?」
「あの、その本に朋さんが抱いている黒いぬいぐるみ出てきません?」
「いや、ぬいぐるみは、出てこないが黒いプッテというキャラが出てくる」
「それだ! 見せてくださいヤンケンシュタイン先生」
304。
「アジフ、まだ居るよ」
「ホッケよ。オレ、弟子にしてない」
「かわいそうよ。あんたを追ってわざわざ日本まで、それにあの時、道具を持ってきてくれたし」
「夜は冷えるから、中に」
わたしは、弟子志願のダニエルを部屋の中に手招きした。この子は、日本語も出来ずに日本まで一人でアジフを追って来た。
「奥様ありがとうございます(母国語)」
わたしが、大量に買ってきた賞味期限間近の割引きパンをあげると、アジフが来て取った。
「昨日の代金、ハラタ。もういらない!」
「いいじゃないの、あんたをしたってるんだから弟子にしてやんなよ」
「アクマハラう、ヤメた弟子いらない!」
「ソレは、わかるけど。パンくらいあげてもいいじゃない!」
「パン、オレ食う」
アジフは、袋を開けカレーパンを食べだした。
わたしはクリームパンを開けてダニエルにあたえると、それも取って口に入れた。
「あんた、なにやってんの!」
思わずラリアットをアジフの首に。アジフは、玄関から、奥のリビングまで飛んだ。
「わぁーお!」
ダニエルが驚いてわたしをおさえた。
おさえられなかったら、のびてるアジフに次の攻撃をするとこだった。
「ありがと、ダニエル。わたし、ついカアッとなると昔のクセが出るの。あ、日本語通じないんだっけ」
なぜか、わたしに土下座を何度もするダニエル。
「オレ悪いから、師匠をぶたないで(母国語)」
「ユカリ、いまだに腕落ちない」
「ええ、トレーニングは続けてるからね。アジフもタフだね」
立ち上がったアジフは、テーブルのホイップあんぱんを取り、玄関に来て。
「コレ食え、日本の美味いパンだ。食ったら明日、島に帰れ(母国語)」
「食いません、食ったら帰らねばならない(母国語)」
「ここで餓死する気か、許さん(母国語)」
「師匠が、悪魔祓いやめてもいいんです。師匠に教えを。師匠ほどの師は国にはいませんでした。師匠の術を習いたいんです(母国語)」
「……おまえ、機械いじりは好きか?」
「はあ、国で解体屋でバイトを(母国語)」
「壊すんじゃない、なおす方だ(母国語)」
「どちらもイケます(母国語)」
「じゃオレの会社で働け、生活費稼いで暮らせ。暇な時に呪術教える(母国語)」
「師匠!」
言葉はほとんどわからなかったが、なんか丸くおさまったようだ。
ダニエルがアジフの足に泣きながら土下座している。
つづく




