久能太郎と鹿嶋世泉
21話久能太郎と鹿嶋世泉
ボクがはじめて、あの人を見たのは、このマンションに入って三日目。
落ち着いたので。中庭を散歩していた時だった。
深夜2時半くらいだったか、止まっていた噴水が吹き出た。
ココを紹介してくれた友人は、あのマンションにはヤバイのが居るぞと言っていたので、来たなと思った。
吹き出る水の向こうに白い輝きを見た。
その時、こいつは悪い物じゃないと。
それから一週間。毎日同じ時間に噴水の向こうに現れた。
それは、人間ではないのは確実だったのに。
なぜか気を引かれた。
8日目、そいつは噴水の池を周りボクの方に来た。
「あなた、私が見えるのね」
女だった。ボクと同じくらいか、少し上。母親くらいにも、歳はちょっと判別出来なかったが、綺麗なひとだった。
「見える」
「どんな風に?」
「とても。とても……綺麗なひとに」
「あら、嬉しい。でも、今は魂だけで、普通の人には見えないし、霊能者なら光くらいにしか見えないのだけど。あなた私の人としての姿が見えるのね怖いわ。そんな人、はじめて」
「怖い?」
「ええ、私は昼間は人の姿で暮らしてるの。昼間会ったらどう見えるのかしら。ばればれね」
「多分、今みたいな光のかたまりみたいな……。人ではないとわかる」
「はあ、ソレあなた修業したわけでもないのよね」
「こういうの生まれつきです」
「怖いわぁ。でも、羨ましい」
「羨ましいィ こんなの怖い思いするだけです。あなたのような人は珍しい」
「私は千年以上前に修業し魂を人のかたちに変えられるようになり、生きてるふりをしてきた死人なの。ソレは厳しい修業の毎日だった。だから、生まれつきあなたのような霊能力がある人は羨ましい」
「そうですか。何も良いコトとかなかったですよ。子供の頃はウソつきと呼ばれたり、気味悪がられたり。ボクは人間が嫌いになりました。それにあなたたち霊も。何も出来ないのによってきて、頼われたりしても困るだけです」
「そうか。頼る奴もいるね。霊体になったら出来ないコト多いからね」
その後、彼女は二階の4号室に住み霊能者鹿嶋世泉という名で仕事してる人と知った。
生きているふりをして仕事もしている死人を初めて見た。
彼女は深夜散歩をしていると、ちょくちょく現れてボクをからかう。
未成年のボクが童貞だからとセクハラまがいなコトもしてくる。
怖い霊体だ。
しかし、彼女に言われ仕事をはじめた。
「事故物件鑑定人 久能太郎」
名刺まで作って持ってきた。
時々ヤバいヤツに出会うが、人も霊も彼女が助けてくれる。
広い意味でイイ同業者でもある。
そしてボクは唯一の癒し。
アイドル「焼肉定食」の動画を観て寝る。
多分また深夜に目が覚め散歩に行くだろう。
つづく




