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白銀の残光 -pLatonic Clematis-  作者: BatC
第三章
78/94

冬行

新年度ですね。


新卒の方々が社会に出る一方、今日はエイプリルフールという事で、そこかしこで笑えないジョークが飛び交う事になるかと思います。


私には特に関係もない事ではありますが……。


それから、前々話くらいから少しずつ書き方を変えています。これからも色々と書き方、文の纏め方をいろいろと試行する事により、段落の書き方その他が変わるかと思いますが、私の後学の為、ご了承頂ければと思います。





古来からこの国には蛮族と呼ばれる存在は有る。


その正体は単に文明の発達に遅れた山間部族だったり、街を差別で追われた獣人、魔族等の、その国では表立って生きられない者達であったり。


はたまたは単に食い詰めた人間が集まって、他人から物を奪う強盗と化した集団であったり。


勿論、この中で最も害を為すのは最後者だ。次点で獣人魔族の集団……別に獣人達が悪いのでは無く、そんな状況まで追い詰められた彼等の気性がよろしく無いというだけの事だが。


まあ、我々が広義で使う蛮族というのは、そんな存在である。生活圏の異なる文化的に遅れた存在だ。


ただ、アリエテ王国が南方征討に態々乗り出さずには居られなかった様に、蛮族の中にも非常に規模の大きな存在も有る……かつてアリエテ南部には強力な蛮族が居り、度々アリエテ王国所属の領地を荒らし回ることがしばしば見られた時代もあったという。


大国が重い腰を上げて本気になったのだから、そのしぶとさは相当なモノだったのだろう。


事前調査によれば、今回制圧する蛮族は獣人その他……悪さはあまりしていないが、この国における不穏分子というところだろうか。


「して?アレが噂のお姫様(・・・)か?……甲冑だけは立派だな」


「……人間の騎士なんてそんなもんだよー?あくまで実用じゃなくて国の権力の象徴……特に、この国(アリエテ)ではね」


雪降り積もる城壁上の一角、正門を見下ろせる尖塔の根元。


今回の依頼において実働するレズンと共に、一足早く姫様とやらをお目に掛かろうと待っていた訳だ。


「……そうか。で?お前から見て警戒するに当たりそうなのは居るか?」


するとレズンは少し考えて……。


「……一人、かな?あの姫さまの隣の男……あのアリエテ人」


視線の先にあったのは、恐らく甲冑を脱げば貧相な体つきであろう男、いや、少年とまだ言えるくらいの年齢か?


確かによく見れば明らかに雰囲気が周りのそれとは違う……張り詰めているというか、やや過剰なまでに周囲に気を配っているというか……その割には身体に力が入っていないのが高ポイントだ。


「……分かった、アレについては調べておこうか……それから、お前もお前で努力しろよ?」


はーいよ、と手を振ってふと搔き消える様にこの場を立ち去るレズン。


「……レズンにはまだ何もしてやれていないな」


眼科を行く隊を眺めつつ、彼の望む物……。


……神器について、足首まで埋まる深さの雪束を壁下に蹴り落としながら思いを馳せる。


「どちらにせよ、レズンの情報収集次第、か……」


彼は彼で神器の位置情報を探っているらしい。そして……今回のマデレイネ姫は王族、その他アイクの親族はその情報を高い確率で保持しているだろう。


そこから情報を引き出す……俺にはどうするべきかさっぱり分からないが、彼には何か手段があるのだろう。


この間、彼が魔法薬?を売って小金を稼いでいた事も発覚したし、まだまだ彼には手札があるのだろう……傍目から見ても器用な男だからな。


彼は最近、魔道具の専門家足るネメシア・リィ・クロチャトフと仲が良い様で、良く授業について来ては終了後雑談に講じている。


何でも生体外から魔力を集める方法を考えているらしい……それには魔力とはそもそも何なのかという根源的な、学術の鬼足る妖精族ですら至っていない最大級の謎に立ち向かう必要がある。


俺には見えないから分からないが、魔力は明緑色に光っている粒子として、魔術師の目には映るという……俺は魔術的な感覚でしか捉える事が出来ないが、俺には幾重にも張り巡らされた線の束だとか、靄の様に感じられるのだがな。


まあ……それは今はどうでも良い。


「さて、何が出てくるやら」


気付けば、自分の周りの雪を全て落としてしまった様だ……コツコツと靴先で床を叩いて付着した雪を落とす。


何にせよ、依頼は完遂するまでだ。











スィラにとって食事というのは単なる燃料補給という意味でしかない物であった。


それも当然であって、彼女からすれば悠長な食事時間というのは無駄でしか無い……単なる隙であるし、これまで大した物は……血抜きの足りない死んだばかりの肉や、味のバランスの一文字も感じられない様な雑多な野菜の煮込み、下手をすれば虫だってそのまま食った事がある彼女からすれば、食べ物は味わう物でなく、流し込む物である。


しかしながら酒は別で、アルコールというのは水よりも日持ちが良くて、持ち運ぶのには適していた故に……彼女が口に入れて楽しめる数少ない物の一つとなった。


この国で流通している主な酒類はワインを初めとする果実酒である。次点でビール。その他、ウィスキー等がシェアの殆どを占める。


スィラの好みから言えば、彼女はビールやウィスキーを好み、ワインはあまり好まない。


理由を問えば、単に甘過ぎる(この時代のワインは糖が発酵し切らない内に飲む事が多い為滅茶苦茶甘い品種が多い)事が主たる要因である様だが、本音を言えば、そこらの店で扱っている程度のワインはやや黴臭くて嫌だという所が本懐らしい……案外、変なところで拘るものである。


「……当たり前だろうが。殆ど唯一の私の楽しみなのに、安酒ごときに台無しにされてたまるか」


寮の一室である使用人待機室。


実質スィラの私室であるそこで、彼女は珍しく行儀も悪く、テーブルに肘をついてグラスをあおっていた。


「それは同意できるところだけどね……でも、こんな昼間から酒喰らいは良くないと思うなぁ」


対するは身の丈30cm程の羽の生えた闇妖精、ニーレイである。


此方も……椅子に座る事が出来ないから行儀どうこうとは一概には言えないが、少なくとも机の上に積んだ本を椅子代わりにして人間サイズの器からワインを犬飲みしている姿は、妖精界から見てもよろしくないに違いない。


「そう言うお前とて、もう二本も開けているじゃないか……妖精は酔わんのか?…………第一、お前の身体の何処にそんな量の液体が入るのだ……」


「妖精族の身体の仕組みを"その他"と一緒にしないでよね。臓器の出来から身体の素材まで、他とは違うらしいよ?私はよく分からないけど」


そう言ってまたペロペロと水面……いや、酒面を舐める……極めて見苦しい光景であるが、生憎スィラは大人であるからして……上手く視野から除外する事を知っている。


「それで?こんな真昼間から酒瓶を開けてるスィラちゃん(・・・)はどうしちゃったの?フラれた三十路手前のクソアマみたいな顔してるけd「……それをあまりこの敷地で言わん方がいいぞ?」……そうだね」


この時のニーレイの背筋には何処か、形容しがたい悪寒と突き刺す様な気配……その他諸々、言うにも憚られる様な感覚が襲い掛かっていたと、彼女は後に述懐したらしい。


「レズンから最近聞いた話だと、この間の休みの期間にケイト氏は王都まで行っていたらしいぞ?……男漁りに」


「へぇ!それで?釣果(・・)は?」


言うに及ばず、である。


「それをケイト氏の前て問うたら、有無を言わずに火炎弾が飛んで来るな。それから……王都の事なのだがな」


ニーレイの水魔術が、スィラのグラスの中に氷を形作り、また瓶が一つ空になった。


「どうも正規軍が何処かに向けて出撃して行ったらしいぞ。いよいよ始まるやも知れんな」


「……それは大事だね」


ニーレイの瞳がきろりと硬質な光を帯び、声色から感情が抜けた。


「……ヤールーンも最近慌ただしくなって来てるらしいし……アメイジア様は本気でやる気なのかな」


「さあな、どちらにせよ……準備は怠ってはならんだろうな。あとは……ハノヴィアがどちらに付くか、か」


現在のハノヴィア帝国程、動きが読めない国も中々あったものではないだろう。


何せ彼処は普段は議会制、時々皇帝の気まぐれで帝政、稀に民主制とコロコロと政治体制が変わる不思議な国なのだから。


これはクーデターだとかで国が不安定になっているのでは無く、あの国は皇帝の鶴の一声で様々な政治体制を試している、比較しているというのが、現在のあの国の現実であった。


今代の皇帝……あのカルセラ・コウ・エーレン・ベルギアの父は変わり者の様で、先代から実権を受け継いだ時は帝政、その次はアリエテと同じ半議会半帝政、その次は完全な議会制、今度は挙手制の民主制と来た。


元々貴族の特権が弱いハノヴィアだから出来る事だが、それとてコロコロ変わる政治体制が民に良い印象を得られるとは思えないが……何か絡繰があるのだろうか。


「順当に行けば、最初は静観して弱った方を殴る……もしくは、最初から気に入らない方を殴る、でも、あの皇帝の性格を鑑みると、適当に待って、危なくなった方に肩入れしそうね」


そんな雑談は良いとして、と。


「……妖精界(あっち)にエリアスを連れて行く件だけど、許可が下りた。何時でも向こうには行けるよ」


ああ、そんな時期に入ったか……。


エリアスの身体を調べる事、古代の医術の観点から彼女を精査する事。


ニーレイの提案で始まり、スィラが承諾した本人には秘密の計画……始まりと言えば、エリアスの容姿が起因している。


最重度のアルビノ。またの名を先天性白皮症。


俗に言う、異常個体である。


この手の変異個体はこの世界で生きるのには決して適している訳では無い……魔族獣人の場合は特殊な色素、スィラだって虹彩は限りなく琥珀色に近いが金色だし、種族によっては人間にはあり得ない色の肌を持つ者も少なく無いが、人間という種でこの手の色を持つという事は、本来あってはならない事なのだから。


皮膚の肌色の元であるメラニンは太陽光、引いてはその中の有害な紫外線を吸収し、皮下細胞が破壊される事を防いでいる。


これは有名な色素が持つ働きだが、アルビノの人間には当然ながらそれが無い。


通常は日光に当たると、人の身体は体細胞を守る為にメラニン色素を生成する。コレが日焼けの極簡単な正体だが、エリアスは幾ら太陽に当たろうとも肌は黒くならない。


そもそも彼女は色素を自前で作ることを知らないのだから。


「あの眼も、余りに色が無さ過ぎて血の色が透けた色なのだろう?」


紅玉の如く極めて美しいが、下手をせずとも不気味さ漂う真っ赤な瞳も、良いのは本来見た目だけであり、その実、殆どの彼女の様な赤い瞳を持つ者は視力が弱く、重軽はあれども視覚障害を持つ者が殆どだ。


その手の人物の記録は妖精学会の資料を漁れば、数は少ないながらも検診記録は出て来る。


こうして改めて現れたのは二百年ぶりくらいらしいが。


「つまりはエリアスの血は赤いという事だね、私は時々、エリアスが青とか緑とか紫の血を出したらどうしようって思うよ」


「それは流石に……だが、私は緑に賭けておこう」


「私は透明に一票ね」


それもアリだな、なんて冗談めかして言っている内に陽も傾いて来た。


そろそろ噂のエリアスが帰って来る位だろうが……何故か、ベランダで物音がする。


「……見てくる」


と、席を立ったところで、コンコンと窓を叩く音。


カーテンの向こうには赤髪の少年、と言ってもこの中では二番目の年長のレズンが立っていた。


「どうした?まだ姫様(・・)との面談があるのではないか?」


「やー……ちょっと予定外の事が発生してね?」


若干愉快そうな溜息と共にヤレヤレポーズ……多分、楽しそうな理由は自分じゃないの人間(エリアス)が苦労しているからだろう。


「姫様の独断でね、もう今日の夕方には出発する事になったから一応のお知らせ」


ふん、と鼻息。


「なら、その旨ケイトにも伝えておこう……姫様と主はどうだ?」


「いやー、それなんだけどさぁ……」


そうして如何にも面白そうに、彼はるんるんと話し始めた。











アリエテ王国王女、マデレイネ・ベル・イオリアがエリアス・スチャルトナという少女を見て持った第一印象は……ただひたすらに不気味であった。


同じ人間とは思えない……いや、生き物とすら思えない。


肌も、目も、顔立ちも……髪だけは濃紺色で、人間味を帯びてはいるが、逆に言えばそれまでである。


その癖、幼さしかない身体からは独特の雰囲気……退廃的で、危険な香り……目の前に突き付けられた刃先を眺めている様な気分になる。


ただそれがジッと、自分を下から見上げている。


それは王族に対して当然の挨拶で、幾度と無く受けてきた礼儀であるが、この時だけは、この瞬間だけは立場が完全に逆転していた。


威圧感では無い。ただ、目の前のモノから出でる原始的な恐怖感。


周りの者は分かるまい……この少女の形をした何かの眼前に立つ事の恐ろしさが……。


「……姫様、直答を許さなければ話が進みません」


見かねたクリストフの声に、ようやく現実へと引き戻され、ハッと我にかえる。


「あ、ああ!直答を許す……!面を上げよ!」


嫌が応にも声が上ずり、震える。


一方、直答を許され顔を上げた彼女の仕草は限りなく穏やかであり、優艶であった。


「お初お目に掛かります。此度、一時的な護衛として加わります、エリアス・スチャルトナと申します」


「……同じく、レズン・スタッド……と申します」


そこで初めて、彼女の後ろに赤髪の少年が立っている事に気が付いた。


薄暗い赤色の髪と紫に近い色の瞳……肩幅や体型を見れば大方男だとは思えるが、充分女でも通用しそうな、中性的な美形だった。


……敬語を付けるのに躊躇っている素振りがあるところをみると、実はハノヴィアか何処かの大貴族の出なのかも知れない……事実、何処か彼は所作の一つ一つの品が良い。


間違いなく彼は支配者階級(こちら側)の立場の者……それを隠しているならば、下手に詮索はしないのが吉というのは、学院時代から知っている。


「……そなたらの献身に感謝する…………あ、クリストフ、あとは頼む」


どうするべきか、普段はしない混乱が生じており、どうも何かと梃子摺っている感じがして、一刻も早く下がりたかった。


今更ながら、心臓がバクバクと張り裂けそうな程に暴れ狂っていた事に気づく。


鎧下の肌着はぐしゃりと汗に濡れ、むわりと首元から熱気が立ち上がる……今は冬で、雪すら積もっているというのに。


向こうではクリストフが予定を早めて今日にも出発する事等を話している様だが、それも耳には入って来ない。


恐ろしい存在だった。魔力の桁が違う……。


「……辺境にはこんな者が居るのか……恐ろしい事だ……」


これからあの娘と行動を共にしなければならないと思い出し、頭を抱えずには居られない。


が、そうも言っては居られない現実がある。


「……私は御して見せるぞ……それでいて何がアリエテ王女か!」


だが……そんな彼女を、赤髪の少年レズンが、ニターっと口の端を歪め、悪意で妖しげに煌めく瞳で眺めていることには……終ぞ誰も気付けなかった。











夕方、冷え込みが一層厳しくなる中、レズンに取ってきて貰った追加の外套を羽織ってエルクを発つ。


裏地は毛皮で、蓄えられた空気の層が素晴らしい断熱性を発揮する逸品だ。この間偶々見つけた。


足元は皮のブーツの上にゲートルを巻き、ズボンと靴の間の隙間を無くす……が、革靴はあまり防水性に長けていない。すぐ濡れて冷たくなる。


まあ、俺はあくまで魔術師である。体内を流れる魔力を使って血流や血管の伸縮をコントロールし、足先から抜けた熱を、体の核付近の熱で補う……結果的に多くの熱量を使う事になるが、食べ物、つまりはエネルギー源は豊富に用意してある……美味しくはない保存食だらけではあるが。


流石に雪中を徒歩で行く訳では無い。馬とそれで索く橇で移動する。


この場にスクウィッド(すーちゃん)が居たらもっと早いのに、とは思う。


そういえば、すーちゃんは雄雌どちらなのだろうか……今度、ついてるかついてないか位は確認しようとは思う。


さて、馬に乗る事は死ぬ程苦手な俺であるが、何とかレズンが前に座り、それに捕まる事で付いて来れてはいる……馬にタンデムというのは、馬にとってあまり良い事で無いが、多分、負担で言えば周りの騎士団員を載せている彼らの方が大きいだろう……レズンも俺も重い防具は付けていないし、体重だって二人とも大した事は無い。


俺の仕事と言えば、橇が変なところに引っ掛かって、中身をひっくり返さない様に見張るだけだ……何せ中身は大事な食料、俺の生命線である。


酷く退屈ではあるが、良い事にレズンの身体が壁になって、前から吹く冷たい風に当たらなくて済むというのが素晴らしいところだろう。


「……エリアスちゃん、その快適さはボクの犠牲の上に成り立ってるって事を忘れないでよねー?」


「知らん。悔しかったら、私より小さく縮んでみたらどうだ?逆に私を盾に出来るかもしれんぞ?」


「悪いけどー、ボクはこの足の長さが気に入ってるんだ」


なら丁度良く長さに叩っ斬ってやろうか、と思ったが、衆目もあるし、あまり此処で絡むのは良くないだろうな。


馬鹿話も大概にして、と。


「……イケそうなのか?姫様の件は」


周囲の気流すら音がやや伝わり難い様に少々風向きを内側に操作して、尚且つ最小の小声で尋ねる。


「イケそーかイケないのかで言えば、間違い無くイケる範囲だよ、彼女。特にあのしゃぶりたくなる様な唇が……」


「真面目にやれ」


脇腹を抉る指……大丈夫、多分骨までは届いてない。


「……い、いけるっていうのはほんとーだよ?ただ、エリアスちゃんの事を変に怖がってるから……そこがネックになるか、糸口になるか分からないかな」


「……魔力(・・)で見ていたのは良く無かったか。お陰で大体の実力は知れたが……」


マデレイネ王女は普通に上級クラスの魔力を持っていた。恐らくは結構強い。


……保有魔力にもクラスがあり、下から最下、下、中、上、最上、無限級だかなんだかと、これでもかなり簡略化してある……実際はもっと細かく分類されるらしい。


無限級の上も勿論あり、真魔王級が現在最も高いクラスの様だ……所有者は、ヤールーン王ウルティム・アメイジア。余談ながらレズンは無限級、ニーレイはその3つ上真妖精級というクラスにあるらしいが、よく価値は分からない……真魔王級はニーレイの更に3つ上だ。


本人らは、特定職の就職くらいにしか使えないから気にしない様な事を言ってはいたが、正直気になる。


何でも妖精族と小人族が作った、放出魔力量を計測する魔道具で測るらしいのだが、それをすると暫く魔力欠乏症で真面に動けなくなる様なので……機会を見て、という事になるだろうが。


余談を言えば、ケイト・ヴァシリーは半無限級に片足を突っ込んでいる程度の最上級、我が母足るシレイラ・スチャルトナは最上級、我が父ライノ・スチャルトナは半無限級であるらしい……ニーレイの所見であるから、当てになるかは分からない。


「クリストフだったか?彼方の方はまだ見ていない……警戒は煽らんほうが助かるだろう?」


「……まー、気遣いに感謝しておこーかな?でも……そんなに下に見られて負んぶに抱っこっていうのは癪だなぁ」


「そんな事知るか」


澄んだ冬の冷気を掻き分けて進む事4時間。


辺りに真っ暗な夜の帳が落ち、そろそろ腹が減ったな、というところで全隊の馬が前進を止めた。


「ここで一度休息、明け方攻撃をかける。各員食事を摂って英気を養え!」


……このクソ寒い中で寛げる訳あるか。


「だからこんな大量に毛布があるんでしょ。でも、多分そんな長時間は寝ないよ?……だって、ほら。彼処が目的地でしょ?」


レズンの指差す先には……いやただの暗闇なのだが……目に魔力を入れれば見えるか?


「あの丸太組みの小屋がある所か?」


「そうだねー……てか、よく見えたね」


薄っすらと、本当に薄っすらと、山の中腹、やや台地になっている所に見えたのが、小屋と木の高い塀……だが……。


「自分でも驚いている……本当に彼処が目的地なのか?灯りもなければ人の気配も無い」


「隠蔽に気を使っているか、はたまたはー……誰もいない、とか?」


何度見れども、蠢く気配は見当たらない……。


「……嫌な予感がするな」


ジッと、暗闇の彼方を睨まずには居られなかった。










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